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47話 ライオネル様がブチ切れてますわ!!②
しおりを挟む「僕がマジックエンペラーになった証か。いいだろう、特別にお前にこのローブを着せてやる」
「そんなことをして何の意味があるのだ!」
「魔法連盟で渡されるローブは魔道具の一種で、不正利用防止のため持ち主しか着れないようになっている。持ち主以外が着ればどうなるか、試してみよう。リア、少し待っていて」
わたくしたちの周りの結界を解いて、名残惜しそうに離れるライル様にキュンキュンしてしまう。
ライル様は無駄のない動きで優雅にローブを脱ぎ、国王陛下の肩に乗せた。次の瞬間、バリバリバリッと空気を切り裂くような大きな音がしたかと思ったら、国王陛下が白目を剥いていた。
身体のあちこちから白煙が上っていて、どうやら雷魔法を食らったようである。
「へえ、初めて試してみたけど、こうなるのか。でも、これで僕が本物のマジックエンペラーだと、わかってくれたね? 次に余計なことを言えば、王女と同じく凍らせる」
サラッと治癒魔法をかけて国王陛下を正気に戻したライル様は、冷酷な微笑みを浮かべて会場を見渡した。
「他に僕を疑う者はいないか? では、この場で誰に敬意を払うべきか、聡明な君たちならわかるだろう?」
ライル様が、黒くて冷たいオーラを放つライル様が素敵すぎるっ! といつものように恍惚感に浸っていた。
「お、おい! 俺は……俺だって、ハーミリアを愛してるんだ! このまま引くことはできない!」
なんと先ほど説得したはずのクリストファー殿下が立ち上がった。どうしてそのまま引き下がってくれないのか、頭が痛くなってくる。
ただでさえ見られただけで凍りついてしまいそうなライル様の視線に、明確な敵意がにじんでいた。
「そうか、お前がリアに言い寄っていた帝国の第二皇子か」
「っ! ここで俺と勝負しろ! 勝った方がハーミリアの婚約者だ!」
そこでライル様が指を鳴らすと、会場中の氷が消え去った。
「わかった、決闘だな。そうだな……魔法で勝負するのはフェアではないな。剣の勝負でいいか?」
「勝負は一度きりだ」
「ちょうどいい、ここにいる者たちには証人になってもらおう。危険が及ばないように結界も必要か」
ライル様が手をひと振りすれば会場の貴族たちは転移魔法で壁際に移動させられ、ぽっかりと開いたダンススペースに結界が張られた。その中央でふたりは騎士から借りた剣を構えている。
そんな人を景品みたいに扱うなと声を大にして言いたかったけど、ライル様に微笑まれてうっとりしていたら真剣勝負が始まってしまった。
ライル様が負けるわけないと信じてるけど、少し分が悪い。だってライル様は唯一剣が苦手なのだ。昔から優しすぎて強く攻め込むことができなくて、いつも負けていた。
キィンッと金属音が響く。
帝国の皇子というだけあって、その荒々しい剣さばきは力強い。パワーに押されて引けばジリジリと追い詰められていく。
だけどライル様の剣筋は無駄がなくスマートで、相手の隙をついて的確なダメージを与えていった。
そうだ、つまり強く攻め込むことができれば、ライル様は剣でも敵なしだったのだ。
ひときわ高い金属音が響き、首元に切っ先を突きつけられたクリストファー殿下が膝をついた。
ライル様の勝利だ。
「僕の勝ちだ。二度とリアに近づくな」
「くそっ……! 俺だって、本気で愛してたんだ……!」
「リアへの愛なら僕は誰にも負けない」
観戦していた貴族たちがざわざわと騒ぎ出す。
ここまでとんでもない展開の夜会になるなんて想像すらしてなかった。でもわたくしにとっては、最高の夜会だ。
愛するライル様に再会できた。
わたくしのために命の危険もある試験に挑み、見事資格をその手にしてきた。
わたくしの涙を止めるために、触れるようなキスを額にしてくれた。
「いいか、この場にいる全員に宣言する! ハーミリア・マルグレンは僕の婚約者だ! 僕たちの邪魔をするなら、容赦せず全力で排除する!!」
そして、ライル様のすべてでわたくしを守ってくれた。
あああああ!! わたくしのライル様が、カッコよすぎますわ——っ!!!!
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