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もずく

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ジャイアントスケルトン

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 昨日はあの後、ギルドは大変な大騒ぎだった。
 あのレベルの傷が元通りに戻るのはハイヒール、またはエクストラヒールと呼ばれる上位の魔法でないと回復できないのだそうだ。
 アトリが使ったヒールが、遅延効果でハイヒールの効果を発動したんじゃないかとか、そもそもハイヒールを習得したんじゃないか、とかで、二階に寝に戻ったアトリを呼び出して、まさに上へ下への大騒ぎとなったのだった。
 その流れで昼前にも関わらず酒が振る舞われた。僕もコップを渡されたのだが、今日は行かなければならない所があるので水で勘弁してもらった。
 外から人が入ってきたタイミングで、僕は外に出ることにした。
 入ってきた人はアトリのハイヒール騒ぎを知っててやって来たようだった。何かトランシーバー的な遠隔の連絡方法があるのかも知れない。
 まだまだ謎の多い世界だ。

 昼過ぎ。
 僕は再び大根掘りにやって来た。
 つまり、大樹の根のダンジョンに来たのだ。
 今日の目標はあのでかいガイコツを倒すことだ。
 外に湧いているコボルト六匹を倒しダンジョンに入る。
 そして、既に歩き慣れた感のあるルートで地下一階のボスエリアに移動した。
 昨日倒したばかりなのに、超巨大ネズミが復活していたのでサクッと倒す。ゲームで周回チャレンジをしている感覚だ。
 宝箱からはロックバレット・スクロールと少し大きい魔石が手に入った。

「よし、行くか」

 僕にしては珍しく、気合の声を口にしてから地下二階への螺旋階段を降りた。
 ミスリルスタッフの威力は上々だ。ロックバレットの連射ができるようになったから、大量のガイコツだって倒せるだろうし、でかいヤツのホネだって叩き砕けるはずだ。
 ただ、木の根っこの魔物(?)には打撃攻撃の効きが悪い。スタッフもロックバレットも打撃系なので少し時間がかかる。
 こうして考えてみると、切断系の武器として手斧とかも用意しておくといいのかも知れない。
 なんか、やっぱりゲームみたいだな。こうやって一つずつ攻略に必要なアイテムや手法を探していくのは。

 さて、と。
 前回、敗走を強いられたでかいガイコツ、ゲームならジャイアントスケルトンとかって名前になるかな。それがいる空洞の前までやって来た。
 前回の続きという訳ではなく、この間倒したはずの、普通サイズのガイコツ達のホネが地面に沢山あるから、また新たに一からの戦いになるんだろう。
 僕はミスリルスタッフを握りしめ、念の為、持ってきた石を周囲に浮かばつつ空洞に足を踏み入れた。
 今回はど真ん中じゃなくて、右の壁伝いに階段を目指してみたけど、空洞の入口と階段のちょうど真ん中辺りに差し掛かった所でホネが浮かび始めた。
 ガイコツが完成する前のホネを叩いてみたら、ちゃんと砕くことができたので、お行儀よく完成を待つ必要はないらしい。
 僕はロックバレットで頭蓋骨を撃ちつつ、ミスリルスタッフでも野球のバットを振るように頭蓋骨を打ちまくった。
 数体が完成体になってしまったけど、前回に比べたらまったく問題のない数だ。やはり、一回経験があるかどうかはアドバンテージに大きな差が出るな。
 ロックバレットで完成体の頭蓋骨をパパパパンと壊すと、そいつらは操り糸が切れた人形のように崩れ落ちた。
 あとは正しく骨太のジャイアントスケルトンだけだ。
 建物の二階より高い位置から、握られたホネの右手が振り下ろされる。
 僕はそれを横に移動して避けた。
 地面をズダンと叩いたその手が、僕のいる方に横に振り払われてくる。僕は後ろに下がってそれを更に避けて、運動会の玉転がしの大きな玉のような肘関節部分に、スタッフを思い切り叩きつけた。
 こちらが叩いた時には、カコーンと軽い音が鳴り響くようだ。まだ、玉にはヒビ一つ入らない。
 体がデカくても弱点は他のガイコツと同じかもしれないので、巨大なスカルヘッドに向かってロックバレットを撃てる限り連発しておく。
 基本的には相手の攻撃パターンを覚えて、なるべくギリギリで躱すように調整しながら、相手の攻撃後にできた隙にこちらの攻撃をとにかく入れる。
 やっぱり、この世界での戦いはゲームに近い。もちろん、敵の攻撃を受ければ下手すれば一撃で死んでしまうだろうし、自分へのダメージが仮想じゃないところがゲームとの一番の違いだ。
 ちなみに僕は、日本にいた頃は普通の会社員だった。ゲームといえばスマホで自動戦闘するロールプレイングゲームくらいしかしてなかった。格闘ゲームやアクションゲームの類は高校生の頃までしかやってない。
 と、戦いと別のことを考えながらも戦いは続いている。
 僕は本当に並列思考的な能力を手に入れめしまったのかも知れない。
 ジャイアントスケルトンの動きをよく見て、攻撃の動き出しで次の攻撃がどのタイプのものか判断し、敵の攻撃が変化できなくなるギリギリまで待ってから回避行動をとり、回避が確定した瞬間にはロックバレットを撃ち込む。可能ならスタッフでの攻撃もする。
 これに二つ分の思考能力リソースを割いている感じだ。
 一つ分のリソースをクレアボヤンスとその映像確認に使っている。
 あと二つ残ってるリソースは遊んでる状態だ。だから余計なことを考えてしまう。

 ナイフ四本を動かしながら、クレアボヤンスの映像三枚を確認しつつ、自分自身の体も動かしてきた僕にとって、一対一で自分の体しか使わない戦闘は、攻略に必要な道具アイテムさえ揃ってしまえば、ちょっと退屈なものに成り下がってしまうようだ。
 もちろん、相手のスピードが異常に速かったりしたら敵わないかも知れないけど。
 そうだな。そういった敵を想定して自分の体をもうちょっと鍛えた方がいいかもな。

 結局、目の前の相手に集中しきれないままに戦闘が続いていたが、スタッフで肘の玉を破壊したあとは、より単調になった攻撃の合間にちまちまとロックバレットを撃ち続けたことで、巨大なスカルヘッドが砕け散って終わりを迎えた。
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