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御曹司(その2)
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「なにを考えてるんです。大事な取引きの場に、家の事情を持ち込む気ですか!」
希美の抗議に、利希はしれっとして答えた。
「いいんだよ。資本提携の件は昨夜の会合で、大体の話は済んでる。現段階では、それ以上詰めることはない。今日の昼食会はオマケ程度のもんだ」
「なっ……」
憎めない性格で人を……特に女をたぶらかすのが父だと分かっていたのに、引っかかってしまった。
――おお、さすがわが娘。頼りにしているぞ。
などと言われて、うっかり仕事を引き受けた自分に腹が立つ。なにより、壮二を巻き込んだことが悔やまれる。よりによって、秘書をやらせるなんて。
「ダメです。無理です。壮二に務まるわけないでしょう。いくらオマケていどの昼食会だろうと、相手方に失礼だし、不信感を持たれますよ」
「お前こそ、なにを言ってるんだ」
利希は大げさな仕草で、肩をすくめてみせる。
「そんな言い草、南村くんに失礼だろう。なあ、キミ」
利希は壮二に近付くと、親しげに肩を抱き寄せた。いきなり社長に絡まれ、壮二は目をきょろきょろさせている。
「君は、次期社長の婿になるんだろう。それなら、これくらいのこと臨機応変に対応できなきゃ話にならんぞ。できるよな?」
「は、はあ……」
圧迫面接は既に始まっていた。
海千山千の社長相手に、心の準備などいくらしたところで無駄だったのだ。
先制攻撃を許した希美は激しく後悔する。
だが、しかし――
どういうわけか、壮二は嬉しそうに笑った。そして、利希をまっすぐに見て、はっきりと言い切ったのだ。
「承知いたしました。精一杯、務めさせていただきます」
希美はもちろん、臼井秘書も愕然とする。秘書という仕事を、この男は分かっているのか。いや、おそらく全然理解してない。
無理難題を持ち出した利希までもが、呆気にとられている。
「ちょ……壮二。あのね」
二人をひっぺがそうとして、希美は近付く。こんなばかげたこと、絶対に止めさせなければ。
だが、壮二はさっとそれを制し、利希に向かって心配そうな声で尋ねた。
「社長、お腹の具合はいかがですか。昼食会の前に、奥様手作りの腹巻きを身に着けておきましょう」
「……」
だしぬけにトップシークレットを暴かれ、利希が言葉を失う。壮二の罪のない発言が、緊迫した空気を一変させた。
希美の抗議に、利希はしれっとして答えた。
「いいんだよ。資本提携の件は昨夜の会合で、大体の話は済んでる。現段階では、それ以上詰めることはない。今日の昼食会はオマケ程度のもんだ」
「なっ……」
憎めない性格で人を……特に女をたぶらかすのが父だと分かっていたのに、引っかかってしまった。
――おお、さすがわが娘。頼りにしているぞ。
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先制攻撃を許した希美は激しく後悔する。
だが、しかし――
どういうわけか、壮二は嬉しそうに笑った。そして、利希をまっすぐに見て、はっきりと言い切ったのだ。
「承知いたしました。精一杯、務めさせていただきます」
希美はもちろん、臼井秘書も愕然とする。秘書という仕事を、この男は分かっているのか。いや、おそらく全然理解してない。
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「ちょ……壮二。あのね」
二人をひっぺがそうとして、希美は近付く。こんなばかげたこと、絶対に止めさせなければ。
だが、壮二はさっとそれを制し、利希に向かって心配そうな声で尋ねた。
「社長、お腹の具合はいかがですか。昼食会の前に、奥様手作りの腹巻きを身に着けておきましょう」
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