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帰還
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色々と、本当に色々と聞かれながら、僕はギフ達と地上に戻った。
ほとんどの質問は回答を拒否させえもらったけど、いくつかの魔法については今後のことも考えて少しだけ説明しておいた。
まず、ロックバレットの強化に成功したこと。単に自分の認識を変えただけなんだけどね。より硬く、より強い威力で射出するようにしたんだけど、それを、ロックバレットを使い続けていたら魔法自体がレベルアップした、と伝えた。
それから、クリエイトウォーターの魔法を覚えたことも伝えた。一ヶ月もの長期間、僕がダンジョンにいることができたのはこの魔法のおかげだと、そう説明するしか道がなかった。
他にはエアウォール、ウインドランスという魔法も覚えたと伝えた。セイクリッドサークルや、物理攻撃が効かない敵への不可視の攻撃手段を持っていることを伝える為、存在するか分からない魔法名を使ってみたのだ。
もちろん、これらについてはここにいる人間以外に他言無用とも伝えておいた。ギルド内で共有化するのも止めてほしいと強く言っておいた。
リンは、新たな魔法について興味津々の様子で聞いていたが、僕に直接何かを言ってくることはなかった。
僕が立ち上がってからは、リンは僕から少し離れるようにしているようだ。
逆に、エナは僕にベタベタとくっついてくる。僕がまた倒れないように支えてるんだと言ってるが、じゃあ、さっき背中に飛び乗ってきたのはなんなんだったと言いたい。
途中で出てきた魔物は、一応、ギフ達と協力して倒していった。
そうそう、ギフはレベルアップしてレベル8になったそうだ。嬉しそうに報告してきたけど、それと同時に「何もしてねえのに、お前さんの手柄だけでレベルアップしちまって申し訳ねえ」と頭を下げてきた。
すると、他の皆も頭を下げて来た。
どうやら、シュガーを除く全員が一つずつレベルアップしたらしい。
「俺等の予想が正しけりゃあ、全員、レベル9まではレベルアップできるようになったはずだ。明日っからでも魔鉱窟に行きてえが、まずは」
「コボルトキングを自分達で倒す、のですよね!?」
「お? おう! そうだ。まずは俺等だけでコボルトキングを倒す。そうでなきゃ男じゃねえからよ」
「あら、女だって女なりの信念があるわよ」
「ん? ああ、わりいなコトリ。別に男に限定した話じゃあねえよな。チャレンジャーとしての意地みてえなもんだわな」
「ア・ト・リ。まったく、ガサツなんだから」
「がははははは」
そして数時間後、僕らは街の西門に着いた。
「フトー、お前さんはまずはハワードさん達のところへ行ってこい。それで俺等の受けた依頼は完了だ。その後はお前さんが明日の夜までに依頼料を払いに来い。コボルトキングの恩はあるがそれとこれとは別の話だ」
僕が頼んだわけじゃ……と、またもや思ったけど口にはしないでおいた。とりあえず頷いておく。
「あ、金は持ってこなくていいぞ。その代わり魔石を持ってきてくれ。じゃあな」
そう言ってギフ達はギルドの方に帰っていった。
「で、エナはなんであっちに行かないんですか?」
「えっ? だってハワードさん達にわたしのことを紹介してもらわないと」
「は?」
「ほら、同期でしょ、わたし達」
そこにダダダダダッ、とリンが走ってやってきて、「ほら! エナも来るのですっ!」と言ってエナを連れて行ってくれた。
一人残された僕は、温泉に行きたかったけど、まずはハワードさんの店に行くことにした。
「おお……おおお……」
「フトウ、お帰りなさい」
まだ夕方なのにも関わらず、店は営業してないようだった。
店のドアを開けると、暗い店内で蝋燭だけが置いてあるテーブルに二人が居て、僕に気が付いてお帰りと言ってくれた。
「ただいまです。いや、ちょっと遅くなってしまってご心配をおかけしたみたいで……すみませんでした」
その後、二人が食事を用意してくれたので一緒に食べた。
その際に、実は彼らの息子さんもチャレンジャーだったことと、ダンジョンのチャレンジから帰って来ていないという話を聞いた。
独立して出ていったと聞いていたのだけど、実はそうではなかったのだ。
半年以上が経って、二人は息子さんがこの街を出て、他の街で頑張っているのだと思うことにしたのだという。
それで、そのままにしてあった部屋を、息子はもう独立したのだから、という理由で片付けたと。
別にいなくなった息子さんの代わりを僕に求めてる訳じゃないと言われたけど、まあ、多少はその寂しさを紛らわすことにはなれてるのかなと思う。
僕はこの人たちのことは好ましく想っている。好きという言葉を使うのがむず痒いからこういう言い方になってしまうけど、まあ、僕の実の両親よりも両親のように思ってやり取りをさせてもらっている。
でも、今後も今回のように長くダンジョンに入ることがあると思うし、今後ずっとこの街にいるかは分からない。それは実の子供が親元を巣立っていくのと同じことだと思う。
うまくいえないけど、この世界に来て僕が一番信頼している人が二人であることを伝え、そして僕はチャレンジャーとしてダンジョンに入ることを伝えた。
自分でも何を言ってるのかよく分からなくなってきてしまったけど、二人にはちゃんと伝わったようで、最後には涙ぐみなら三人で肩をたたきあった。
そして、何故か扉の所で大泣きする声が聞こえてきた。
不審に思って店のドアを空けると、そこには泣いているエナとリンとギフの姿があった。
ほとんどの質問は回答を拒否させえもらったけど、いくつかの魔法については今後のことも考えて少しだけ説明しておいた。
まず、ロックバレットの強化に成功したこと。単に自分の認識を変えただけなんだけどね。より硬く、より強い威力で射出するようにしたんだけど、それを、ロックバレットを使い続けていたら魔法自体がレベルアップした、と伝えた。
それから、クリエイトウォーターの魔法を覚えたことも伝えた。一ヶ月もの長期間、僕がダンジョンにいることができたのはこの魔法のおかげだと、そう説明するしか道がなかった。
他にはエアウォール、ウインドランスという魔法も覚えたと伝えた。セイクリッドサークルや、物理攻撃が効かない敵への不可視の攻撃手段を持っていることを伝える為、存在するか分からない魔法名を使ってみたのだ。
もちろん、これらについてはここにいる人間以外に他言無用とも伝えておいた。ギルド内で共有化するのも止めてほしいと強く言っておいた。
リンは、新たな魔法について興味津々の様子で聞いていたが、僕に直接何かを言ってくることはなかった。
僕が立ち上がってからは、リンは僕から少し離れるようにしているようだ。
逆に、エナは僕にベタベタとくっついてくる。僕がまた倒れないように支えてるんだと言ってるが、じゃあ、さっき背中に飛び乗ってきたのはなんなんだったと言いたい。
途中で出てきた魔物は、一応、ギフ達と協力して倒していった。
そうそう、ギフはレベルアップしてレベル8になったそうだ。嬉しそうに報告してきたけど、それと同時に「何もしてねえのに、お前さんの手柄だけでレベルアップしちまって申し訳ねえ」と頭を下げてきた。
すると、他の皆も頭を下げて来た。
どうやら、シュガーを除く全員が一つずつレベルアップしたらしい。
「俺等の予想が正しけりゃあ、全員、レベル9まではレベルアップできるようになったはずだ。明日っからでも魔鉱窟に行きてえが、まずは」
「コボルトキングを自分達で倒す、のですよね!?」
「お? おう! そうだ。まずは俺等だけでコボルトキングを倒す。そうでなきゃ男じゃねえからよ」
「あら、女だって女なりの信念があるわよ」
「ん? ああ、わりいなコトリ。別に男に限定した話じゃあねえよな。チャレンジャーとしての意地みてえなもんだわな」
「ア・ト・リ。まったく、ガサツなんだから」
「がははははは」
そして数時間後、僕らは街の西門に着いた。
「フトー、お前さんはまずはハワードさん達のところへ行ってこい。それで俺等の受けた依頼は完了だ。その後はお前さんが明日の夜までに依頼料を払いに来い。コボルトキングの恩はあるがそれとこれとは別の話だ」
僕が頼んだわけじゃ……と、またもや思ったけど口にはしないでおいた。とりあえず頷いておく。
「あ、金は持ってこなくていいぞ。その代わり魔石を持ってきてくれ。じゃあな」
そう言ってギフ達はギルドの方に帰っていった。
「で、エナはなんであっちに行かないんですか?」
「えっ? だってハワードさん達にわたしのことを紹介してもらわないと」
「は?」
「ほら、同期でしょ、わたし達」
そこにダダダダダッ、とリンが走ってやってきて、「ほら! エナも来るのですっ!」と言ってエナを連れて行ってくれた。
一人残された僕は、温泉に行きたかったけど、まずはハワードさんの店に行くことにした。
「おお……おおお……」
「フトウ、お帰りなさい」
まだ夕方なのにも関わらず、店は営業してないようだった。
店のドアを開けると、暗い店内で蝋燭だけが置いてあるテーブルに二人が居て、僕に気が付いてお帰りと言ってくれた。
「ただいまです。いや、ちょっと遅くなってしまってご心配をおかけしたみたいで……すみませんでした」
その後、二人が食事を用意してくれたので一緒に食べた。
その際に、実は彼らの息子さんもチャレンジャーだったことと、ダンジョンのチャレンジから帰って来ていないという話を聞いた。
独立して出ていったと聞いていたのだけど、実はそうではなかったのだ。
半年以上が経って、二人は息子さんがこの街を出て、他の街で頑張っているのだと思うことにしたのだという。
それで、そのままにしてあった部屋を、息子はもう独立したのだから、という理由で片付けたと。
別にいなくなった息子さんの代わりを僕に求めてる訳じゃないと言われたけど、まあ、多少はその寂しさを紛らわすことにはなれてるのかなと思う。
僕はこの人たちのことは好ましく想っている。好きという言葉を使うのがむず痒いからこういう言い方になってしまうけど、まあ、僕の実の両親よりも両親のように思ってやり取りをさせてもらっている。
でも、今後も今回のように長くダンジョンに入ることがあると思うし、今後ずっとこの街にいるかは分からない。それは実の子供が親元を巣立っていくのと同じことだと思う。
うまくいえないけど、この世界に来て僕が一番信頼している人が二人であることを伝え、そして僕はチャレンジャーとしてダンジョンに入ることを伝えた。
自分でも何を言ってるのかよく分からなくなってきてしまったけど、二人にはちゃんと伝わったようで、最後には涙ぐみなら三人で肩をたたきあった。
そして、何故か扉の所で大泣きする声が聞こえてきた。
不審に思って店のドアを空けると、そこには泣いているエナとリンとギフの姿があった。
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