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家族
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「いやすまねえ。金はいらねえと言ったがな、お前さんが無事に帰ったらハワードさん達は金を出そうとすんじゃねえかと思ってな。やっぱり俺が直接ハワードさんにそれを伝えようと思って来たんだが……立ち聞きするみてえになっちまった。すまねえ」
すまねえ、すまねえと二回言いながら、ハワードさんと僕の肩を叩くギフ。
で、エナとリンは何故ここに?
「ギフが行くんなら、わだしも行くでしょって、言って、付いてきだら……なんか家族のこと思い出しちゃって……えーん」
「私も……フトーにちゃんと謝りたかったですし、お帰りってまだ言えてなかったですし、エナだけ行かせたくなかったし……でも、フトーにもちゃんと人の心があることが分かって嬉しくて……えーん」
いや、エナの言うことはなんとなく分かる気もするけど、リン、君は何を言ってるんだ? でも、って言葉の使い方がなんかおかしくないか?
「まあ、いいですよ。お金のことは分かったから帰ってくれて大丈夫です。明日は夕方くらいまでにはギルドに顔出しますから」
「お、おう。家族水入らずのところ悪かったな」
「ああ、ギフさん、よかったら何か作るんで食べてってください」
え?
「そうですよ。せめてお食事くらい用意させてくださいな。フトウくんを探しに行ってくれたお礼をさせてください」
え?
ハワードさん、ネルさん、何を言い出すんですか……うわ、ギフもエナもリンもこっち見るんじゃないよ……はあ。
「ギルド、忙しいですよね? 僕、明日行くの」
「ありがとうございます! お母さんって呼んでもいいですか!?」
僕の言葉を遮って店の中に入ってくるエナ。さっきまでの涙はどこに行った。それに続いてリンも入ってきて「お母様……」とか言い出し始めて……もちろん、ギフも中に入ってきた。
ハワードさん達が「どうぞ」って言うなら僕が断れるものじゃないんだよなぁ。
ハワードさん達が作るパンは、最初に食べた時よりも柔らかく美味しくなっている。それは単にちょっといい小麦を使うようになったからだ。貸し切り温泉に行った時の食事で、意識が少し変わったらしく、値段は据え置きでもっと美味しくできるように頑張っているところだ。
ハワードさんもネルさんも料理は上手なので、材料さえ揃えられれば、より美味しい物を出すことができるわけだ。
「この子……あ、いえフトウくんがね、いい卸売りの方を探してくれて」
「いや、保存食を探してて偶然出会えただけですから」
「へー、フトーさん、優しいじゃん。流石わたしの同期だわー」
「やめてください」
「エナ、噓は良くないのです」
「え、この娘、あなたの彼女なの?」
「いや違いますから」
「随分と若い娘を捕まえたもんだねえ」
「ハワード残!?」
「やたっ! 公認カノジョ!?」
「ゆ、許さないのです」
「ギフ、なんとか言ってくださいよ」
「がーはははははっ! まあいいじゃねえか。一緒にこの世界に呼ばれて、男爵に一緒に追い出されたんだ。縁は深いだろうが」
「「ギフ!?」」
僕とリンがハモって抗議の声を上げた。
僕とリンとでは抗議の内容が違うんだろうけど。
いつの間にか、ハワードさんとギフはお酒を飲み始めていたようだ。
これはもう、今夜はどうにもならんかもね。
ハワードさんとギフは、キャラが全然チガウのに意気投合したようだ。ギフの笑い声は大きいものの、二人は静かにゆっくりと会話を楽しみながら飲んでいる。
ネルさんも、そんなハワードさんを嬉しそうに見ながら時折会話に参加していた。
席を外しても大丈夫そうな雰囲気だったので、僕は温泉に行くことにした。
ダンジョンの中でも、クリエイトウォーターが使えるおかげで体を洗えてたけど、やっぱりゆったりとお湯に浸かりたい。
「送りますよ」
僕を追いかけて店から出てきた二人に、僕は声を掛けた。そう言えば二人がどこに住んでるかは知らないな。
「フトー……怒ってないですか?」
「もう一ヶ月も前のことは忘れました」
「そう、ですか」
「リン、許してくれたのになんか残念そうじゃん。どーでもいいから忘れられちゃったとか考えてそう」
「そ、そんなことはないのです!」
「あれ? その反応、図星っぽい?」
「エナ、ぶり返さない。で、どっちに向かえばいいんですか?」
「わたし達、ギルドに住ませてもらってるんだよね」
「あ、そうだったんですか。ああ、そう言えば、アトリが二階から降りてきたことがありましたね」
「そ。アトリも一緒の部屋だよ」
「エナが来てうるさくなったのです」
「リンがやらかした時慰めてあげたじゃんか」
「な! あ、あの時は」
「ははは。まあ、同じ人を好きになっちゃったんだし仲良くやろーよ」
「す、好きって!」
そういう青春っぽいのは僕が居ないところでやってやってください。僕みたいなおじさんを巻き込まないで。
その後は二人共少し大人しくなって、そのままダンジョン攻略ギルドの前に着いた。
「じゃ、また明日ね」
「明日? あ、そうですね。なんかギフが来いって言ってましたもんね」
「ちゃんと帰って寝るのですよ。じゃ、じゃあ、お、おや、おやすみなさい」
「はいはい。おやすみなさい」
「あたしも~。おやすみなさ~い。ちゅっ」
「エ、エナ?」
「まったく。じゃあおやすみ」
これ以上、何かに巻き込まれるのはごめんだ。
頬にキスされたことには触れずに、僕は平静を装ってギルドから立ち去った。
少しの間フリーズしてたリンが再起動したのか、後ろの方で「エナーッ!」という近所迷惑な大声が炸裂していたけど、僕は温泉に向かって足を早めた。
すまねえ、すまねえと二回言いながら、ハワードさんと僕の肩を叩くギフ。
で、エナとリンは何故ここに?
「ギフが行くんなら、わだしも行くでしょって、言って、付いてきだら……なんか家族のこと思い出しちゃって……えーん」
「私も……フトーにちゃんと謝りたかったですし、お帰りってまだ言えてなかったですし、エナだけ行かせたくなかったし……でも、フトーにもちゃんと人の心があることが分かって嬉しくて……えーん」
いや、エナの言うことはなんとなく分かる気もするけど、リン、君は何を言ってるんだ? でも、って言葉の使い方がなんかおかしくないか?
「まあ、いいですよ。お金のことは分かったから帰ってくれて大丈夫です。明日は夕方くらいまでにはギルドに顔出しますから」
「お、おう。家族水入らずのところ悪かったな」
「ああ、ギフさん、よかったら何か作るんで食べてってください」
え?
「そうですよ。せめてお食事くらい用意させてくださいな。フトウくんを探しに行ってくれたお礼をさせてください」
え?
ハワードさん、ネルさん、何を言い出すんですか……うわ、ギフもエナもリンもこっち見るんじゃないよ……はあ。
「ギルド、忙しいですよね? 僕、明日行くの」
「ありがとうございます! お母さんって呼んでもいいですか!?」
僕の言葉を遮って店の中に入ってくるエナ。さっきまでの涙はどこに行った。それに続いてリンも入ってきて「お母様……」とか言い出し始めて……もちろん、ギフも中に入ってきた。
ハワードさん達が「どうぞ」って言うなら僕が断れるものじゃないんだよなぁ。
ハワードさん達が作るパンは、最初に食べた時よりも柔らかく美味しくなっている。それは単にちょっといい小麦を使うようになったからだ。貸し切り温泉に行った時の食事で、意識が少し変わったらしく、値段は据え置きでもっと美味しくできるように頑張っているところだ。
ハワードさんもネルさんも料理は上手なので、材料さえ揃えられれば、より美味しい物を出すことができるわけだ。
「この子……あ、いえフトウくんがね、いい卸売りの方を探してくれて」
「いや、保存食を探してて偶然出会えただけですから」
「へー、フトーさん、優しいじゃん。流石わたしの同期だわー」
「やめてください」
「エナ、噓は良くないのです」
「え、この娘、あなたの彼女なの?」
「いや違いますから」
「随分と若い娘を捕まえたもんだねえ」
「ハワード残!?」
「やたっ! 公認カノジョ!?」
「ゆ、許さないのです」
「ギフ、なんとか言ってくださいよ」
「がーはははははっ! まあいいじゃねえか。一緒にこの世界に呼ばれて、男爵に一緒に追い出されたんだ。縁は深いだろうが」
「「ギフ!?」」
僕とリンがハモって抗議の声を上げた。
僕とリンとでは抗議の内容が違うんだろうけど。
いつの間にか、ハワードさんとギフはお酒を飲み始めていたようだ。
これはもう、今夜はどうにもならんかもね。
ハワードさんとギフは、キャラが全然チガウのに意気投合したようだ。ギフの笑い声は大きいものの、二人は静かにゆっくりと会話を楽しみながら飲んでいる。
ネルさんも、そんなハワードさんを嬉しそうに見ながら時折会話に参加していた。
席を外しても大丈夫そうな雰囲気だったので、僕は温泉に行くことにした。
ダンジョンの中でも、クリエイトウォーターが使えるおかげで体を洗えてたけど、やっぱりゆったりとお湯に浸かりたい。
「送りますよ」
僕を追いかけて店から出てきた二人に、僕は声を掛けた。そう言えば二人がどこに住んでるかは知らないな。
「フトー……怒ってないですか?」
「もう一ヶ月も前のことは忘れました」
「そう、ですか」
「リン、許してくれたのになんか残念そうじゃん。どーでもいいから忘れられちゃったとか考えてそう」
「そ、そんなことはないのです!」
「あれ? その反応、図星っぽい?」
「エナ、ぶり返さない。で、どっちに向かえばいいんですか?」
「わたし達、ギルドに住ませてもらってるんだよね」
「あ、そうだったんですか。ああ、そう言えば、アトリが二階から降りてきたことがありましたね」
「そ。アトリも一緒の部屋だよ」
「エナが来てうるさくなったのです」
「リンがやらかした時慰めてあげたじゃんか」
「な! あ、あの時は」
「ははは。まあ、同じ人を好きになっちゃったんだし仲良くやろーよ」
「す、好きって!」
そういう青春っぽいのは僕が居ないところでやってやってください。僕みたいなおじさんを巻き込まないで。
その後は二人共少し大人しくなって、そのままダンジョン攻略ギルドの前に着いた。
「じゃ、また明日ね」
「明日? あ、そうですね。なんかギフが来いって言ってましたもんね」
「ちゃんと帰って寝るのですよ。じゃ、じゃあ、お、おや、おやすみなさい」
「はいはい。おやすみなさい」
「あたしも~。おやすみなさ~い。ちゅっ」
「エ、エナ?」
「まったく。じゃあおやすみ」
これ以上、何かに巻き込まれるのはごめんだ。
頬にキスされたことには触れずに、僕は平静を装ってギルドから立ち去った。
少しの間フリーズしてたリンが再起動したのか、後ろの方で「エナーッ!」という近所迷惑な大声が炸裂していたけど、僕は温泉に向かって足を早めた。
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