【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。

里海慧

文字の大きさ
59 / 62

59話 ライオネル様がいつもと違いますわ!!①


 収穫祭が終わって、王都は一段と寒くなり冬が間近に迫っていた。

 これからの季節は寒さを理由に寄り添うカップルが増える。なのに最近はライオネル様の様子がおかしかった。

「リア、おはよう。今日も美しく可憐だ」
「ライオネル様、おはようございます。相変わらず素敵すぎますわ」

 ここまではいつも通り。問題はこの後だ。

「では、リアはこちらに座ってくれ」

 そう言ってライオネル様はわたくしの向かい座席に腰を下ろす。

 これまでは散々馬車の中でもイチャイチャしていたのに、今は一定の距離を保っていた。これが普通の婚約者同士の距離なのでおかしいところはない。そう、だ。

 残念ながら、わたくしとライル様はラブラブバカップルなので、むしろこの状態が異常と言える。

「ライル様、あの……以前のようには、してくれませんの?」

 わたくしははしたないと思いながらも、ライル様に尋ねてしまった。自分からライル様の膝に座りたいと願うなんて、本当に恥ずかしい。

「っ! いや、あれはちょっとやり過ぎだったと反省したんだ。だが、リアが嫌でないなら僕の膝に座ってほしい」

 そう言って頬を染めたライル様はわたくしの隣に移動して、その膝の上に乗せてくれた。

「……はぁ」

 この温もりが心地いい。そのはずだったのに、耳に届いたのはライル様の小さなため息だった。

 え……? 今ため息をついたわ。そんなに、これが嫌だったのかしら……?
 いったいどうして? ライル様になにかあった? いえ……もしかしたら、わたくしがなにかしてしまったの?

 嫌な汗が背中を伝って落ちていく。

「ラ、ライル様、わたくしはライル様が大好きですわ」
「うん、僕もリアを愛してる」
「わたくしはライル様になにか嫌な思いをさせていませんか?」
「いや、そんなことはないけど、どうかした?」
「いえ……それならいいのです」

 それ以上なにも言えなくなってしまった。

 それからわたくしは、ライル様の様子をいつも以上に注意深く観察した。
 わたくしの言動でなにかわずらわせていないか、不快にしていないか、ほんのわずかな感情の機微も見逃さないようにした。

 するとひとつ気がついたことがある。
 ライル様は結構な頻度で、わたくしになにか伝えたいようなのだ。

 それも一日だけではない。毎日ふとしたタイミングで、ジッとわたくしの顔を見つめている。

 さらにソワソワと落ち着かない様子で、チラチラとわたくしを見てくる時もあった。

 どうしましょう……! わたくし、もしかして気付かないうちに粗相をしていた!?
 というか、他の方に心を移して婚約解消したくなった? それなら納得ですわ!

 もともとかわいげのない婚約者だったし、大切な人のためとはいえ苛烈になりすぎるところがあるのだ。こんな面倒な女から気持ちが離れてしまっても理解はできる。

 でも……! このまま大人しく引き下がるなんてできませんわ! ライル様の次のお相手がしっかりした方なのか見極めませんと、ライル様をお願いできませんもの!!

 わたくしは意を決して、放課後話があるとライル様に時間をもらった。



 生徒会室はマリアン様がシュラバンに嫁がれてから、めっきり使用頻度が低くなったので鍵をかけて話をしていても問題ない。
 一応わたくしも生徒会のメンバーなので、使用できる権限はあるのだ。

 誰もいない生徒会室に内側から鍵をかければ、準備万端だ。

「リア、話とはなんだ? ここで話すようなことが、なにかあったのか?」
「長くなるかもしれませんから、こちらにお掛けいただけますか?」

 本当はわたくしが立ったまま話せるか自信がなかったから、ソファーをすすめただけなのだ。そうと知らないライル様は素直に腰を下ろしてくれた。

 このソファーはマリアン様が持ち込んだものだけど、物に罪はないのでそのまま使わせてもらっている。わたくしも隣に座り、ライル様に身体を向けた。

「リア、なにがあった?」

 本当にこんな時にまでライル様は優しい。いつまでもその優しさがわたくしだけのものだなんて、勘違いもいいところだ。

「ライル様にお聞きします。他にお慕いする方ができたのではありませんか?」
「……いったいなんの話だ?」

 一気に機嫌が急降下してしまった。それもしかたない。きっとそのお相手様に被害が及ばないようにしたいのだろう。

「安心してください。わたくしはライル様が他の方にお心をうつされても、邪魔などいたしません。ただ……わたくしが勘違いしていると不都合があるかと思いましたので、先に確認したかったのです」
「リア、だからなんの話をしているんだ?」

 これでもライル様は打ち明けてくれない。そんなに大切に思われているということだ。

 グッと奥歯を噛みしめてわたくしは込み上げてくるものを堪えた。


感想 56

あなたにおすすめの小説

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの
恋愛
「喜べリリアン! 第一王子の婚約者候補におまえが挙がったぞ!」  ある日お兄様とサロンでお茶をしていたらお父様が突撃して来た。 「良かったな! お前はフレデリック殿下のことを慕っていただろう?」  いえ! 慕っていません!  このままでは父親と意見の相違があるまま婚約者にされてしまう。  どうしようと考えて出した答えが【悪役令嬢に私はなる!】だった。  しかしリリアンは【悪役令嬢】と言う存在の解釈の仕方が……  *設定は緩いです  

世界の現実は、理不尽で残酷だ――平等など存在しない

こもど
恋愛
「学園内は、身分に関係なく平等であるべきです」 その“正義”が、王国を崩しかけた。 王太子ルイスは、貴族学院で平民出身の聖女マリアがいじめられたと信じ、 婚約者である公爵令嬢アリエノール・ダキテーヌを断罪し、婚約破棄を宣言する。 だが―― たとえそれが事実であったとしても、 それは婚約破棄の正当な理由にはならなかった。 貴族社会において、婚約とは恋愛ではない。 それは契約であり、権力であり、国家の均衡そのものだ。 「世界は、残酷で不平等なのです」 その現実を理解しないまま振るわれた“善意の正義”は、 王太子の廃嫡、聖女の幽閉、王家と公爵家の決定的な断絶を招く。 婚約破棄は恋愛劇では終わらない。 それは、国家が牙を剥く瞬間だ。 本作は、 「いじめられたという事実があっても、それは免罪符にはならない」 「平等を信じた者が、最も残酷な結末に辿り着く」 そんな現実を、徹底して描く。 ――これは、ざまぁではない。 誰も救われない、残酷な現実の物語である。 ※本作は中世ヨーロッパをモデルにしたフィクションです。  学園制度・男女共学などは史実とは異なりますが、  権力構造と政治的判断の冷酷さを重視して描いています。 ---

【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-

七瀬菜々
恋愛
 ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。   両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。  もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。  ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。  ---愛されていないわけじゃない。  アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。  しかし、その願いが届くことはなかった。  アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。  かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。  アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。 ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。  アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。  結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。  望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………? ※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。    ※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。 ※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。  

私の婚約者と駆け落ちした妹の代わりに死神卿へ嫁ぎます

あねもね
恋愛
本日、パストゥール辺境伯に嫁ぐはずの双子の妹が、結婚式を放り出して私の婚約者と駆け落ちした。だから私が代わりに冷酷無慈悲な死神卿と噂されるアレクシス・パストゥール様に嫁ぎましょう。――妹が連れ戻されるその時まで! ※一日複数話、投稿することがあります。 ※2022年2月13日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。 本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。 初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。 翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス…… (※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)

【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!

永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手 ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。 だがしかし フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。 貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。

私だってあなたなんて願い下げです!これからの人生は好きに生きます

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のジャンヌは、4年もの間ずっと婚約者で侯爵令息のシャーロンに冷遇されてきた。 オレンジ色の髪に吊り上がった真っ赤な瞳のせいで、一見怖そうに見えるジャンヌに対し、この国で3本の指に入るほどの美青年、シャーロン。美しいシャーロンを、令嬢たちが放っておく訳もなく、常に令嬢に囲まれて楽しそうに過ごしているシャーロンを、ただ見つめる事しか出来ないジャンヌ。 それでも4年前、助けてもらった恩を感じていたジャンヌは、シャーロンを想い続けていたのだが… ある日いつもの様に辛辣な言葉が並ぶ手紙が届いたのだが、その中にはシャーロンが令嬢たちと口づけをしたり抱き合っている写真が入っていたのだ。それもどの写真も、別の令嬢だ。 自分の事を嫌っている事は気が付いていた。他の令嬢たちと仲が良いのも知っていた。でも、まさかこんな不貞を働いているだなんて、気持ち悪い。 正気を取り戻したジャンヌは、この写真を証拠にシャーロンと婚約破棄をする事を決意。婚約破棄出来た暁には、大好きだった騎士団に戻ろう、そう決めたのだった。 そして両親からも婚約破棄に同意してもらい、シャーロンの家へと向かったのだが… ※カクヨム、なろうでも投稿しています。 よろしくお願いします。