【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。

里海慧

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41話 わたくしは信じますわ!!①


 とうとうマリアン様から招待状を受け取った夜会の日になってしまった。

 クリストファー殿下がドレスを送るだの装飾品を送るだの騒いでいたのを、なんとかスルーしてわたくしは今日もアイスブルーのドレスとアクアマリンの宝石を身にまとっている。

 これだけは絶対に譲れませんわ! わたくしはライル様の婚約者ですもの!

「……少しは赤とか金とか俺の色も入れたらどうだ?」
「なぜですか? わたくしはライル様の婚約者ですもの。本日はあくまで世話役としてのパートナーですわ」
「はあ、まあ、いいさ。帰る頃には気持ちも変わっているだろうから」
「どういうことですの?」

 わたくしの問いに答えることなく、クリストファー殿下は夜会会場へと足を踏み入れた。

 学院に入る前にデビュタントを果たし、何度か夜会に参加したことはある。いつも固い表情のライル様にエスコートされて、それでもキラキラと着飾ったライル様が素敵で夢のような時間だった。

 今日は王家の守護者と呼ばれる五家貴族、それに伯爵以上の高位貴族も軒並み出席しているようだ。当然わたくしのお父様とお母様の姿もある。

 タックス侯爵夫妻にも挨拶をしたかったけれど、クリストファー殿下にエスコートされていたので叶わなかった。

 重大発表とはいったいなんなのかしら? クリストファー殿下も参加されているのだから、なにか交易に関すること?

 そうだとしても規模が大きすぎるような気がするわ。まるで王族の婚約発表でもされるみたいだわ。
 わたくしのデビュタントの時は第二王女様の婚約発表があったけれど、それと同じ……まさか。

 自分の考えに嫌な汗が背中を伝う。

 婚約発表できる王族は学院に通っている王太子殿下かマリアン様だ。ジュリアス様ならもっと他国からも貴賓を呼ぶだろう。それならマリアン様の婚約発表? でも、いったい誰と?

 そこで国王陛下と王妃様、王太子殿下とマリアン様が入場された。わたくしはクリストファー殿下のエスコートによって、最前列で国王陛下の夜会開始の言葉を聞くことになった。

「本日は急な夜会開催にも関わらず応じてくれて感謝する。ここで開始の挨拶とともに、ふたつのめでたい発表がある!」

 重大発表に貴族たちは耳を傾けていて、会場内には国王陛下の声だけが響き渡っていた。

「まずひとつ目は、タックス侯爵家嫡男ライオネルと第三王女マリアンの婚約発表である!」

 ざわりと会場内にどよめきは起きる。ライル様と婚約を結んだのはもう十年も前のことだから、社交界には十分浸透していた。それが国王陛下の言葉で覆ったのだ。
 ここで学院に流れていたライル様との噂を思い出す。

『マリアン様とライオネル様のご婚約が、もう決まるそうよ』
『先日はタックス侯爵様が、国王陛下に謁見されたとお父様が言っていたわ!』
『マリアン様とライオネル様の婚約は、もうお済みだと聞いたけれど』

 まさか、あれが事実だったの? でもジークは相変わらずだったし、お父様からも婚約が解消されたなんて話はなかったわ。

 わたくしはふうっと静かに息を吐いて、心を落ち着かせる。

 噂に惑わされてはダメ。ライル様にずっと会えていないから、不安になっているだけよ。

 なにが真実か、どこにライル様の心があるのか、わたくしならわかる。例えマリアン様にお気持ちを向けられていたとしても、それならそうとわかるはず。

 ライル様は誰を見つめていた?
 ライル様が心を砕いていたのは誰に対して?
 会えなくなってから、心変わりの気配はあった?

 ライル様は、わたくしを愛してる?

 シャラリとブレスレットが手首で揺れる。

 あんなに不器用な方がわずか七歳で、国宝レベルの守護の魔法を込めたプレゼントをくれた。その時、どれほどの努力をしてくれたのだろう?

 きっと何度も失敗して、何度も挑戦して、やっと身に付けたに違いない。その想いを信じないで、なにを信じるというのか。

「続いて、ライオネル令息の婚約者であったマルグレン伯爵の令嬢ハーミリアは、なんと帝国の第二皇子であるクリストファー殿下と婚約されることになった!」

 さらなる重大発表に会場の貴族たちはざわめきたった。王族が上がる壇上に視線を向ければ、マリアン様がニヤリと醜く笑っていた。

 隣のクリストファー殿下を睨みつければ、同じように口元を歪ませて傲慢な笑みを浮かべている。

「これでお前は俺のものだ。マリアン王女はいい仕事をしてくれたよ」

 なるほど、これが目的だったのね……! しかもこのふたりが裏で手を組んでいたなんて!

 それならわたくしにも考えがあるわ。綱渡りの賭けになるけど、このまま黙って受け入れるつもりなんてない。例え不敬罪に問われても、こんな理不尽に屈したくない!!

「国王陛下、僭越ながら意見を述べてもよろしいでしょうか?」
「ハーミリアか。うむ、せっかくの祝いの席だ。申してみよ」

 わたくしは、凛と美しく見えるように背筋を伸ばした。



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