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バイト先のファミレス
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その日は平日だったがバイトのシフトが入っていた。自宅に戻った明音は急いで夕食の準備をした。
弟妹はもう帰っていた。一緒に夕食をとれないこともあるからレンジで温めて食べるよう言い聞かせることは多かった。
小学二年生だがすでに簡単な家事はできるようになっていた。火を使うのも問題ない。明音が不在時はなるべくレンジだけで済むようにしていたが。
「私はこれからバイトだから、二人仲良く、気をつけてね」いつものように言った。
「大丈夫」二人は声を揃えた。よく喧嘩もするがすぐ仲直りするくらい仲は良い。
明音は安心してバイト先のファミレスへ向かった。
平日でも夕食時は混んでいた。七時半を過ぎた頃ようやくピークを過ぎ、少し余裕が出てきた。
オーダーされたセットメニューを二つ、ボックス席に運んだ。若い男女ペア。その女子を見て明音はハッとした。
地元のファミレスだから顔見知りが来ることはよくある。びっくりすることもあるが今ほど驚いたことはなかった。
その女子は明音がよく知っていて、しかもおよそファミレスとは縁のない人物に見えた。
そう、正確には見えただけなのだ。とてもよく似ているが他人の空似だと明音は気づいた。
「ご注文は以上でしょうか?」テーブルに並べて明音は女子の方に訊いた。
茶髪のロングヘア、猫のようなつり上がり気味の目、整った顔に綺麗に化粧が施されていてゾッとするほど美人だ。
明音は思わず見惚れた。引き上げるのが遅れたのはそのせいだ。
「イツキちゃんのお友達よね?」その女子が明音に訊いた。
「ン、そうなのか?」
向かい合って坐っていた男子が、おもむろに顔を上げ明音を横目で見た。
黒髪をワックスで逆立てた、軽薄そうな男だった。それでいて顔面偏差値は高い方だと明音は思った。
「私の顔を見て驚くのはイツキちゃんのお友達。違うかしら?」
「東矢泉月さんのご親族ですか?」
「うん、親戚みたいなものかしら」
「ちげえねえ」男の方が笑った。
「ごゆっくりどうぞ」明音は頭を下げ、その場を引き下がった。
「ありがとう」女の声が背中に聞こえた。
確かに東矢泉月に似ていた。一瞬彼女かと思ってしまった。
しかし別人だ。よく似ているが別人だとわかる。それは茶髪だとか化粧をしているといったことのみならず、表情の違いが決定的だった。
中等部から四年間同じクラスにいた東矢泉月は、ほとんど表情を変えず、笑うことの少ない女子だった。鉄仮面と揶揄する声もあるクールビューティなのだ。
しかし客として来ている彼女はまるで違う。表情豊かで、そして女子力が高そうだった。軽薄な男がついているのも別世界の住人に思えた。
東矢泉月とは親戚のようなものと彼女は言った。従姉とか、はとこ、といったものなのか。
確か東矢泉月は学園の理事を務める裕福な家のお嬢様だったはず。その親族が彼女というのも無理があるようにも思えた。
いずれにせよ自分とは関係がない。明音はそう割り切った。
まさかその後も彼女らと腐れ縁のような関係が続くとはこのときの明音は思いもしなかった。
弟妹はもう帰っていた。一緒に夕食をとれないこともあるからレンジで温めて食べるよう言い聞かせることは多かった。
小学二年生だがすでに簡単な家事はできるようになっていた。火を使うのも問題ない。明音が不在時はなるべくレンジだけで済むようにしていたが。
「私はこれからバイトだから、二人仲良く、気をつけてね」いつものように言った。
「大丈夫」二人は声を揃えた。よく喧嘩もするがすぐ仲直りするくらい仲は良い。
明音は安心してバイト先のファミレスへ向かった。
平日でも夕食時は混んでいた。七時半を過ぎた頃ようやくピークを過ぎ、少し余裕が出てきた。
オーダーされたセットメニューを二つ、ボックス席に運んだ。若い男女ペア。その女子を見て明音はハッとした。
地元のファミレスだから顔見知りが来ることはよくある。びっくりすることもあるが今ほど驚いたことはなかった。
その女子は明音がよく知っていて、しかもおよそファミレスとは縁のない人物に見えた。
そう、正確には見えただけなのだ。とてもよく似ているが他人の空似だと明音は気づいた。
「ご注文は以上でしょうか?」テーブルに並べて明音は女子の方に訊いた。
茶髪のロングヘア、猫のようなつり上がり気味の目、整った顔に綺麗に化粧が施されていてゾッとするほど美人だ。
明音は思わず見惚れた。引き上げるのが遅れたのはそのせいだ。
「イツキちゃんのお友達よね?」その女子が明音に訊いた。
「ン、そうなのか?」
向かい合って坐っていた男子が、おもむろに顔を上げ明音を横目で見た。
黒髪をワックスで逆立てた、軽薄そうな男だった。それでいて顔面偏差値は高い方だと明音は思った。
「私の顔を見て驚くのはイツキちゃんのお友達。違うかしら?」
「東矢泉月さんのご親族ですか?」
「うん、親戚みたいなものかしら」
「ちげえねえ」男の方が笑った。
「ごゆっくりどうぞ」明音は頭を下げ、その場を引き下がった。
「ありがとう」女の声が背中に聞こえた。
確かに東矢泉月に似ていた。一瞬彼女かと思ってしまった。
しかし別人だ。よく似ているが別人だとわかる。それは茶髪だとか化粧をしているといったことのみならず、表情の違いが決定的だった。
中等部から四年間同じクラスにいた東矢泉月は、ほとんど表情を変えず、笑うことの少ない女子だった。鉄仮面と揶揄する声もあるクールビューティなのだ。
しかし客として来ている彼女はまるで違う。表情豊かで、そして女子力が高そうだった。軽薄な男がついているのも別世界の住人に思えた。
東矢泉月とは親戚のようなものと彼女は言った。従姉とか、はとこ、といったものなのか。
確か東矢泉月は学園の理事を務める裕福な家のお嬢様だったはず。その親族が彼女というのも無理があるようにも思えた。
いずれにせよ自分とは関係がない。明音はそう割り切った。
まさかその後も彼女らと腐れ縁のような関係が続くとはこのときの明音は思いもしなかった。
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