御堂藤学園二年D組あかね組

hakusuya

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あかね組

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 翌日の昼休み、早速ゆずりはを呼んで守崎と三人で弁当を食べた。
「明音は相変わらず、お母さんしているね」と守崎もりさきはべた褒めするが、たいしたおかずではないので明音は気恥ずかしかった。
 ゆずりはは驚いていた。どうやら楪は母親が弁当を用意しているらしい。
 剣道をしていない時の楪は、おとなしく、本好きの箱入り娘に見えた。しかもほとんど喋らない。言葉がすぐに出てこないのだ。小さな顔で頬が少しふっくらした美少女であることが羨ましかった。いつもせわしなく動いている自分とは対極に位置する子だと明音は思った。
 教室内で静かで居心地の良い昼休みを満喫していると思っていたら、それを邪魔する輩も集まってくる。外で食事をしていたらしい男子たちが少しずつ戻ってきた。
 まずは三宅だ。彼は女子と見ると見境無く声をかける。発情期の男子そのもので、五月になっていたのでクラスの女子にもそれが浸透していた。そのため三宅が声をかけても女子は表面上取り繕うような挨拶しか返さなかった。しかし三宅も面の皮が厚いのか、無下にされたと気づかないのか、懲りずに女子とのコミュニケーションにいそしんでいる。その一環で明音は毎度三宅に声をかけられる。
「小早川さん、ご機嫌麗しく」と手を上げる三宅はまるで生徒会役員のH組星川のようだった。ハンサムの度合いは星川に劣るが。
「あれ、今日は楪さんも一緒なんだ」三宅は珍しいものを見たと言わんばかりの調子で楪を見た。
 人の視線が苦手な楪は首をすくめ、頬張っていたものを慌てて飲み込もうとしてむせた。
「大丈夫? お茶、お茶」と守崎が世話を焼く一方で明音は「何か用?」と辛辣な目を向けた。みだりに楪に声をかけないでもらいたい、という要望をこめて。しかしそれはやはり三宅には伝わらなかった。
「楪さん、意外とドジっ子なの?」と三宅は笑う。
 人をいじることが良いコミュニケーションを生むとでも思っているようだ。確かにそういうグループもあるだろう、と明音はかつての自分を思い出した。
「用がないなら、食事中は話しかけないで」明音は三宅を追っ払おうと手を外向きに振った。
「そんなつれないこと言わずに、オレも混ぜてよ」三宅は近くの椅子をずらして腰を下ろした。
「はあ」
 ため息をついたが放置したことの方がまずかったと明音は後悔した。一人許すとそれをきっかけに次々と群がってくる。
 片倉かたくらが寄ってきた。楪に気があるらしい片倉は、楪が明音たちと一緒にいるのをチャンスととらえたようだ。
 孤高の楪は近寄りがたいが誰かが傍にいると話は別になる。特に明音と守崎はクラス内で存在感を増していたから尚更だった。
「なんだよ三宅、女子のランチを邪魔するなよ」と言いつつ片倉もしっかり近くの椅子を引き寄せて腰かけた。
 楪が小さくなった。狭いところに縮こまった猫のようで可愛かったが、放置するわけにもいかない。
「邪魔してるのは片倉君もでしょ」明音ははっきりと言った。「女子会なんだから」
「ねえねえ、それよりさ、カラオケ行かない?」三宅は話を聞かない。自分の主張をするだけだ。
「中間試験が終わったら、パアッと遊びに行こうぜ」片倉が三宅のノリに便乗した。
「楪さん、無視して良いからね」明音は楪に言い聞かせた。
「三人に言ってるんだけど」三宅は全く怯んでいない。
 クラスの男子は総じておとなしいと思っていたが、一部そうでもない輩がいるのだと改めて認識させられた。
「そうねえ、試験が終わったらそれも良いかな」ここで守崎が意外なことを言った。
「え?」明音は守崎を振り返った。
「み、みんなが、い、行くのなら……」楪も満更でもないようなことを言った。
 ずっと拒絶していたのは明音だけだった。
「はあ……」明音はおおっぴらにため息をついた。「わ、私は毎日忙しいから」と自分だけでも断りをいれるしかない。
「えええ、番長がいないなんて考えられない」
「は? 番長って」
って言われているぜ、オレたちD組」
「何よ、それ」
「うん、確かに」守崎が同意した。
 そういう話は聞いたことがない。話を盛らないでほしい、と明音は思った。
 どうにか有耶無耶なまま昼休みは切り抜けた。武道部の助っ人の件といい、望んでもいないことに巻き込まれる。せっかく新しい高校生活を満喫しようとしていたのに、これでは去年までと同じではないか。周囲の顔ぶれが変わっただけだ。明音の口は「へ」の字になっていた。
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