一億円の花嫁

藤谷 郁

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守ってあげたい

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 今夜の夕飯は飲茶に決めた。
 といっても点心だけでは物足りないと思うので、小龍包や胡麻団子など定番の他に、いくつかの中華料理を組み合わせた『飲茶風』である。
 本場の味には遠く及ばないが、なかなか美味しそうに出来たと思う。

「そろそろかな」

 さっき織人さんから「あと10分で着く」とメッセージをもらった。
 テーブルセッティングを済ませてから玄関へと向かい、待機する。

「どうしよう。すごくドキドキする」

 織人さんとお見合いした日を思い出す。私はこんな風に緊張しながら、ラウンジで彼を待っていた。
 そして、驚きの再会。
 混乱したまま中華レストランで彼と向き合い、飲茶をいただいたのだ。

「あ……」

 ドアの向こうから足音が聞こえる。駆け足だ。
 織人さんが帰って来た。

「ただいま、奈々子!」
「……!?」

 玄関に現れた織人さんを見て、私は目を丸くする。
 息を切らし、両手にたくさんの荷物を抱えていた。どうやらすべて、ブランドショップの包装紙や袋のよう。

「ど、どうしたんですか、そんなに」
「奈々子に似合いそうな服とかアクセサリーとか、プレゼントだよ。あれもこれも欲しくなっちゃってさ、でも選んでる時間が惜しくて、全部買ってきた」
「ええっ?」

 織人さんはプレゼントの山を床に置くと、両手を広げた。
 そして、びっくり顔の私を思いきり抱きしめる。

「お、織人さん?」
「昨夜からずっと、生きた心地がしなかったよぉぉ。奈々子に嫌われたかと思って」
「え、嫌われ……?」

 翼さんの言ったとおりだ。
 子供みたいにしがみついてくる大きな人に、思わず噴き出してしまった。

「冗談ごとじゃないぜ?」

 腕の力を緩め、私を覗き込む。

「俺は本気で心配してたんだ。今朝は顔も見せてくれないし。知らないうちに、君を傷つけてしまったんじゃないかと」
「そ、それは……」

 やはり、この人は気づいていない。私の嫉妬心に。

「奈々子?」
「えっと……その、ごめんなさい。いろいろと理由があって……あの、あとでちゃんと話しますから」
「うん。ちゃんと聞かせてくれ。でないと俺は、心配しすぎてどうにかなりそうだ」

 再び抱きしめられる。強く激しく、もう逃さないとでも言いたげに。
 彼の身体は燃えるように熱く、私までポカポカしてきた。

「お、織人さん。私は……どこにも行きませんから」
「……」

 しばらくそのままでいたが、そっと解放された。潤んだ瞳が、縋るように私を見つめる。

「今夜のメニューは、飲茶メインの中華料理です。冷めないうちに、食べましょう?」
「……飲茶?」

 織人さんはハッとして、それから、嬉しそうに笑った。


◇ ◇ ◇


「おお、美味そうじゃないか!」

 点心の蒸籠をテーブルに並べると、織人さんが「凄い、凄い」と褒めあげた。
 私の料理をいつも褒めてくれる彼だが、今日は随分とテンションが高い。

「そんな、大げさですよ。簡単なものばかりですし」
「でも全部手作りなんだろ? 俺のために、ありがとうな、奈々子」
「ど、どういたしまして」

 確かに織人さんの好きな料理だけれど、感激しすぎである。それとも、思い出のメニューだから?
 いずれにしろ、飲茶にして良かったと思った。

「点心の他にもいろいろ作ったので、たくさん食べてくださいね」
「おう! ほら、奈々子も座って座って、乾杯しよう」

 私たちは向き合うと、まずは食事を楽しんだ。
 お酒を飲んで、お喋りもする。
 主な話題は、今日一日の出来事について。

 ボディガードの雲井さんに挨拶されたことや、花ちゃんの家に翼さんがいてびっくりしたことなど。
 といっても、私の行動については雲井さんから報告を受けたようで、彼は知っていた。

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