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9話 ライオネル様の様子がおかしいですわ①
翌日、学院を休んで横になっていると、なにやら廊下が騒がしくなった。
ノックもせずに部屋に飛び込んできたのは、ライオネル様だ。あまりの慌てっぷりにわたくしの方が驚いた。
「ハーミリア! 大丈夫か? 身体の具合が悪いと聞いて見舞いに来たのだが……」
「…………」
相変わらず歯が痛くて話せないので、こくりと頷く。
それにしてもライオネル様が、わたくしにこんなにお話しされるなんて珍しい。
「あ……すまない。レディの寝室にノックもなしに……また、出直してくる」
それだけ言ってライオネル様は項垂れて帰ってしまった。
なにがあったのか、わたくしが話さなくなったらライオネル様がたくさんお話しするようになった。
え、もしかして。もしかすると、わたくしが喋りすぎだったのかしら!?
あああ! 心当たりがありすぎて、どうしましょう!
今すぐお詫びしないと! 話せないのだから手紙を書きましょう。そうよ、わたくしの状況もお伝えして、誤解のないようにしないと。
慌ててレターセットを取り出して、ライオネル様に手紙をしたためた。
それからライオネル様は、毎日お見舞いの品を手にして学院の帰りに寄ってくれるようになった。
この日ライオネル様は手土産だと新鮮で栄養価の高いフルーツを持ってきてくれた。よく見るとこの国ではなかなか手に入らない、東方のフルーツもある。
通常では注文してから届くまで一週間はかかるものだ。その代わり味もとろけるような果肉も極上だ。
後で料理長にすりつぶしてジュースにしてもらおう。
「ハーミリア、昨日はすまなかった。君が体調を崩したと聞いて、慌ててしまったのだ」
「…………」
ゆっくりと顔を左右に振って、気にしてないとライオネル様に伝える。
よく見るとライオネル様は見慣れないイヤーカフをつけていた。
あまり装飾品を好まない方なのに珍しい。もしかしたら誰かからのプレゼントだろうか?
胸の内がチリチリと嫉妬の炎に焼かれる。
たった一日学院に行かなかっただけで、ライオネル様に擦り寄る女性の影が見えた。
一刻も早く治して、ライオネル様のそばにいなければ。
そうしないと、わたくしの居場所などあっという間になくなってしまう。だけどなにをやっても歯の痛みは消えなかった。
その翌日から手土産を話題にして、今までにないくらいわたくしに話しかけてくれる。嬉しくて嬉しくて、それだけで歯の痛みが和らいだ。
「ハーミリア、これは南国より取り寄せたシャインマスカットをジュースにしたものだ。僕も飲んだがとても美味しかった」
ライオネル様のおすすめなら間違いない。わたくしはそっと差し出されたグラスに口をつける。少し口に含めば甘くてさっぱりとした果汁が流れ込み、痛みに固まった心をほぐしていった。
ライオネル様に視線を向けてコクリと頷けば、ホッとしたように眉尻を下げる。その破壊力が凄まじかった。
ラ、ライオネル様がっ! ライオネル様の安堵した表情が尊すぎるわー!!
なんですの、その心許した相手にしか見せないような緩んだお顔はっ! わたくし初めて拝見しましたけど、これでどんぶり五杯はこのジュースが飲めますわっ!!
思わず表情筋が動いてしまい、痛みをやり過ごすのに苦労した。
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