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正義の使者〈Last Report〉
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「水樹は起訴されて、今は勾留中か」
「先月、拘置所に移送されました。準備が整いしだい初公判です」
「怪我はもう大丈夫なの?」
「問題ありません。体調は良さそうですよ」
子安さんの狙撃は完璧だった。急所を外したのはもちろん、骨を掠ってもいない。肩を撃たれた衝撃で一瞬足を止めた水樹を、取り囲んでいた警察官がダッシュして捕まえ、間一髪、崖下に落ちるのを防いだ。
「水樹があんな風になってしまったのは、周りの大人たちの影響だったんですね」
取調べで様々なことが分かった。母親と北城からの仕打ち。ハルというウサギのこと。水樹のトラウマの正体が明らかになり、暗澹とした気持ちになった。
三国については、本人の供述もあり、彼らの関係性がはっきりした。23年前の事故の顛末は、警察官である俺にとって衝撃的なエピソードだった。
「水樹は母親たちの事故についても自白したそうだけど、どうなの?」
「ああ……その件については立証不可能でした。睡眠薬を飲ませた証拠がないし、解剖記録もない。そもそも事故現場には三国以外にも捜査員がいて、ブレーキ痕を確認しています」
「じゃあ、北城は眠ってなかったの?」
「眠たかったのかもしれませんが……主な原因はスピードの出しすぎと、雨ですね」
いずれにしろ、その件については余罪にならない。
「問題は、当時の三国の対応です。水樹はそのせいで記憶の一部を失い、警察(正義)に不信感を抱く元になった」
そして数年後、斎藤陽向の事件をきっかけにフラッシュバックが起きる。水樹は残酷な記憶に苦しみ、やがて辿り着いた答えが、愛する者を守るためなら何でもする……という極論。
「三国は責任を感じていました。水樹の人生を歪ませたのは自分だと。だから、三国自身も人生を投げ打ち、協力したんです」
だが結局、その協力も間違っていた。最後の最後まで、水樹を追い詰めることになるのだから。
「追い詰められた水樹を救ったのが、一条さんね」
「はい」
水樹を救ったのは一条さんの誠実さと、無償の愛。彼女は、何があろうと水樹のそばにいると約束し、死刑になったら後を追うとまで言ったそうだ。
水樹は感極まり、彼女を道連れにするのをやめた。独りぼっちになるのを覚悟で、手を離したのだ。
「水樹を歪ませたのは三国。でも、分かる気もするんですよ」
「何が?」
上役である瀬戸さんに、正直な気持ちを口にした。
「たとえば、虐待やパワハラの被害者が、我慢できずにやり返したら、今度はその人が罰せられますよね。捕まえるこっちも、嫌になるっていうか」
瀬戸さんは迷わず、きっぱりと答えた。
「私たちは、正義ではなく法律に従っているの。理不尽な事件に出くわしても、感情に流されず、職務を全うする。三国には、それができなかった」
「……」
ぐうの音もでない。
分かってはいたのだ。
理不尽にモヤモヤするなど、俺もまだまだ半人前である。
「先月、拘置所に移送されました。準備が整いしだい初公判です」
「怪我はもう大丈夫なの?」
「問題ありません。体調は良さそうですよ」
子安さんの狙撃は完璧だった。急所を外したのはもちろん、骨を掠ってもいない。肩を撃たれた衝撃で一瞬足を止めた水樹を、取り囲んでいた警察官がダッシュして捕まえ、間一髪、崖下に落ちるのを防いだ。
「水樹があんな風になってしまったのは、周りの大人たちの影響だったんですね」
取調べで様々なことが分かった。母親と北城からの仕打ち。ハルというウサギのこと。水樹のトラウマの正体が明らかになり、暗澹とした気持ちになった。
三国については、本人の供述もあり、彼らの関係性がはっきりした。23年前の事故の顛末は、警察官である俺にとって衝撃的なエピソードだった。
「水樹は母親たちの事故についても自白したそうだけど、どうなの?」
「ああ……その件については立証不可能でした。睡眠薬を飲ませた証拠がないし、解剖記録もない。そもそも事故現場には三国以外にも捜査員がいて、ブレーキ痕を確認しています」
「じゃあ、北城は眠ってなかったの?」
「眠たかったのかもしれませんが……主な原因はスピードの出しすぎと、雨ですね」
いずれにしろ、その件については余罪にならない。
「問題は、当時の三国の対応です。水樹はそのせいで記憶の一部を失い、警察(正義)に不信感を抱く元になった」
そして数年後、斎藤陽向の事件をきっかけにフラッシュバックが起きる。水樹は残酷な記憶に苦しみ、やがて辿り着いた答えが、愛する者を守るためなら何でもする……という極論。
「三国は責任を感じていました。水樹の人生を歪ませたのは自分だと。だから、三国自身も人生を投げ打ち、協力したんです」
だが結局、その協力も間違っていた。最後の最後まで、水樹を追い詰めることになるのだから。
「追い詰められた水樹を救ったのが、一条さんね」
「はい」
水樹を救ったのは一条さんの誠実さと、無償の愛。彼女は、何があろうと水樹のそばにいると約束し、死刑になったら後を追うとまで言ったそうだ。
水樹は感極まり、彼女を道連れにするのをやめた。独りぼっちになるのを覚悟で、手を離したのだ。
「水樹を歪ませたのは三国。でも、分かる気もするんですよ」
「何が?」
上役である瀬戸さんに、正直な気持ちを口にした。
「たとえば、虐待やパワハラの被害者が、我慢できずにやり返したら、今度はその人が罰せられますよね。捕まえるこっちも、嫌になるっていうか」
瀬戸さんは迷わず、きっぱりと答えた。
「私たちは、正義ではなく法律に従っているの。理不尽な事件に出くわしても、感情に流されず、職務を全うする。三国には、それができなかった」
「……」
ぐうの音もでない。
分かってはいたのだ。
理不尽にモヤモヤするなど、俺もまだまだ半人前である。
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