4 / 62
4話 ライオネル様は素晴らしすぎるのですわ②
しおりを挟むそしてランチの時間になり、わたくしは待ち合わせ場所の裏庭へ向かう。
ライオネル様はいつも先に来て待っていてくれる。こんなところもわたくしの心を掴んで離さないポイントだ。
「ライオネル様! お待たせいたしました。さあ、お昼をいただきましょう」
「ああ」
「そうですわ、今日はランチボックスにライオネル様のお好きなサーモンサンドを作ってきましたの! よろしければ召し上がりますか?」
今日は食堂ではなくこちらがいいと前日に聞いていたので、ライオネル様のお好きなサーモンサンドを用意してきたのだ。これも完璧な淑女教育の賜物で、クッキーなどの簡単なお菓子やサンドウィッチ、パンケーキなどの簡単なものなら調理できた。
三カ月前にライオネル様とピクニックに行った時に作ってあげたら、とてもお気に召したのかすべて平らげてくれた。あれはとても嬉しかったと思い出す。
「交換だ」
そう言って、わたくしとライオネル様のランチボックスを入れ替える。
ライオネル様はいつもより険しい顔で、黙々と召し上がった。
あら? サーモンサンドはお好きでなかったのかしら? 前回よりも渋いお顔になっていらっしゃるわ。
交換まで申し出てくださったのに……ああ、そうか。これも婚約者としての勤めで演出してくださっているのね。
次があったら違うものにしましょう。
失敗は次回の糧にして、わたくしもライオネル様のランチボックスをいただく。
蓋を開けてみると、なんということかわたくしの大好物ばかりが入っていた。きっとこの演出のために料理人に用意させてくれたのだろう。
こう見えてわたくしはお肉が大好きなので、ポークやチキン、ビーフのボリュームたっぷりなバケットサンドを頬張った。
わたくしもまだまだですわ。ライオネル様のお心遣いに負けないように、精進しないと!
こうして楽しいランチタイムが終わり、それぞれのクラスに戻る時間になってしまった。
「ライオネル様、今日のランチはとても素敵でしたわ! わたくしこういう恋愛小説に出てくるようなシチュエーションに憧れてましたの! 本当にありがとうございます!」
「っ!」
満面の笑みを浮かべてライオネル様にお礼を伝えると、一瞬ビクリと震えてサッと美しお顔を逸らされてしまう。
しまった、またやってしまったわ。ライオネル様はわたくしの笑顔は嫌いでしたのに、思わず気持ちがあふれて表情に出してしまったわ。
ライオネル様はわたくしが全力で笑顔を浮かべると、いつも顔を背けてしまう。きっと嫌いな女が笑ったところで、気分が悪くなるだけなのだろう。
ほんの少し微笑みを深めるくらいなら、平気らしいのでいつも本気で笑うのは控えていた。
「では」
「はい、それではまた帰りの馬車でお会いしましょう」
そうしてそれぞれの教室へと戻っていった。
教室へ戻ると、わたくしが座るはずの机と椅子が水浸しになっていた。
もしかしたら裏庭でのランチボックス交換を見られていて、わたくしがライオネル様のランチボックスを完食してしまったから、勘違いするなと忠告したかったのかもしれない。
「まあ、ちょうどよかったわ。机が汚れてきたから綺麗にしたかったの! どなたかしら? お礼を言いたいわ」
またしてもバチっとドリカさんと視線が合った。今度は真っ赤なお顔でプイッと横を向いてしまった。
あら、残念。またお話ができなかったわ。
仕方がないので風魔法で机を綺麗にして、午後からは快適に授業を受けた。
なかなか上手くいかないものである。
そうして帰りの馬車の中では、机を綺麗にしてくれた友人のお話をしたり、風魔法が上達したことをお話しして伯爵邸に戻ったのだった。
36
あなたにおすすめの小説
【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を
川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」
とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。
これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。
だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。
新聞と涙 それでも恋をする
あなたの照らす道は祝福《コーデリア》
君のため道に灯りを点けておく
話したいことがある 会いたい《クローヴィス》
これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。
第22回書き出し祭り参加作品
2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます
2025.2.14 後日談を投稿しました
虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても
千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました
つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。
けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。
会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
ぱんだ
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。
噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
藍生蕗
恋愛
子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。
しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。
いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。
※ 本編は4万字くらいのお話です
※ 他のサイトでも公開してます
※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。
※ ご都合主義
※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!)
※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
→同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる