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ギルド再び
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ギルドに向かっている途中で熊野君と会った。女性陣は買い物が終わらないので散歩がてら冒険者ギルドに向かうところだったそうだ。
ギルドに入ってないと(身分証を持ってないと)街から無料で出れないらしい、というホットな話題を提供したところ、「あ、ギルドカードのことっすね」と言って身分証(=ギルドカード)を見せてくれた。
カードにはいくつか気になる情報があった。
クマノ シンジ
ノマル 男 18歳
スカウト
まず一つ目。何故に文字が現地の言葉なのか。この世界の技術で作られるから仕方ないことなのかも知れないけど。
そして二つ目はノマルという単語が何を意味するのかということ。
三つ目はスカウトという単語。ボーイスカウトとかのスカウトだろうか。
冒険者ギルドまでの道すがら、熊野君に聞いてみようと思ったのだけどすぐに着いてしまったのでギルド内で聞いてみるとしよう。
熊野君が気軽な感じでギルドのドアを開く。
奥のテーブルには四人の男女が座っていて、その更に奥のカウンターには昨日の女の人とは違う人がいた。
「よおシンジ君」
「ちわっす」
「ちゃんと装備を買ってきたみたいだな」
「うす。昨日はあざっした」
「気にするな。それでこっちの人は?」
「昨日話してたもう一人の人っす」
「あ、フトウと言います。昨日もこちらに来たんですが日本語が話せる人がいなくて」
「あ、パティが言ってた人か。今日は大丈夫だぜ」
「でしょうね……」
僕はちょっとげんなりしていた。なんと、カウンターにいたのがリーさんだったからだ。
「こんにちはリーさん。ここにいる理由を聞いても?」
「フトー、怖い顔しないでよ。私は個人的にギルド案内のバイトしてただけよ。ここが私の本来のギルドね」
「いい人だと思ってたのに残念です」
「私いい人よー」
はぁ……どうするか。ここで登録してしまっていいんだろうか。いや、今の僕に選択肢がほとんどないのは分かってる。分かってるんだけど、なんだかおちょくられたみたいで気分が良くない。
我ながら心が小さいと思うけど、こんな世界に呼ばれたその日に、不安定な状況で親切な人に出会えたと思ってたその相手が、実は全部分かった上でバイトとしての職務を全うしてただけで、それが僕からしてみれば結果的に前説明もなく金を取られただけという……いや、結局は僕が浅はかで、強がって平静を装っていただけのお馬鹿さんだったということなんだろうけど。
そしてリーさんは自分がやるべき事をやっただけだ。
のだが。
「ん~、やっぱりやめておきます。熊野君、悪いんだけどやることができたから今日は君達と外に行けないです。申し訳ない」
「え、何言ってんすか。なんでここで登録しないんすか?」
「僕の気持ちの問題なんだ。申し訳ない」
「や、昨日は悪かたよ。お金返すから」
お金を返してもらうとか、そういう話じゃないんだよな。
もう完全に気持ちの問題だ。
逆に「返す」とか言われたら、僕がそれを強要してるようで更に気分が悪くなる。
僕は熊野君を残して冒険者ギルドを出た。
そして、ギルド通りを歩きながら現地のギルドをチェックしていく。看板はほとんどがこの世界の共通語で書かれているから読むことができる。
商人ギルド、傭兵ギルド、狩人ギルドなどがあるようだ。
これからの僕の活動的には狩人ギルドが向いてるだろうか。獣や魔物の肉や素材の買い取りは商人ギルドか狩人ギルドでできると昨日聞いていた。リーさんから。
「すみません、ちょっと話を聞きたいんですが」
「はい、いらっしゃい」
ギルドというのはみんな似たような造りなんだろうか。テーブル席がいくつかあって、奥にカウンターがある。
ここのカウンターの上には「買い取り窓口」と書かれた木のプレートがぶら下がっていて、二人の男女がいるけど他に人がいない。買い取りの話ではないけど、今はこの人たちに聞くしかないだろう。
「外に狩りに行きたいんですがここでギルドカードを作ってもらうことってできないでしょうか」
僕は「いらっしゃい」と言ってくれた男性の方にストレートな質問をした。
「できるよ。つってもなんか納品実績がないと駄目だけどね。銀貨五枚で仮のギルド証を貸してやれるけどどうする? ちゃんとしたギルド証を作る時に仮証を返してくれたら銀貨四枚を返すからお得だよ」
「借ります!」
本当はもっと聞かなきゃいけないことがあったと思うんだけど、直感的に「ここでいい」と思い、反射的にここで仮のギルドカードを貸してもらうことにしたのだった。
ギルドに入ってないと(身分証を持ってないと)街から無料で出れないらしい、というホットな話題を提供したところ、「あ、ギルドカードのことっすね」と言って身分証(=ギルドカード)を見せてくれた。
カードにはいくつか気になる情報があった。
クマノ シンジ
ノマル 男 18歳
スカウト
まず一つ目。何故に文字が現地の言葉なのか。この世界の技術で作られるから仕方ないことなのかも知れないけど。
そして二つ目はノマルという単語が何を意味するのかということ。
三つ目はスカウトという単語。ボーイスカウトとかのスカウトだろうか。
冒険者ギルドまでの道すがら、熊野君に聞いてみようと思ったのだけどすぐに着いてしまったのでギルド内で聞いてみるとしよう。
熊野君が気軽な感じでギルドのドアを開く。
奥のテーブルには四人の男女が座っていて、その更に奥のカウンターには昨日の女の人とは違う人がいた。
「よおシンジ君」
「ちわっす」
「ちゃんと装備を買ってきたみたいだな」
「うす。昨日はあざっした」
「気にするな。それでこっちの人は?」
「昨日話してたもう一人の人っす」
「あ、フトウと言います。昨日もこちらに来たんですが日本語が話せる人がいなくて」
「あ、パティが言ってた人か。今日は大丈夫だぜ」
「でしょうね……」
僕はちょっとげんなりしていた。なんと、カウンターにいたのがリーさんだったからだ。
「こんにちはリーさん。ここにいる理由を聞いても?」
「フトー、怖い顔しないでよ。私は個人的にギルド案内のバイトしてただけよ。ここが私の本来のギルドね」
「いい人だと思ってたのに残念です」
「私いい人よー」
はぁ……どうするか。ここで登録してしまっていいんだろうか。いや、今の僕に選択肢がほとんどないのは分かってる。分かってるんだけど、なんだかおちょくられたみたいで気分が良くない。
我ながら心が小さいと思うけど、こんな世界に呼ばれたその日に、不安定な状況で親切な人に出会えたと思ってたその相手が、実は全部分かった上でバイトとしての職務を全うしてただけで、それが僕からしてみれば結果的に前説明もなく金を取られただけという……いや、結局は僕が浅はかで、強がって平静を装っていただけのお馬鹿さんだったということなんだろうけど。
そしてリーさんは自分がやるべき事をやっただけだ。
のだが。
「ん~、やっぱりやめておきます。熊野君、悪いんだけどやることができたから今日は君達と外に行けないです。申し訳ない」
「え、何言ってんすか。なんでここで登録しないんすか?」
「僕の気持ちの問題なんだ。申し訳ない」
「や、昨日は悪かたよ。お金返すから」
お金を返してもらうとか、そういう話じゃないんだよな。
もう完全に気持ちの問題だ。
逆に「返す」とか言われたら、僕がそれを強要してるようで更に気分が悪くなる。
僕は熊野君を残して冒険者ギルドを出た。
そして、ギルド通りを歩きながら現地のギルドをチェックしていく。看板はほとんどがこの世界の共通語で書かれているから読むことができる。
商人ギルド、傭兵ギルド、狩人ギルドなどがあるようだ。
これからの僕の活動的には狩人ギルドが向いてるだろうか。獣や魔物の肉や素材の買い取りは商人ギルドか狩人ギルドでできると昨日聞いていた。リーさんから。
「すみません、ちょっと話を聞きたいんですが」
「はい、いらっしゃい」
ギルドというのはみんな似たような造りなんだろうか。テーブル席がいくつかあって、奥にカウンターがある。
ここのカウンターの上には「買い取り窓口」と書かれた木のプレートがぶら下がっていて、二人の男女がいるけど他に人がいない。買い取りの話ではないけど、今はこの人たちに聞くしかないだろう。
「外に狩りに行きたいんですがここでギルドカードを作ってもらうことってできないでしょうか」
僕は「いらっしゃい」と言ってくれた男性の方にストレートな質問をした。
「できるよ。つってもなんか納品実績がないと駄目だけどね。銀貨五枚で仮のギルド証を貸してやれるけどどうする? ちゃんとしたギルド証を作る時に仮証を返してくれたら銀貨四枚を返すからお得だよ」
「借ります!」
本当はもっと聞かなきゃいけないことがあったと思うんだけど、直感的に「ここでいい」と思い、反射的にここで仮のギルドカードを貸してもらうことにしたのだった。
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