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37話 王女は皇子を唆す
私は第三王女マリアンとして生を受け、周りから惜しみない愛情を注がれすべて思い通りにしてきた。
それなのにこの学院に入学してからはなにかと邪魔が入り、うまくいかない。
「なんですって? テオフィル、本当なの? サザランドの第二皇子がハーミリアにご執心ですって?」
「はい、ハーミリア嬢をお守りすると公言されております。そのためマリアン様の指示で流していた噂も一部は沈静化しました」
「本当に忌々しい女ね……っ! ライオネル様に続いて帝国の第二皇子まで!」
だけど、確か帝国の第二皇子は妾腹で後ろ盾はないに等しい。もしあの皇子がハーミリアを口説き落として帝国に行ったとしても、あの皇子の妻ではまともな待遇は受けられないだろう。
そもそも女好きで節操がないと聞いたことがある。
どうせチヤホヤされているのも、今だけだわ。
「うふふ、いいことを思いついたわ。あの皇子に接触するわよ」
「クリストファー殿下ですか?」
「そうよ、ハーミリアの今日の生徒会の仕事は免除してさっさと帰っていただきましょう。ローズ、貴女が代わりにハーミリアの仕事を片付けておいて」
「承知しました」
私はハーミリアに今日は生徒会の仕事がないと告げて、クリストファー殿下がひとりになるタイミングを狙った。
ハーミリアが迎えの馬車に乗り込むのを見届けたクリストファー殿下は、名残惜しそうに馬車を見送っていた。
一時的なものなのに、随分と心を寄せているように見えるけど、私は気にせずその背中へ声をかけた。
「クリストファー殿下」
「……ああ、マリアン王女か。なにか用か?」
「ええ、ハーミリアについて少し相談がございますの。お時間いただけますか?」
「わかった」
生徒会室へやってきた私は、早速本題に入る。
「ハーミリアに婚約者がいるのはご存じかしら?」
「ああ、一度も姿を見たことがないが、そうらしいな」
「ハーミリアの婚約者であるライオネル様は今、私との婚約を整えるために準備されてるの。だからハーミリアはそのうち婚約を解消されるわ」
「そうなのか!?」
やっと皇子が食いついてきた。ここで皇子をうまく煽って、ハーミリアとの仲をすすめるように焚きつけるのよ。
「ええ、ですから、ハーミリアをしっかりと捕まえていてほしいのです」
「そうか……それなら、多少強引な手を使っても問題ないか」
「皇帝陛下からの勅命であれば誰であろうと無視できませんわ」
「ふむ。ハーミリアが婚約解消されるのはいつだ?」
ギラリと獲物を狙うように琥珀色の瞳が光る。ハーミリアを手に入れるために、本格的な行動を起こす気になったようだ。
「そうですわね、あと一週間もあれば王命として婚約解消できますわ」
「一週間か、ならば俺の方も間に合わせよう」
「くれぐれもハーミリアには知られないようにしてくださいませ」
「そうだな、わかった」
クリストファー殿下は帝国に使いを送るべく、学生寮へ戻った。魔道具を使えばさほど時間はかからないから、皇帝の勅命も間に合うだろう。ライオネル様から連絡はないけれど、王命さえ出してもらえば問題ない。
「そうだわ、今日は私も早く王城に戻って、クリストファー殿下に魔道具を準備しないと」
もうすぐ叶う望みを想像して笑みがこぼれる。どんなにハーミリアが足掻いても、王命と帝国の皇帝からの勅命があれば逆らう術はない。これでやっとライオネル様は私のものになるのだ。
「うふふ、今夜お父様にお願いしましょう。ああ、そうだわお兄様は小言ばかりだから、こっそりお願いしなくてはね」
私は久しぶりに機嫌よく生徒会室を後にしたのだった。
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