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売買
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温泉を満喫して、夜中になってから部屋に戻るとギフはもういなかった。
久々にベッドで眠ると、朝はあっという間にやってきた。
まだ寝たりない気もしたのだけど、行かなければならない場所があるので僕は起きることにした。
ハワードさん、ネルさんに挨拶をし、朝食を頂いてから店を出た。
そして僕は一日中人通りがあるエリア、東門の方にやってきた。繁華街などにありがちな、朝早い時間のうらぶれた雰囲気もなく、チャレンジャーや街の人がいてガヤガヤとしている。まあ、それでもこの時間帯は人が少なめかも知れないけど。
チャレンジャーのパーティーに絡まれたりしないように、なるべく自分の気配を殺しつつ、目的の場所であるナーグマンの店の前に着くと静かに中に入った。
「いらっしゃいませ。ああフトー様、お待ちしてました」
ナーグマンはいつもいる。一体いつ寝ているんだろうかと気になってしまうが、そんなことよりも僕の名前を覚えていてくれたことに少し驚いた。
確かに、オーダーメイド的な注文をしたので、その時に名前は教えたのだけど、あれから一月も経つのにまだ覚えていたとは、商人の記憶力恐るべし、だ。
ところで、お待ちしてましたということは、もしかして例の物ができてるのだろうか。
ナーグマンは、カウンターの裏にあるガラスケースから一本の棒を取り出すと、カウンターの上に丁寧に置いた。
「ミスリル職人が少し手を加えてしまったのですが……お確かめください」
僕は薄い青を含んだ銀色の棒、いや棍を手に取ってみた。思ったよりも重量感があるけど、これは打撃武器だからちょうどいいくらいなのか。
あとは実戦で使ってみないと分からないけど、その前に一点気になるところがあった。
「あの、この継ぎ目のような線はなんですか?」
継ぎ目は棍を三等分するように二箇所にある。
「それが、先程申し上げた職人が手を加えた部分だそうでして……両手で持って前後に捻ってみてください」
言われた通り、継ぎ目を跨いで棍を握って、右手と左手を逆の方向に回すようにして捻ってみた。
すると、カチッと音が鳴ってその部分から外れてしまった。
「え……」
引き離すように引っ張ると、ガチャガチャと音を立てて、中から三つの輪がチェーン状に繋がって出てきた。
「一箇所だけを外せばフレイルとして使え、二箇所を外せば三節棍という武器として使えると言っておりましたが、三節棍というのは私はよく存じません」
「僕は逆にフレイルというのを知らないです。三節棍というのは知ってますが使ったことがないです」
三節棍やフレイルというのは、別に使わなければそれでいい機能だけど、それより気になるのは強度の問題だ。
僕が難しい顔をしていたからだろうか。ナーグマンから次の言葉が発せられた。
「造ったのは前回と同じ職人なのですが、やはりただの棍を造るのはつまらないと言いまして……今回はギミックを造るのが楽しかったとかで材料代も半額でいいと言っていました。もしよければなのですが金貨一枚でいかがでしょうか」
ミスリルの武器を金貨一枚で買えるのは魅力的なんだけど、命を預ける物だから強度に不安があるものはなあ……でもまあ、なんとかできるかも知れないし買っておくか。
「じゃあ買わせていただきます」
「そ、そうですか! ありがとうございます」
僕は金貨を支払って、布で包んでもらったミスリル棍を持って店を出た。
用事も終わったことだし、まだ時間が早いけどギルドに行って魔石を買い取ってもらうか。
昨日は夕方くらいに行くとか言ったような気がするしけど、僕は昼前にギルドを訪ねてしまうことにした。
ギルドに着いたけど、ギフはまだ寝ているのかカウンターには彼の姿がない。
ギフの代わりに、僕が見たことがない女性がいたので、その人に魔石の買い取りをお願いすることにした。
「これの買い取りをお願いします」
僕は魔石が入ってる袋をカウンターに置いた。今回手に入れた魔石の半分くらいを入れてある。
「はい。数が多いようですので少々お時間をください」
「分かりました。お願いします」
僕は空いてるテーブルの席に座って待つことにした。
数分後、カウンターに呼ばれ、金貨三枚を受け取った。やはり、大根掘りではそんなに稼げないようだ。ただ、大きめの魔石は買い取りに出さなかったとはいえ、地下三、四階の魔物が落とした魔石は入れてある。それに、持ってきた数に対して思ったよりも買取額が明らかに安い。
誰か知ってる人が降りてきたらギフを呼んでもらおうかなと思って、暫くの間椅子に座って待ってみたけど誰も来ない。
仕方ない、伝言だけ頼んでまた来ることにしよう。
僕は受付の人に、ギフに呼ばれて来たけどいないようなので一旦帰るから、ギフに伝えておいて欲しいと伝えた。
「買取価格に不満があってギルマスの名前を出されたのなら、魔石をお返ししますので先程の金貨を戻してください」
と、全然求めてない回答が、ちょっとキツめの言い方で返ってきた。
「買取価格に不満なんてないです。不信感はありますが……そう言う言われ方をするとちょっと気になりますね。すみませんがギフを起こしてきてくれますか?」
そう返してみると、さらにキーキーとした声で、「あんたなんかの為にギルマスをお呼びできるわけがないでしょう!」と言われてしまった。
僕はそもそもギルマスじゃなくてギフを呼んでほしいと言ってるのだけど。それを言うとさらに怒って「出ていきなさい」と言って魔石の入った袋を投げつけてきた。
流石にこれは酷い……そこに「ふぁ~ぁあ、なんだい、うるさいね」とアトリの声が聞こえてきた。
久々にベッドで眠ると、朝はあっという間にやってきた。
まだ寝たりない気もしたのだけど、行かなければならない場所があるので僕は起きることにした。
ハワードさん、ネルさんに挨拶をし、朝食を頂いてから店を出た。
そして僕は一日中人通りがあるエリア、東門の方にやってきた。繁華街などにありがちな、朝早い時間のうらぶれた雰囲気もなく、チャレンジャーや街の人がいてガヤガヤとしている。まあ、それでもこの時間帯は人が少なめかも知れないけど。
チャレンジャーのパーティーに絡まれたりしないように、なるべく自分の気配を殺しつつ、目的の場所であるナーグマンの店の前に着くと静かに中に入った。
「いらっしゃいませ。ああフトー様、お待ちしてました」
ナーグマンはいつもいる。一体いつ寝ているんだろうかと気になってしまうが、そんなことよりも僕の名前を覚えていてくれたことに少し驚いた。
確かに、オーダーメイド的な注文をしたので、その時に名前は教えたのだけど、あれから一月も経つのにまだ覚えていたとは、商人の記憶力恐るべし、だ。
ところで、お待ちしてましたということは、もしかして例の物ができてるのだろうか。
ナーグマンは、カウンターの裏にあるガラスケースから一本の棒を取り出すと、カウンターの上に丁寧に置いた。
「ミスリル職人が少し手を加えてしまったのですが……お確かめください」
僕は薄い青を含んだ銀色の棒、いや棍を手に取ってみた。思ったよりも重量感があるけど、これは打撃武器だからちょうどいいくらいなのか。
あとは実戦で使ってみないと分からないけど、その前に一点気になるところがあった。
「あの、この継ぎ目のような線はなんですか?」
継ぎ目は棍を三等分するように二箇所にある。
「それが、先程申し上げた職人が手を加えた部分だそうでして……両手で持って前後に捻ってみてください」
言われた通り、継ぎ目を跨いで棍を握って、右手と左手を逆の方向に回すようにして捻ってみた。
すると、カチッと音が鳴ってその部分から外れてしまった。
「え……」
引き離すように引っ張ると、ガチャガチャと音を立てて、中から三つの輪がチェーン状に繋がって出てきた。
「一箇所だけを外せばフレイルとして使え、二箇所を外せば三節棍という武器として使えると言っておりましたが、三節棍というのは私はよく存じません」
「僕は逆にフレイルというのを知らないです。三節棍というのは知ってますが使ったことがないです」
三節棍やフレイルというのは、別に使わなければそれでいい機能だけど、それより気になるのは強度の問題だ。
僕が難しい顔をしていたからだろうか。ナーグマンから次の言葉が発せられた。
「造ったのは前回と同じ職人なのですが、やはりただの棍を造るのはつまらないと言いまして……今回はギミックを造るのが楽しかったとかで材料代も半額でいいと言っていました。もしよければなのですが金貨一枚でいかがでしょうか」
ミスリルの武器を金貨一枚で買えるのは魅力的なんだけど、命を預ける物だから強度に不安があるものはなあ……でもまあ、なんとかできるかも知れないし買っておくか。
「じゃあ買わせていただきます」
「そ、そうですか! ありがとうございます」
僕は金貨を支払って、布で包んでもらったミスリル棍を持って店を出た。
用事も終わったことだし、まだ時間が早いけどギルドに行って魔石を買い取ってもらうか。
昨日は夕方くらいに行くとか言ったような気がするしけど、僕は昼前にギルドを訪ねてしまうことにした。
ギルドに着いたけど、ギフはまだ寝ているのかカウンターには彼の姿がない。
ギフの代わりに、僕が見たことがない女性がいたので、その人に魔石の買い取りをお願いすることにした。
「これの買い取りをお願いします」
僕は魔石が入ってる袋をカウンターに置いた。今回手に入れた魔石の半分くらいを入れてある。
「はい。数が多いようですので少々お時間をください」
「分かりました。お願いします」
僕は空いてるテーブルの席に座って待つことにした。
数分後、カウンターに呼ばれ、金貨三枚を受け取った。やはり、大根掘りではそんなに稼げないようだ。ただ、大きめの魔石は買い取りに出さなかったとはいえ、地下三、四階の魔物が落とした魔石は入れてある。それに、持ってきた数に対して思ったよりも買取額が明らかに安い。
誰か知ってる人が降りてきたらギフを呼んでもらおうかなと思って、暫くの間椅子に座って待ってみたけど誰も来ない。
仕方ない、伝言だけ頼んでまた来ることにしよう。
僕は受付の人に、ギフに呼ばれて来たけどいないようなので一旦帰るから、ギフに伝えておいて欲しいと伝えた。
「買取価格に不満があってギルマスの名前を出されたのなら、魔石をお返ししますので先程の金貨を戻してください」
と、全然求めてない回答が、ちょっとキツめの言い方で返ってきた。
「買取価格に不満なんてないです。不信感はありますが……そう言う言われ方をするとちょっと気になりますね。すみませんがギフを起こしてきてくれますか?」
そう返してみると、さらにキーキーとした声で、「あんたなんかの為にギルマスをお呼びできるわけがないでしょう!」と言われてしまった。
僕はそもそもギルマスじゃなくてギフを呼んでほしいと言ってるのだけど。それを言うとさらに怒って「出ていきなさい」と言って魔石の入った袋を投げつけてきた。
流石にこれは酷い……そこに「ふぁ~ぁあ、なんだい、うるさいね」とアトリの声が聞こえてきた。
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