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わたくしのお茶会
しおりを挟むお茶会に参加してくれたヴィアさんの表情が芳しくない。
楽しくないのかしら、お気に障る事があったかしら、体調がよろしくないのかしら……と考えて、もしかしたら、このような催しに慣れていらっしゃらないのでは と思い至る。海二位の方について あまり詳しくは知らないけれど、お茶会の招待状が届くのは、緑位からだと聞いたこともある。お茶会に招待しているお友達の中には、このお茶会が初めてだとおっしゃる方もいらした。
ヴィアさんの負担にならないようにと、お喋り好きな子や、気難しい子の話し相手をして、気遣いが上手なお友達に「よろしくお願いね 」という思いを込めて目配せをする。彼女達は小さく頷いて、ヴィアさんのフォローに回ってくれた。有能な彼女達なら、きっと卒なくヴィアさんのお相手をしてくれるだろう。
「エリン様、私この髪型で暫く過ごそうと思ったのですけれど、別の試してみたい髪型を思いついてしまったの。いかが思われます?」
「良いと思いますよ。お気に入りが変われば、髪型を変えるのも自然な事ですもの。無理して今の髪型に拘らなくても良いのではないかしら」
「まあ、素敵な考え方! そうですわよね、エリン様のおっしゃる通りですわ」
「我慢していてはおしゃれを心から楽しめませんもの。自分の気持ちに嘘はつかないで 自由に楽しむことが、 美しさを保つ一番の秘訣ですわ」
お友達とお喋りして、ほほほと笑い合う。普段なかなかできない長話も、時間一杯までできる。それが いつものお茶会。けれど 今日は、会話の合間に、カップを傾ける隙に、花壇を仰ぐ瞬間に、つい ヴィアさんの方に視線が吸い寄せられてしまう。
この場にヴィアさんがいるだけで、毎月の恒例行事となったお茶会が 特別なものに思えて。いつもより、お茶が美味しくて。産地や淹れ方だけの問題でないことは分かっている。ヴィアさんと同じ空間でお茶を飲んでいる その事実が、わたくしの感覚を歪ませている。今 この空間の中で、きっとわたくしだけが、身の内から溢れるほどの多幸感を享受していた。
ああ。ヴィアさん、ヴィアさん ヴィアさんヴィアさん……ヴィア、様。来月のお茶会にも参加してくださるかしら、それとも今度こそ断られてしまうかしら。
気遣い上手なはずの二人に挟まれたまま、居心地悪そうにしていらっしゃるヴィア様を盗み見る。やはり、大人数での催しに慣れておられないから、緊張していらっしゃるのかしら。
硬い表情で、身を縮こまらせていらっしゃる仕草まで 愛らしい。同じ空間で、息をしているという事実に 感動で心が震える。
これで、終わりにしたくない。
ヴィア様との時間が、もっと欲しい。
叶うならば、ずっとーー。
どうしたら、ヴィア様はわたくしと居てくださるの?
どうしたら、ヴィア様はわたくしとお話してくださるの?
どうしたら、ヴィア様の笑顔をこの目で見る事ができるの?
どうしたら、ヴィア様の側に居られるのかしら……。
なんだっていい。あなたのそばに居れるのなら、それを許してくれるのなら、なんだって我慢する。だから わたくしは、ヴィア様を引き留める方法が知りたい。
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