27 / 62
27話 ライオネル様がとんでもないことを提案されましたわ!!①
その日もいつものようにライオネル様のエスコートで迎の馬車に乗り込み、最近では定番になった婚約者の膝の上に腰を下ろした。
「ハーミリア、今日も薔薇のように艶やかで華やかだ」
「ライオネル様も……いえ、少しお疲れのようですけど、ちゃんと眠れましたか?」
「ああ、昨夜はちょっと練習をしていて……いや、それよりも大事な提案があるんだ」
いつになく真剣なライオネル様に、わたくしはなにか大切なお話かと身構えた。
「その……僕たちもそろそろ愛称で呼び合わないか?」
「……! ついに、愛称呼び……っ!」
なんということでしょう! 夢にまで見た愛称呼びでございますの!?
あああ、こんなに優しいライオネル様だけでも天にも昇る気持ちなのに、愛称で呼ばれたら本当に天国へ行ってしまいそうだわ!!
「ラブラブバカップルを目指すのに欠かせない要素だと思うんだ。ぜひ協力してほ——」
「はい! 喜んで!!」
いけませんわ、思わず食い気味で返事をしてしまいましたわ。たとえ目的のためであっても、ライオネル様を愛称呼びできるのであれば、このチャンスを逃すわけにはいきませんわっ!
「では、僕は……リ、リアと呼ぼう」
「っ!!!!」
なんてこと! なんて破壊力なのっ! 照れながらわたくしの愛称を呼ぶライオネル様が、尊すぎるわ——っ!!!!
「リア。リアにも僕の愛称を呼んでほしい」
なんですの! 頬を染めながら、なんなら耳まで赤くしながら、控えめにかわいくお願いしてくるライオネル様が今生で目にできるなんて、想像もしてませんでしたわ!!
「ライ……ああ! どうしましょう! ちょっと心の準備をいたしますので、お時間をいただいてもよろしいですか!?」
「え……もしかして嫌だった? いや、それなら今まで通りで……」
それはもう悲しげに眉尻を下げるライオネル様も、麗しくて素敵と思いながら全力で否定する。
「違いますの! あまりにも夢に見ていたことですから、興奮しすぎてしまって身体がついてこないだけですの。心の準備ができれば問題ありませんわ!」
「嫌では……ない?」
「もちろんですわっ!!」
それはもう力強く肯定する。わたくしから攻めるのは得意だけど、ライオネル様からグイグイ攻められると心の準備ができてなくて狼狽えてしまう。せっかく素晴らしい提案をしてくださったのに、本当にもったいない。
「よかった、実は僕も昨夜練習したんだ」
ふにゃりと笑うライオネル様に胸を撃ち抜かれ、息も絶え絶えになりながら馬車から降りた。わたくしの寿命が日々縮まっているような気がする。
ダメよ、ライオネル様と一緒に過ごすのなら、なんとしても長生きしなければ。
「ライオネル様。わたくし心の準備をしますので、今日のランチは別々にしていただけませんか?」
「そうか……ランチの時間は残念だけど、仕方ないな。それなら魔法練習場にいるから、なにかあったら来てくれ」
「わかりましたわ! 必ずや、己の心身を整えてまいります!」
これは、なんとしてでもランチの時間でライオネル様を愛称で呼べるようにしなければ……!!
「それで、どうして私のところに来るのよ!?」
「わたくしにはシルビア様しか頼れる方がおりませんの。それに、このミッションをクリアしませんとライオネル様が悲しまれますわ」
「ライオネル様がっ!? そ、それなら仕方ないわね。私が付き合ってあげるわ」
「シルビア様! ありがとうございます! さすがわたくしの唯一の友人ですわ」
「いつ貴女の友人になったのよ!?」
心優しいシルビア様のおかげで、わたくしはランチタイムを特訓の時間にすることができた。
シルビア様は素直ではないけれど、裏表のない方なのでとても扱いやすいのだ。しかも人情に厚く根はとても真面目なシルビア様なら、きっとわたくしの特訓にも最後まで付き合ってくれるはずだ。
わたくしはシルビア様を中庭の一画に連れ出して、ランチを口に運びながら事情を説明する。
「ちょっと……まさかそんなことで私をわざわざ呼び出したの!?」
「わたくし、どうしてもライオネル様の喜ぶ顔が早く見たくて、シルビア様に頼るしかないと思いましたの」
「なんで私が、ライオネル様を愛称呼びする特訓に付き合わないといけないのよ!?」
怒りながらもランチを召し上がるシルビア様は器用だなと思いながら、正直な気持ちを打ち明けた。
あなたにおすすめの小説
傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました
みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。
ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。
侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw
さこの
恋愛
「喜べリリアン! 第一王子の婚約者候補におまえが挙がったぞ!」
ある日お兄様とサロンでお茶をしていたらお父様が突撃して来た。
「良かったな! お前はフレデリック殿下のことを慕っていただろう?」
いえ! 慕っていません!
このままでは父親と意見の相違があるまま婚約者にされてしまう。
どうしようと考えて出した答えが【悪役令嬢に私はなる!】だった。
しかしリリアンは【悪役令嬢】と言う存在の解釈の仕方が……
*設定は緩いです
世界の現実は、理不尽で残酷だ――平等など存在しない
こもど
恋愛
「学園内は、身分に関係なく平等であるべきです」
その“正義”が、王国を崩しかけた。
王太子ルイスは、貴族学院で平民出身の聖女マリアがいじめられたと信じ、
婚約者である公爵令嬢アリエノール・ダキテーヌを断罪し、婚約破棄を宣言する。
だが――
たとえそれが事実であったとしても、
それは婚約破棄の正当な理由にはならなかった。
貴族社会において、婚約とは恋愛ではない。
それは契約であり、権力であり、国家の均衡そのものだ。
「世界は、残酷で不平等なのです」
その現実を理解しないまま振るわれた“善意の正義”は、
王太子の廃嫡、聖女の幽閉、王家と公爵家の決定的な断絶を招く。
婚約破棄は恋愛劇では終わらない。
それは、国家が牙を剥く瞬間だ。
本作は、
「いじめられたという事実があっても、それは免罪符にはならない」
「平等を信じた者が、最も残酷な結末に辿り着く」
そんな現実を、徹底して描く。
――これは、ざまぁではない。
誰も救われない、残酷な現実の物語である。
※本作は中世ヨーロッパをモデルにしたフィクションです。
学園制度・男女共学などは史実とは異なりますが、
権力構造と政治的判断の冷酷さを重視して描いています。
---
【完結】ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!
Rohdea
恋愛
──“私”がいなくなれば、あなたには幸せが待っている……でも、このまま大人しく殺されるのはごめんです!!
男爵令嬢のソフィアは、ある日、この世界がかつての自分が愛読していた小説の世界である事を思い出した。
そんな今の自分はなんと物語の序盤で殺されてしまう脇役令嬢!
そして、そんな自分の“死”が物語の主人公であるヒーローとヒロインを結び付けるきっかけとなるらしい。
どうして私が見ず知らずのヒーローとヒロインの為に殺されなくてはならないの?
ヒーローとヒロインには悪いけど……この運命、変えさせて頂きます!
しかし、物語通りに話が進もうとしていて困ったソフィアは、
物語のヒーローにあるお願いをする為に会いにいく事にしたけれど……
2022.4.7
予定より長くなったので短編から長編に変更しました!(スミマセン)
《追記》たくさんの感想コメントありがとうございます!
とても嬉しくて、全部楽しく笑いながら読んでいます。
ですが、実は今週は仕事がとても忙しくて(休みが……)その為、現在全く返信が出来ず……本当にすみません。
よければ、もう少しこのフニフニ話にお付き合い下さい。
【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
青依香伽
恋愛
ルイーズは婚約者を幼少の頃から家族のように大切に思っていた
そこに男女の情はなかったが、将来的には伴侶になるのだからとルイーズなりに尽くしてきた
しかし彼にとってルイーズの献身は余計なお世話でしかなかったのだろう
婚約者の裏切りにより人生の転換期を迎えるルイーズ
婚約者との別れを選択したルイーズは完璧な侍女になることができるのか
この物語は様々な人たちとの出会いによって、成長していく女の子のお話
*更新は不定期です
*加筆修正中です
私の婚約者と駆け落ちした妹の代わりに死神卿へ嫁ぎます
あねもね
恋愛
本日、パストゥール辺境伯に嫁ぐはずの双子の妹が、結婚式を放り出して私の婚約者と駆け落ちした。だから私が代わりに冷酷無慈悲な死神卿と噂されるアレクシス・パストゥール様に嫁ぎましょう。――妹が連れ戻されるその時まで!
※一日複数話、投稿することがあります。
※2022年2月13日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう
おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。
本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。
初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。
翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス……
(※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)
【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!
永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手
ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。
だがしかし
フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。
貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。