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大樹の根という名のダンジョン
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樹の周りにいた魔物を倒して魔石をサイコキネシスで回収した僕は、とうとう人生初のダンジョンに足を踏み入れることにした。
穴の奥に向かう螺旋状の根の階段は意外にしっかりしている。僕は無事にダンジョンの地下一階に降り立った。
ダンジョン内は薄暗いけど、先にクレアボヤンスで偵察していたのでそれほど不安感はない。
ネタバレを見たゲームをやる感じだろうか。僕はネタバレは漫画でもゲームでも好きじゃない。けどまあ、これはゲームじゃないし、油断したら命に関わってしまうので使える物は何でも使ってやっていくつもりだ。
クレアボヤンスで進む先を先行調査しつつ、僕は順調に地下一階を進んでいく。
魔物がいれば、大抵の場合はナイフで奇襲攻撃を仕掛けられるのだからサクサクと進むことができた。
そして何回目かの行き止まりに着いた時に、僕は休憩することにした。
ここまでに魔物が残したアイテムは、魔石、(たぶんネズミの)肉、モグラの爪、錆びた短剣、粘液だ。
粘液は巨大なミミズが残した物だ。持ち帰りようがないし、持ち帰ってもどうすればいいのか分からないので放置してたら、地面に吸収されて消えていった。だから手元には残ってない。
まあ、このダンジョンが人気ない理由が分かった気がした。
ネズミを倒してドロップした肉は食べたいとは思わないし、モグラの爪も使い道がなさそうだ。錆びた短剣も買い取ってもらえるか分からないから拾ってない。
結局、お金になりそうなのは魔石だけだ。
まあ、僕は戦闘訓練とレベルアップが目的だから、他の人が来ないこのダンジョンは誰にも邪魔されなくていい感じなんだけどね。
座って壁に寄りかかり、クレアボヤンスで再度調査を行っていく。
サイコキネシスで同時に複数の剣を操れるんだから、クレアボヤンスでも複数展開できないかなと試してみたところ、なんなく出来てしまったので、一つは探索用に動かして、一つはこの行き止まりに敵が向かってこないか少し離れた所に監視用に固定している。
そして僕はようやっと地下二階への降り口を見つけた。
「うわぁ……」
降り口のある場所は大きな空洞になっていて、そこには大きさが二メートルくらいあるネズミらしき魔物が一匹と、普通サイズ(とはいって一メートルくらい)のネズミが大量に蠢いていた。
エネルギーバーを食べて水分補給をしてから、僕は超巨大ネズミのいる空洞に向かった。
そして、空洞には入らずに、サイコキネシスでナイフを操って巨大ネズミ共を切り倒していく。
空洞内を足場がないくらいに埋め尽くしていた数十匹の巨大ネズミを掃討して、最後に残しておいた超巨大と戦う。
もちろん、サイコキネシスで。
ただ、ナイフで何十回と切りつけてもなかなか倒せない。
そこで、僕はサイコキネシスの攻撃に短剣も加えることにした。
一昨日に試したときは、短剣が重さのせいですぐに疲れてしまったのだけど、今はナイフを振るのと同じでまったく疲れない。
そして、斬りつけるのではなくて、突き刺しては抜いて、突き刺しては抜いて、を繰り返すことで超巨大ネズミを倒すことができた。
長剣や戦斧なんかの大型の武器も使えるようになればますます戦いが楽になるな。街に戻ったら一つ買って試してみよう。
そんなことを考えている間に、超巨大ネズミが消えていき、そこに宝箱が現れた。
本当にまるでゲームのような世界だなと、改めて思った。
さて。
これがゲームなら、中ボス撃破とかの宝箱には罠は掛かっていないはずだけど、ここは今の僕にとっては現実世界なので、宝箱に触るのが少し怖い。
こういう時に盗賊系のスキルが役に立つんだろうな。僕の知り合いで言えば熊野君が斥候・盗賊系でスカウトというスキル持ちだ。まあ、今ここに居ない人に頼ることはできないので、今は自分が何とかするしかない。
僕が中学生の頃にやったレトロなロールプレイングゲームでは、宝箱の罠はかなりの種類があった。毒針、毒ガス、爆発、石化、テレポートなどなど、比較的軽めと言えるものから一発で死んでしまう超極悪なものまであって、罠は盗賊と鑑定魔法で二回調べてから開けてたっけ。
そう、僕は子供の頃からずっと慎重派のビビリ野郎なわけだ。
今の選択肢にも「開けずに放置する」というのがあるし。
でも、実際問題このまま放置するのはもったいなくて、なかなか決断できずにいた。
よし。
僕は結局、宝箱を開けることにした。
離れた所からサイコキネシスで開けるのだ。
手元には毒消しの丸薬を用意して、盾を構えて……宝箱の取っ手をサイコキネシスで上に持ち上げた。
空洞内にガチャッという音が鳴り響いた。
針も飛んでこないし、ガスも噴出しないし、爆発もしないし、テレポートの魔法陣も現れないし、宝箱が攻撃してくることもないようだ。
念の為三〇秒くらい待機した上で、異変がないことを確信してからクレアボヤンスで宝箱の中を確認した。
……我ながらビビリ過ぎで情けない。
宝箱には厚手の紙が一枚と、少し大きめの茶色い魔石だけがポツンと入っていた。
ビビリな僕はサイコキネシスでそれを手元まで運ぶ。
紙は羊皮紙と呼ばれるようなしっかりした物だ。現地語とは少し違う文字で書かれているが、僕には何故かこれが読める。
書かれているのはどうやら呪文らしい。これはスクロール(巻物じゃないけど)といって、これに込められている魔法を一回だけ発動することができるアイテムのようだ。
僕はアイテムを鑑定できるようなスキルは持ってないけど、書かれている呪文自体を読むことができるので効果がなんとなく分かった。ざっくり言えば、これは異常な状態を治すヒール系のスクロールのようだ。『ヒール』って書いてあるし。
魔法が使えない僕にとって、これはなかなかいい物かも知れない。
穴の奥に向かう螺旋状の根の階段は意外にしっかりしている。僕は無事にダンジョンの地下一階に降り立った。
ダンジョン内は薄暗いけど、先にクレアボヤンスで偵察していたのでそれほど不安感はない。
ネタバレを見たゲームをやる感じだろうか。僕はネタバレは漫画でもゲームでも好きじゃない。けどまあ、これはゲームじゃないし、油断したら命に関わってしまうので使える物は何でも使ってやっていくつもりだ。
クレアボヤンスで進む先を先行調査しつつ、僕は順調に地下一階を進んでいく。
魔物がいれば、大抵の場合はナイフで奇襲攻撃を仕掛けられるのだからサクサクと進むことができた。
そして何回目かの行き止まりに着いた時に、僕は休憩することにした。
ここまでに魔物が残したアイテムは、魔石、(たぶんネズミの)肉、モグラの爪、錆びた短剣、粘液だ。
粘液は巨大なミミズが残した物だ。持ち帰りようがないし、持ち帰ってもどうすればいいのか分からないので放置してたら、地面に吸収されて消えていった。だから手元には残ってない。
まあ、このダンジョンが人気ない理由が分かった気がした。
ネズミを倒してドロップした肉は食べたいとは思わないし、モグラの爪も使い道がなさそうだ。錆びた短剣も買い取ってもらえるか分からないから拾ってない。
結局、お金になりそうなのは魔石だけだ。
まあ、僕は戦闘訓練とレベルアップが目的だから、他の人が来ないこのダンジョンは誰にも邪魔されなくていい感じなんだけどね。
座って壁に寄りかかり、クレアボヤンスで再度調査を行っていく。
サイコキネシスで同時に複数の剣を操れるんだから、クレアボヤンスでも複数展開できないかなと試してみたところ、なんなく出来てしまったので、一つは探索用に動かして、一つはこの行き止まりに敵が向かってこないか少し離れた所に監視用に固定している。
そして僕はようやっと地下二階への降り口を見つけた。
「うわぁ……」
降り口のある場所は大きな空洞になっていて、そこには大きさが二メートルくらいあるネズミらしき魔物が一匹と、普通サイズ(とはいって一メートルくらい)のネズミが大量に蠢いていた。
エネルギーバーを食べて水分補給をしてから、僕は超巨大ネズミのいる空洞に向かった。
そして、空洞には入らずに、サイコキネシスでナイフを操って巨大ネズミ共を切り倒していく。
空洞内を足場がないくらいに埋め尽くしていた数十匹の巨大ネズミを掃討して、最後に残しておいた超巨大と戦う。
もちろん、サイコキネシスで。
ただ、ナイフで何十回と切りつけてもなかなか倒せない。
そこで、僕はサイコキネシスの攻撃に短剣も加えることにした。
一昨日に試したときは、短剣が重さのせいですぐに疲れてしまったのだけど、今はナイフを振るのと同じでまったく疲れない。
そして、斬りつけるのではなくて、突き刺しては抜いて、突き刺しては抜いて、を繰り返すことで超巨大ネズミを倒すことができた。
長剣や戦斧なんかの大型の武器も使えるようになればますます戦いが楽になるな。街に戻ったら一つ買って試してみよう。
そんなことを考えている間に、超巨大ネズミが消えていき、そこに宝箱が現れた。
本当にまるでゲームのような世界だなと、改めて思った。
さて。
これがゲームなら、中ボス撃破とかの宝箱には罠は掛かっていないはずだけど、ここは今の僕にとっては現実世界なので、宝箱に触るのが少し怖い。
こういう時に盗賊系のスキルが役に立つんだろうな。僕の知り合いで言えば熊野君が斥候・盗賊系でスカウトというスキル持ちだ。まあ、今ここに居ない人に頼ることはできないので、今は自分が何とかするしかない。
僕が中学生の頃にやったレトロなロールプレイングゲームでは、宝箱の罠はかなりの種類があった。毒針、毒ガス、爆発、石化、テレポートなどなど、比較的軽めと言えるものから一発で死んでしまう超極悪なものまであって、罠は盗賊と鑑定魔法で二回調べてから開けてたっけ。
そう、僕は子供の頃からずっと慎重派のビビリ野郎なわけだ。
今の選択肢にも「開けずに放置する」というのがあるし。
でも、実際問題このまま放置するのはもったいなくて、なかなか決断できずにいた。
よし。
僕は結局、宝箱を開けることにした。
離れた所からサイコキネシスで開けるのだ。
手元には毒消しの丸薬を用意して、盾を構えて……宝箱の取っ手をサイコキネシスで上に持ち上げた。
空洞内にガチャッという音が鳴り響いた。
針も飛んでこないし、ガスも噴出しないし、爆発もしないし、テレポートの魔法陣も現れないし、宝箱が攻撃してくることもないようだ。
念の為三〇秒くらい待機した上で、異変がないことを確信してからクレアボヤンスで宝箱の中を確認した。
……我ながらビビリ過ぎで情けない。
宝箱には厚手の紙が一枚と、少し大きめの茶色い魔石だけがポツンと入っていた。
ビビリな僕はサイコキネシスでそれを手元まで運ぶ。
紙は羊皮紙と呼ばれるようなしっかりした物だ。現地語とは少し違う文字で書かれているが、僕には何故かこれが読める。
書かれているのはどうやら呪文らしい。これはスクロール(巻物じゃないけど)といって、これに込められている魔法を一回だけ発動することができるアイテムのようだ。
僕はアイテムを鑑定できるようなスキルは持ってないけど、書かれている呪文自体を読むことができるので効果がなんとなく分かった。ざっくり言えば、これは異常な状態を治すヒール系のスクロールのようだ。『ヒール』って書いてあるし。
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