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38話 王太子の役目
マリアンがなにか新たに企んでいるのは、兄としてわかっていた。
これでも王太子教育を受けてきて情報収集や人心掌握の術も学んでいる。だから私は周りの有能な人材を大切にしてきたし、各所に配置している私の手の者から報告を受けていた。
「ふーん、なるほど。いよいよマリアンにはお仕置きが必要だな」
「他にも今までのハーミリア・マルグレンに関する不当な噂や、ドリカ・モロンの騒動も裏で糸を引いていたのはマリアン様です。証拠はこちらです」
「必要であれば私たちが証言もしますわ」
「うん、その時は頼むよ。ローザもテオフィルも、それまでは今まで通りに動いてくれ」
「「承知しました」」
マリアンの取り巻きとして配置していたのは、王家に絶対の忠誠を誓うトライデン公爵家とシュミレイ辺境伯の者たちだ。入学する前から手を回し、監視も兼ねてつけていた。
生徒会室をマリアンに使わせていたのは、その方が監視がしやすかったからだ。私が王族しか使えない貴賓室を使うことで気が緩んだのか、マリアンはさまざまな悪事を生徒会室で働いてきた。
もともと父と母に甘やかされて育てられたから、わがままで我慢ができない性格のマリアンが王族として問題なくやっていけるのか不安だった。
目をつぶれる範囲ならそのまま卒業させようと思っていたが、さすがにやりすぎだ。
私の側近であるライオネルを脅迫し、その婚約者であるマルグレン嬢を害し、帝国の第二皇子も巻き込んで婚約者を得ようなどありえないことだ。
私たち王族は国勢の状況によって必要な縁を結べるようにするため、あえて婚約者を決めていない。この学院を卒業する時に卒業パーティーで婚約発表するのが慣例だ。それを自分の気持ちひとつで決めるなど、なんと浅はかなことか。
「父上はマリアンのわがままを聞くつもりのようだな。なんとか卒業まで国王でいてもらいたいのだが……」
「これで婚約解消されてしまうと、タックス侯爵家が国から離反します」
「ああ、それをわかっているから今までは受け流していたはずだが、クリストファー殿下が現れて判断を誤ったのかもしれない」
側近であるソリアーノ侯爵家の嫡男アベルの言葉に、危機的状況だと現実を突きつけられる。
王家に絶対の忠誠を誓い王家の守護者と呼ばれる五家貴族。結界の守人トライデン公爵家、国境の盾モラクス公爵家、魔術の神タックス侯爵家、導きの叡智ソリアーノ侯爵家、剣の鬼神シュミレイ辺境伯家とはひとつの約束事があった。
それは婚約や婚姻に関しては王家が口を出さないというものだ。もちろん互いに思い合っていて、問題がなければ王族とその五家の間で縁が結ばれることもある。
だが、間違っても王命で婚約を了承させるようなことをしてはいけない。
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婚約者だった五家の令嬢を卒業パーティーで冤罪をきせて追放したり、婚約者がいた令息を王女が見初めて無理やり結婚したのに愛人を囲い虐げた上に離縁したり、まあ、そんなことばかりやらかしてきたのだ。
だからこそ私たち王族は婚約者を決めず、国のために駒として縁を結ぶ道具の役目を果たさなければならない。それが忠誠を誓う代わりに突きつけられた条件なのだから。
叶うなら想いを寄せるあの人と結ばれたいが、期待はしない方がいいだろう。
「ライオネルへ手紙を書く。それから——」
私はただ、自分の役目を果たすことに専念した。
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