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49話 ライオネル様が容赦ありませんわ!!②
「マリアン、お前にはふたつの選択肢がある。最北の地にある修道院で命尽きるまで神に仕えるか、海の向こうにあるシュラバン王国の第十五妃として嫁ぐか。好きな方を選べ」
最北の地にある修道院は主に罪を犯した女性が送られる場所で、この国で最も過酷な環境の中にある。半数は逃げ出すが、山を越える際に魔物に食われるか、飢えや寒さで命を落とすか、そんな場所だ。
もうひとつのシュラバン王国は一夫多妻制で、今の国王には十四人の妃がいる。でも相次いで妃が亡くなるため入れ替わりが激しく、王妃だけでも二度は代わっていた。一度嫁げば二度と帰ってくることはない、黒い噂の絶えない嫁ぎ先だ。
どちらにしても生き地獄のような環境だ。
「……シュラバンに、嫁ぎます……」
それでもマリアン様が選んだのは、王族としての暮らしだった。消え入りそうな声だったけど、しっかりとそう答えた。
「わかった。ではマリアンはシュラバンに嫁ぐまでの間、西の塔にて謹慎を命じる。……連れていけ」
ほんの一瞬、王太子殿下の瞳が悲しげに揺れたように見えた。
でもこれで終わった。クリストファー殿下も、さすがにおとなしくしている。
わたくしの前に濃紫のローブを羽織ったライル様がやってきて、そっとその腕に包み込まれた。
「これですべて片付いた。やっとリアとの時間を過ごせる」
「ライル様……! わたくしの実家の領地まで守ってくださりありがとうございます!」
「リアの大切な人たちがいるのだから当然だ。これからも僕が守るよ」
わたくしは込み上げる気持ちをそのまま言葉に変えた。なにも飾らずにただ、わたくしの心の声を伝える。
「ライル様……愛してますわ」
「っ!!」
ライル様は言葉に詰まって、みるみる頬を染め耳まで赤くしていた。
こんなライル様は初めて見る。
そういえば、こんなにストレートにわたくしの気持ちを言葉にするのは、ライル様が泣いて縋ってきた日以来かもしれない。
好意は前面に押し出していたので、うっかりしていた。
「リア……すまない、ちょっと嬉しすぎて……」
「ふふ、こんなライル様もかわいらしくて素敵ですわ」
「僕はリアには格好いいとか、強いとか言われたい」
「もちろんライル様はカッコよくて、魔法の腕も世界屈指でお強いですわ」
ますます顔を赤くするライル様にさらに愛しさが込み上げて、もっとわたくしの言葉で心を乱してほしくなる。
「リア、もう……これ以上は……」
「ダメです。わたくしのこのあふれる気持ちをお伝えしないと気が済みませんわ」
「いや、でも」
「わたくし、ライル様が隣にいなくてずっと寂しかったのです。これからは決してそばから離れないで?」
「も、もちろんだ!」
「ふふ、わたくしのすべてを捧げてライル様を愛しますわ」
「す、すべて……!?」
ライル様はピシリと固まってしまった。なにかおかしなことを言っただろうか?
わたくしを抱きしめるライル様の腕に力がこもる。
「僕もリアを愛してる。世界で一番、誰よりもリアだけを愛してる」
「ライル様……」
鋭いアイスブルーの瞳は、激情の炎を灯してわたくしを射貫くように見つめている。
いつもの甘くとろけるような瞳とは違う、獲物を狙うような視線に目が逸らせない。
わたくしの火照った頬にライル様の手のひらが添えられる。少しだけひんやりして心地いい。
「リア、僕の女神」
掠れるような熱のこもった声に、そっと瞳を閉じる。
そして、ライル様の柔らかな唇が、わたくしの唇に優しく触れた。
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