御堂藤学園二年D組あかね組

hakusuya

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次々と絡んでくる男子

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 教室は平穏だった。いつもの日常。
「今日遅かったんじゃね」三宅ははっきりと訊いてくる。
「炊飯器のセット忘れてたのよ」
「お母さんしてるな、明音あかねは」
 身近なグループは明音の家の事情を知っていた。弟妹の面倒をみていることも。
 守崎もりさきがいるところにはゆずりはがいて片倉かたくらがいた。
 明音がそこに向かうと三宅もついてくるのでいつもの五人が揃う。話題は球技大会の話に託つけて、その後の打ち上げの話になった。
「フットサルチームで打ち上げやろうぜ」相変わらず三宅は調子が良い。
「その言い方だと予選敗退でも打ち上げやりそうね」
「もちろん」
「打ち上げってクラス全体でするものじゃないの?」
 明音は指摘したが三宅は全くめげない。
「気の合う仲間でするのが良いんじゃないか」
「気の合う仲間に三宅も入っているわけね」
「当然だろ」
 三宅と顔を見合わせて笑う。はっきりと言っても三宅は全くこたえなかった。
「何なら三宅なしの四人にするか?」横で片倉がゆずりはに向けて言っている。
 こいつも懲りない奴だと明音は思った。
「もうしようがないんじゃない」諦めたように言うのは守崎だった。「どこまでもついてくるわよ」
「そうね」明音もをあげた。
 この二人は明音がいたグループにはいなかったタイプだ。
 樋笠大地ひがさだいちが近いタイプではあるが、ここまではっきりと邪険にされてなお食いついていることはない。
 調子の良さは渋谷恭平しぶやきょうへいに似てないこともないがやはり違う。もう扱い方がわからない連中だった。
「やはり晩飯食ってカラオケじゃね?」
「カラオケして晩飯だろ」
 三宅と片倉が言い合っていた。
「そんなに時間ないでしょ!」明音が指摘しても意に介さない。
「土日にすっか」大事になろうとしていた。
「私はバイトや家の用事でそんなに時間ないからね」明音が言い、守崎もうんうんと頷いていた。
「時間ないよね? 楪さん」
「土日は家で本を読む日」周りの剣幕に圧倒されて楪は小さくなっていた。
「家でこもってないで外で遊ぼうよ、真惟まい」片倉はすっかりゆずりはを名前呼びだ。
 予鈴が鳴り、どうにかその話は落ち着いた。  

 昼休みは女子三人だけで弁当を食べる。三宅と片倉は学食へ食べに行っていた。平穏が訪れた。
「平和だね」守崎が笑みを浮かべた。
「本当だよ。あいつらがいないだけで心落ち着く」明音も笑った。
「まあ退屈はしないんだけどね」守崎は意外に理解を示すのだ。
「それは否定しないけど、どこかに行こうってしつこいんだよね。ねえ楪さん」
「うん?」楪は食事に集中していた。
 口の中がいっぱいらしく頬が膨らんでいる。それが実に可愛い。小動物だ。
「明音は真惟まいの保護者だね」
 のんびりと食べているところに新たな邪魔が入った。B組の佐田がやって来たのだ。
 佐田が教室に入ると、教室内にいたほぼ全員が注意を向ける。坊主頭の佐田はそれくらい目立つ男だった。
「やあ元気そうだな」手を上げ愛嬌を見せる。
「また面倒なのが来たあ」明音は呟いた。佐田には聞こえなかったようだ。
「健康が何よりだ。楪さんもいっぱい食べてね」
「何しに来たの?」わかっていて訊く。
「秀星学院との親善試合に向けて本格的練習をすることになった」
「まるで誰かが決めたみたいな言い方だけど、佐田君が決めたんだよね?」
「うん、実はそうだ。そんなに怖い顔しないでくれたまえ」
「こういう顔なんだけど。てか、『くれたまえ』なんて柄じゃないでしょ」
「そうだな、うん。で練習は球技大会が終わった後本格的にやろうと思う」
「私は数のうちに入ってしまったのね?」
「もちろんだ。主力だよ。副将をしてもらおうと思っている」
「は?」明音は耳を疑った。「素人に副将させてどうするの?」
「戦略の一つだ」
「私は負けても良いってことよね? 負けるの前提でオーダーを組んだ」
「いや、その……」口ごもるのが肯定を示している。「実は毎年どこに主戦力を配置しているか読めないんだな。先鋒が最強の可能性すらある。大将や副将が最弱の可能性もある。そして登場時点での勝敗数によってはプレッシャーのかかり方も違う。そういうのを全て考慮して順を組んだわけだな」
 佐田の話では先鋒天埜あまの、次鋒東矢とうや、中堅ゆずりは、副将小早川こばやかわ、大将富樫とがしにしたようだ。
 明音の前で二勝できていれば明音が負けても最後の富樫が勝てば良いことになる。
「なるほど、私にとっては気楽な配置なのか」
「そ、そういうことだよ」
「何か、うまく丸めこまれているような……」
「ソンナコトナイヨ」
「まあ、良いかな」
 逆に三連敗なら団体戦として負けが確定だ。明音が負けても問題ない。唯一プレッシャーがかかるのは一勝二敗で明音にまわってきた場合だけだった。
「ということで、土日に空いた時間ある?」
「私、バイト人間なもので」
「週一でも良いんだよ。平日は昼休みに二十分とか」
「めちゃくちゃブラックな部活だね」
「それは小早川さんがあちこちに忙しいからで」
 確かにそうだった。武道部だけでブラックなわけはない。
「楪さんは土日は?」
「わ、私はおうちでゆっくり読書」
「なら練習できるね」
「だ、だから読書で忙しい」
「え?」
「でも小早川さんが一緒なら練習出る」
「ということで、小早川さん、よろしくお願いします」佐田は坊主頭を下げた。
「な、なんなのよ……」
 明音は押し切られた。
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