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自由自在
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「お、ハンターギルドに仮登録されたんですね。身分証を確認できました。ではお気をつけて」
「ありがとうございます」
再度、街の西にある門に行き無事に「無料」での外出を果たした僕は、外に出れた喜びよりも、そもそも街の出入りでお金がかかるとは、という思いと、あ、入出国税みたいなものか、という納得があった。
危険な野生動物や魔物が街の周りに出てくるからこそ、外壁や守衛が必要になっているのだろう。街の人はその壁の中にいるから安心して暮らせているのだ。設備の維持も人件費もタダではないのだから、それを街に住む人たちの税金や、街を出入りする人たちから徴収するのは仕方のないことか。
ギルドに所属すれば、例えば狩人ギルドであれば獲物や素材を買い取ってもらう時に税金的なものを払うことになるだろうから、それで街への出入りが無料になる、とかそんな仕組みなんだろうな。
だとすると、一定以上の成果が出せないギルドメンバーはギルドを首になる可能性があるな。
他の街に移動したり静かな永住地を探すにしてもまだ少し先になるだろう。となると暫くはこの街にお世話になることになる訳だから、やはり、少しはギルドに貢献しないとな。
そして今、街を出てから西に伸びる道を三十分ほど歩いてみたところだ。道は土と小石が踏み固められていて草も生えてない。
時折、道から少し離れた草むらの中にウサギやカピバラのような生き物が見えたりしたけど、それらが襲ってくることはなかった。
ハンターギルドのおじさんから教えてもらったのだが、獣なら猪か鹿がいいらしい。ウサギも悪くないけど量を狩らないといけない。カピバラに関しては肉質も毛皮の質もあまり良くないので、増えすぎ防止の為にたまに討伐依頼があるくらいだそうだ。その時は討伐証拠として右前脚だけを提出することになるそうだ。
そうそう、討伐証拠といえば魔物だ。
この辺りだとビッグホッパーという昆虫型の魔物や、コボルトという半人半犬の魔物が現れるらしいが、討伐証拠はそれぞれが消滅する時に残す魔石だそうだ。
魔石は火に焚べると石炭のように燃料として使えるらしい。
また、大物の魔石は領主が優先的に買い取っているらしいので、想像だけど魔石という響き的にガチャにも関係がありそうな気がする。
コボルト程度の魔石でもウサギ三羽分の金額になるらしいので、持ち運ぶのにも嵩張らないし魔石狙いで戦っていった方がよさそうだ。
「西に行くと大きな木が右手の方に見えるんだけど、ここいらじゃそこが魔物の狩り場として有名だぞ」
西に向かっているのは、別に最初に西の門からでようと思ったからというだけでなく、ギルドでそう言われたからというのもあったのだった。
そして今、街道から大きな木の方へ向かって右斜めに獣道のようなものが現れたところだ。
この獣道を進めばあの大きな木に辿り着けそうだが、草むらの中では獣や徘徊している魔物と出会うことがあるらしくてちょっと躊躇している。
戦うことを目的に出てきたわけだけど、まずはこの道のように見通しがいい所で戦っておきたかったというのが本音だ。
が、仕方ない。
僕は《自由自在》をいつでも発動できるようにしつつ、草むらの中に続く獣道を進むことにした。
さてさて、だ。
つい一昨日まではただのサラリーマンだった僕が、こんなゲームみたいな異世界にやってきてたった二日目で、しかも特別な訓練もなく獣や魔物を狩ろうとするのは無謀が過ぎる話だということは、実は僕自身も思っていることだ。
でも、僕だけでなく、熊野君たちも早速動き出していたから彼らも同じだと思うのだが、スキルを手に入れた者にはそれを使って何ができるかが大体分かるのだ。
僕の《自由自在》はかなり強力なスキルだと思う。
何でもかんでも、正に自由自在にできるようなのだ。
例えば「空を飛ぼう」と思えば僕は空を飛ぶことができる。昨夜はベッドに横になった姿勢のまま宙に浮くことに成功している。
例えば持っているドス……ちょっと語感が悪いからナイフと呼ぶか。まあ、そのナイフを僕の右側の空間に浮かせた状態で、歩く僕に付いてこさせることもできる。
で、そのナイフを狙った所に飛ばすこともできるし、手に持ったナイフを振ったり突いたりするように動かすこともできる。
しかも、それを複数のナイフでやることもできるのだから、しっかり制御できたらかなり凄いことだろう。
ただ、難点は質量に応じた疲労度が発生することだ。
僕の体重約六十五キロ、今の装備はなんだかんだで十キロくらいだろうか。多く見積もっても八十キロくらいだと思うけど、この重さの物を空中に浮かばせて自由自在に動かしたら、きっと三十秒くらいで吐くほどの疲労で動けなくなってしまうだろう。
一キロくらいまでの軽い物ならかなりの時間動かすことができる。複数個を同時に動かしても疲労度は変わらないと思う。
つまりたぶん、同時に動かした物の総重量ではなくて、同時に動かした物の中で一番重い物が疲労度計算に使われているのだと思う。ゲームならバグと言われかねない穴だ。
まあ、スマホゲームのガチャ召喚みたいなので拒否権もないままに呼び出された訳だし、この世界がゲームのような仕様で構成されていたとしても不思議はない。用意された仕様の中で使える物は使ってやる。
「ありがとうございます」
再度、街の西にある門に行き無事に「無料」での外出を果たした僕は、外に出れた喜びよりも、そもそも街の出入りでお金がかかるとは、という思いと、あ、入出国税みたいなものか、という納得があった。
危険な野生動物や魔物が街の周りに出てくるからこそ、外壁や守衛が必要になっているのだろう。街の人はその壁の中にいるから安心して暮らせているのだ。設備の維持も人件費もタダではないのだから、それを街に住む人たちの税金や、街を出入りする人たちから徴収するのは仕方のないことか。
ギルドに所属すれば、例えば狩人ギルドであれば獲物や素材を買い取ってもらう時に税金的なものを払うことになるだろうから、それで街への出入りが無料になる、とかそんな仕組みなんだろうな。
だとすると、一定以上の成果が出せないギルドメンバーはギルドを首になる可能性があるな。
他の街に移動したり静かな永住地を探すにしてもまだ少し先になるだろう。となると暫くはこの街にお世話になることになる訳だから、やはり、少しはギルドに貢献しないとな。
そして今、街を出てから西に伸びる道を三十分ほど歩いてみたところだ。道は土と小石が踏み固められていて草も生えてない。
時折、道から少し離れた草むらの中にウサギやカピバラのような生き物が見えたりしたけど、それらが襲ってくることはなかった。
ハンターギルドのおじさんから教えてもらったのだが、獣なら猪か鹿がいいらしい。ウサギも悪くないけど量を狩らないといけない。カピバラに関しては肉質も毛皮の質もあまり良くないので、増えすぎ防止の為にたまに討伐依頼があるくらいだそうだ。その時は討伐証拠として右前脚だけを提出することになるそうだ。
そうそう、討伐証拠といえば魔物だ。
この辺りだとビッグホッパーという昆虫型の魔物や、コボルトという半人半犬の魔物が現れるらしいが、討伐証拠はそれぞれが消滅する時に残す魔石だそうだ。
魔石は火に焚べると石炭のように燃料として使えるらしい。
また、大物の魔石は領主が優先的に買い取っているらしいので、想像だけど魔石という響き的にガチャにも関係がありそうな気がする。
コボルト程度の魔石でもウサギ三羽分の金額になるらしいので、持ち運ぶのにも嵩張らないし魔石狙いで戦っていった方がよさそうだ。
「西に行くと大きな木が右手の方に見えるんだけど、ここいらじゃそこが魔物の狩り場として有名だぞ」
西に向かっているのは、別に最初に西の門からでようと思ったからというだけでなく、ギルドでそう言われたからというのもあったのだった。
そして今、街道から大きな木の方へ向かって右斜めに獣道のようなものが現れたところだ。
この獣道を進めばあの大きな木に辿り着けそうだが、草むらの中では獣や徘徊している魔物と出会うことがあるらしくてちょっと躊躇している。
戦うことを目的に出てきたわけだけど、まずはこの道のように見通しがいい所で戦っておきたかったというのが本音だ。
が、仕方ない。
僕は《自由自在》をいつでも発動できるようにしつつ、草むらの中に続く獣道を進むことにした。
さてさて、だ。
つい一昨日まではただのサラリーマンだった僕が、こんなゲームみたいな異世界にやってきてたった二日目で、しかも特別な訓練もなく獣や魔物を狩ろうとするのは無謀が過ぎる話だということは、実は僕自身も思っていることだ。
でも、僕だけでなく、熊野君たちも早速動き出していたから彼らも同じだと思うのだが、スキルを手に入れた者にはそれを使って何ができるかが大体分かるのだ。
僕の《自由自在》はかなり強力なスキルだと思う。
何でもかんでも、正に自由自在にできるようなのだ。
例えば「空を飛ぼう」と思えば僕は空を飛ぶことができる。昨夜はベッドに横になった姿勢のまま宙に浮くことに成功している。
例えば持っているドス……ちょっと語感が悪いからナイフと呼ぶか。まあ、そのナイフを僕の右側の空間に浮かせた状態で、歩く僕に付いてこさせることもできる。
で、そのナイフを狙った所に飛ばすこともできるし、手に持ったナイフを振ったり突いたりするように動かすこともできる。
しかも、それを複数のナイフでやることもできるのだから、しっかり制御できたらかなり凄いことだろう。
ただ、難点は質量に応じた疲労度が発生することだ。
僕の体重約六十五キロ、今の装備はなんだかんだで十キロくらいだろうか。多く見積もっても八十キロくらいだと思うけど、この重さの物を空中に浮かばせて自由自在に動かしたら、きっと三十秒くらいで吐くほどの疲労で動けなくなってしまうだろう。
一キロくらいまでの軽い物ならかなりの時間動かすことができる。複数個を同時に動かしても疲労度は変わらないと思う。
つまりたぶん、同時に動かした物の総重量ではなくて、同時に動かした物の中で一番重い物が疲労度計算に使われているのだと思う。ゲームならバグと言われかねない穴だ。
まあ、スマホゲームのガチャ召喚みたいなので拒否権もないままに呼び出された訳だし、この世界がゲームのような仕様で構成されていたとしても不思議はない。用意された仕様の中で使える物は使ってやる。
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