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アポートとかアパートとか
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ふむふむ。
なるほど。
うん、なんとなく分かった。
僕はバッグの中にある毒消しの丸薬をイメージしながら、新しい超能力であるアポートを試してみた。
すると広げていた右手の手のひらに丸薬が現れる。
アポートというのは、離れた場所にある物を手元に引き寄せる力みたいだ。
使ってみたところ、実際には引き寄せるというよりも、遠くにある物を手元に瞬間移動させる感じだけど。
遠くにある物を手元に、か。
今度はクレアボヤンスで視点だけ宿を出て街を進ませてみた。
そして道に落ちている拳くらいの大きさの石を見る。
それに対してアポートを使うと、あら不思議、僕の左手に唐突に石が現れ、クレアボヤンスの視点からは石が消えた。
……これは色々と使えそうだ。でも、犯罪者になるような使い方はしないようにしよう。
その後、楽しくて色々とアポートの実験を繰り返したら疲労度が高くなってきたので、ベッドの上にいた僕はそのまま目を閉じて眠ることにした。
翌朝。昨日に続き、今朝も少し遅めの起床となった僕は、今朝は宿の食堂で朝食を食べることにした。
そもそも、宿代は一泊朝食付きで銀貨二十一枚(今は銀貨十枚と銅貨五枚)なのだから、ここで朝食を食べないとお金を無駄にしていることに気が付いたからだ。
我ながら頭が足りてないな。
でだ。
今日は昨日立てた予定の通り、アパートを探すのと、銭湯的な施設と洗濯できる場所の確認をしようと思う。
あ、先にナイフと盾のメンテナンスについて聞いてみるのがいいか。カンテラもまだ買ってなかったし、まずはライセン堂に行ってみよう。
「いらっしゃいま、あ、この間の」
ライセン堂に入ると、前回の買い物の時に相手をしてくれた店員さんがいて、僕のことを覚えてくれていたようだ。
「今日はどんな物をお探しですか?」
「この間買ったナイフと盾のメンテナンスのお願いと、カンテラを買いたいなと思いまして」
「ナイフなどのご調整は鍛冶屋さんに出すことになりますのでお時間がかかりますがよろしいですか? ただ、オーダーメイドの品でない場合は買い直される方がいいと思います」
「あ、そういうものでしたか……あの、砥石とかって売ってますか?」
「はい。こちらに何種類か」
「じゃあ、この砥石とカンテラと油をください」
「はい、ありがとうございます。えっと、銀貨八十枚になります」
僕は大銀貨八枚を払って店を出た。
カンテラが銀貨五十枚もしたけど、これは油だけでなく、魔石に火を点けても使える物なので少しお高いのだそうだ。
また、僕がナイフと呼んでいる短刀は、ライセン堂では一振り銀貨二十枚で買ったのだけど、今の僕の財布の状況を考えるとそうそう簡単に使い捨てできるものではない。
砥石なんて使ったことはないんだけど、とりあえず自分で砥いでみようと思う。
「あつ」
アパートについて聞くのを忘れていた。
今更戻って質問するだけっていうのはなんか恥ずかしいからやめておこう。
とりあえず街の西側に住人募集の看板を出してるアパートや、銭湯や水場がないか探してみるか。
と言っても煙の出てる煙突とかは特に見えないんだよな。
「あれ、お客さん」
「あ、どうも」
しばらく歩いていると、宿の女将さんと遭遇した。手には持ち手付きの木桶を持っている。話を聞くと井戸に水を汲みに行くところだそうだ。なのでご一緒させてもらった。
井戸に着くと他にも何人かの女性がいて、女将さんとは知り合いらしく、正に井戸端会議が始まった。
そこで、僕は勇気を出して銭湯と洗濯ができる場所について聞いてみた。
すると銭湯はないが、自然の川で温泉が湧いている所があり、そこから引いてきた温かい水場が街の南西地区にあるのだと教えてもらった。
僕はお礼を言ってそこに向かった。
川幅、いや、水路幅と言うべきか。その幅は約五メートルはあり、腰くらいまでの深さがあり、温かそうな湯気を出している。
水路は街の外から西側の外壁の下を通して引き入れていて、弧を描いて南側の外壁の下から外に出しているようだ。水路の長さは五十メートルくらいで長いとも短いとも言い難い。
当たり前の話なんだろうけど、引き入れ口辺りのお湯が一番温かいらしくて、そこら辺に湯浴み用の小さな小屋が何個か建てられていて、水路からお湯を引いているようだ。
下流側は階段で水場まで降りられるようになっていて、多くの人が同時に洗濯が出来るような造りになっている。そこで多くの人がせっせと選択しているのが見えた。
僕もそこに降りていき肌着を洗うことにした。
洗濯は無料で使えた。
ただ、洗剤などは使えないようだ。
洗濯のあとはお楽しみのお風呂だ。
湯浴み小屋はいくつかの小屋の値段を見てみたが、だいたい一回銀貨三枚で利用できるようだ。お風呂はなかなかの贅沢らしい。
こちらも石鹸などは使ってはいけないそうだ。
お湯を桶で掬って頭からかぶる。たった数日ぶりのことなのに気持ちよくて、なんだか涙が出そうになった。
のぼせるまでお湯に浸かり、気持ちのいいぐったり感に包まれながらベンチでしばらく休んだ。
そんな僕に声を掛けてきた人たちがいた。
「あの~、あなた、つい最近召喚された方ですよね?」
なるほど。
うん、なんとなく分かった。
僕はバッグの中にある毒消しの丸薬をイメージしながら、新しい超能力であるアポートを試してみた。
すると広げていた右手の手のひらに丸薬が現れる。
アポートというのは、離れた場所にある物を手元に引き寄せる力みたいだ。
使ってみたところ、実際には引き寄せるというよりも、遠くにある物を手元に瞬間移動させる感じだけど。
遠くにある物を手元に、か。
今度はクレアボヤンスで視点だけ宿を出て街を進ませてみた。
そして道に落ちている拳くらいの大きさの石を見る。
それに対してアポートを使うと、あら不思議、僕の左手に唐突に石が現れ、クレアボヤンスの視点からは石が消えた。
……これは色々と使えそうだ。でも、犯罪者になるような使い方はしないようにしよう。
その後、楽しくて色々とアポートの実験を繰り返したら疲労度が高くなってきたので、ベッドの上にいた僕はそのまま目を閉じて眠ることにした。
翌朝。昨日に続き、今朝も少し遅めの起床となった僕は、今朝は宿の食堂で朝食を食べることにした。
そもそも、宿代は一泊朝食付きで銀貨二十一枚(今は銀貨十枚と銅貨五枚)なのだから、ここで朝食を食べないとお金を無駄にしていることに気が付いたからだ。
我ながら頭が足りてないな。
でだ。
今日は昨日立てた予定の通り、アパートを探すのと、銭湯的な施設と洗濯できる場所の確認をしようと思う。
あ、先にナイフと盾のメンテナンスについて聞いてみるのがいいか。カンテラもまだ買ってなかったし、まずはライセン堂に行ってみよう。
「いらっしゃいま、あ、この間の」
ライセン堂に入ると、前回の買い物の時に相手をしてくれた店員さんがいて、僕のことを覚えてくれていたようだ。
「今日はどんな物をお探しですか?」
「この間買ったナイフと盾のメンテナンスのお願いと、カンテラを買いたいなと思いまして」
「ナイフなどのご調整は鍛冶屋さんに出すことになりますのでお時間がかかりますがよろしいですか? ただ、オーダーメイドの品でない場合は買い直される方がいいと思います」
「あ、そういうものでしたか……あの、砥石とかって売ってますか?」
「はい。こちらに何種類か」
「じゃあ、この砥石とカンテラと油をください」
「はい、ありがとうございます。えっと、銀貨八十枚になります」
僕は大銀貨八枚を払って店を出た。
カンテラが銀貨五十枚もしたけど、これは油だけでなく、魔石に火を点けても使える物なので少しお高いのだそうだ。
また、僕がナイフと呼んでいる短刀は、ライセン堂では一振り銀貨二十枚で買ったのだけど、今の僕の財布の状況を考えるとそうそう簡単に使い捨てできるものではない。
砥石なんて使ったことはないんだけど、とりあえず自分で砥いでみようと思う。
「あつ」
アパートについて聞くのを忘れていた。
今更戻って質問するだけっていうのはなんか恥ずかしいからやめておこう。
とりあえず街の西側に住人募集の看板を出してるアパートや、銭湯や水場がないか探してみるか。
と言っても煙の出てる煙突とかは特に見えないんだよな。
「あれ、お客さん」
「あ、どうも」
しばらく歩いていると、宿の女将さんと遭遇した。手には持ち手付きの木桶を持っている。話を聞くと井戸に水を汲みに行くところだそうだ。なのでご一緒させてもらった。
井戸に着くと他にも何人かの女性がいて、女将さんとは知り合いらしく、正に井戸端会議が始まった。
そこで、僕は勇気を出して銭湯と洗濯ができる場所について聞いてみた。
すると銭湯はないが、自然の川で温泉が湧いている所があり、そこから引いてきた温かい水場が街の南西地区にあるのだと教えてもらった。
僕はお礼を言ってそこに向かった。
川幅、いや、水路幅と言うべきか。その幅は約五メートルはあり、腰くらいまでの深さがあり、温かそうな湯気を出している。
水路は街の外から西側の外壁の下を通して引き入れていて、弧を描いて南側の外壁の下から外に出しているようだ。水路の長さは五十メートルくらいで長いとも短いとも言い難い。
当たり前の話なんだろうけど、引き入れ口辺りのお湯が一番温かいらしくて、そこら辺に湯浴み用の小さな小屋が何個か建てられていて、水路からお湯を引いているようだ。
下流側は階段で水場まで降りられるようになっていて、多くの人が同時に洗濯が出来るような造りになっている。そこで多くの人がせっせと選択しているのが見えた。
僕もそこに降りていき肌着を洗うことにした。
洗濯は無料で使えた。
ただ、洗剤などは使えないようだ。
洗濯のあとはお楽しみのお風呂だ。
湯浴み小屋はいくつかの小屋の値段を見てみたが、だいたい一回銀貨三枚で利用できるようだ。お風呂はなかなかの贅沢らしい。
こちらも石鹸などは使ってはいけないそうだ。
お湯を桶で掬って頭からかぶる。たった数日ぶりのことなのに気持ちよくて、なんだか涙が出そうになった。
のぼせるまでお湯に浸かり、気持ちのいいぐったり感に包まれながらベンチでしばらく休んだ。
そんな僕に声を掛けてきた人たちがいた。
「あの~、あなた、つい最近召喚された方ですよね?」
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