自由に自在に

もずく

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予想guys

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 魔鉱窟ダンジョンが消え去ってから二ヶ月が過ぎた。
 街の東門側の賑わいはなくなりつつあり、幾つかの店舗は西門の大通り沿いに移転したり、大樹の近くに仮店舗を出すものまで現れ始めている。
 今や大樹の小鳥亭という食事処が大繁盛しているし、徒歩で二時間前後の場所ではあるけど、護衛付きの馬車なんかも一日に何往復かしている。
 大樹の根のダンジョンの近くが、今、商人の間では熱く盛り上がっているようだ。

 それもそのはず。
 一月まえくらいから、大根は大根の愛称はそのままに、大根ではなくなっているのだ。
 ギフと話したように、今や大樹の根のダンジョンからは、新鮮で健康にいい野菜が採取できるようになり、ダンジョンのエリアボスからは武器や防具、魔導具などが出てくるようになった。
 ダンジョンが魔鉱窟よりも一段回難度が高いこともあり、ダンジョンから帰って来ないパーティーも時にはいるが、それでも一攫千金を狙ってチャレンジャーはダンジョンに入っていく。
 また、魔鉱窟ダンジョンで低階層を見回っていた警備隊もレベルアップしたのか、大根の地下二階までは比較的安全に行動できるようになっている。
 また、現地人のチャレンジャー志願者達の訓練の為に、地上に現れるコボルトは支援付きで戦えるようになっている。今やちょっとした闘技場のように観客席まで作られていて、ダンジョンに入らない一般の人が観戦しにくるようにもなっていた。
 チャレンジャーがダンジョンに自由に出入りできるのは、夜六時以降から朝九時までになっている。朝九時から夜六時までは、男爵のところの兵士達が闘技場を管理していて、魔物が湧くリポップするまでの時間以外は、訓練中、または兵士達がコボルトを倒すまでは待たなければならないようになっていた。

 個人的には、このダンジョンの私物化にはちょっとした憤りがある。
 今までは僕専用の訓練場だったのに、気が付けば通路の端っこを歩かされてる気分だ。
 その内、闘士からも入場料を取るとか、ギルドカードの提示とかいう話も出ているらしく、本当に遺憾の意を表明したいくらいの気分だ。

 遺憾の意。

 まあ、つまり、怒ってるよ~と言うだけで、実はどうとも思ってないってことなんだけど。
 確か、日本ではそういうときにこの言葉を使ったよね。

 僕は西門の方に移転した、東門のエリアにあるとある喫茶店を買ってみた。以前、何回か朝食を食べに行ってた喫茶店だ。土地代込みで金貨八五枚で買えてしまった。
 魔鉱窟ダンジョンがあった時はこの倍はしたみたいなので、かなりお得な買い物だと思う。
 だってね。また魔鉱窟ダンジョン復活するんだし。財テクだよ。財テク。
 超インサイダーっぽいけど気にしない。
 買った店は、調理場やテーブル、椅子が残ったまま買うことができたので、そのまま居抜きで食堂として使える造りだ。だから、僕はここにハワードさん達を呼ぶつもりでいる。
 ハワードさんネルさんが嫌がらなければ、だけど。
 元のお店に愛着があるかも知れないから無理は言えない。

 ちなみに、財テク用にもう二軒ほど買ってあるけど、これはたぶん、本当に財テク用になるかなと思ってる。

 さて。
 ダンジョンに話を戻そうか。
 大根掘りは思ったよりも攻略速度が早かった。
 とは言っても、それは男爵のいるパーティーに限った話なんだけど。
 男爵パーティーは、今、地下四階でオークを相手に訓練をしているようだ。これは僕が想定していたよりも少し到達が早い。
 やはり、ダンジョン攻略の経験がある男爵がいることと、レア度の高い闘士が男爵に引っ張られて育ってきたのが大きいんだろうな。
 聖騎士とか、例の忍者カゴシマくんとかが同じパーティーにいるらしいから。
 それと、そこには今も熊野くんがいるらしい。この間クレアボヤンスでちらっと見たけど、かなり動きが良くなっていた。レア度の壁はあるんだろうけど、やはり、強さにはレベルが一番大きく影響してると思う。

 でだ。
 ギフ達も、つい最近、地下三階を自力で突破して地下四階に入ったところだ。
 僕なしで、彼らにとってのフルメンバーのパーティーで、だ。
 ギフ、シュガー、ノーラ、ボル、エナ、リン、アトリ、ガロ。
 一パーティーとしては八人は多い気がするけど、ボスエリアはそれなりに広いし、コボルトキングやナイトには、正面からより背後からの攻撃の方がいいみたいだ。
 これから暫くはオークとの戦いでレベルアップしつつ、巨大カエルとの戦いを頑張って欲しい。ちなみに、巨大カエルのエリアはちょっと見つけにくいところにある。
 まあ、ギフはもしかしたら場所を知ってるかも知れないけど。前に、最高到達階が五階って言ってたからね。

 そして僕はと言えば、地下七階を突破して、今は地下八階のボスを倒せずにいた。
 いや、倒そうと思ったら倒せると思うんだけどね。
 じゃあ何故倒さないのかといえば。
 そこに下りの階段が用意されていないから、と言えば分かってもらえるだろうか。
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