気まぐれの遼 二年A組

hakusuya

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体育授業で球技大会練習が始まる

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 やりたくなくてもやらざるを得ないことはある。球技大会の練習もその一つだった。
 放課後の練習は有志が集まって自由参加のかたちをとっていた。バスケットチームは高原と栗原を中心に優勝をめざして練習をしているようだった。しかしフットサルチームは勝ちを期待しないメンバー構成にしたこともあり、ボール遊びが好きな者が集まってゆるゆるとやっていたはずだ。
 それでも体育の授業は別なのだ。この時期の体育の授業は球技大会の練習をすることになっていた。
「そういえば、去年もそうだったかな」りょうはまるで覚えていなかった。
 B組と合同なのはいつもと同じだが、男女合同の授業となった。
 体操着姿の女子を間近に見るのは新鮮だ。さすがに少し目が開く、と遼は自覚した。A組の高原、東矢とうや神々廻ししばの三人はバスケットチームだったので体育館に行っていて、グラウンドにはいなかった。
「女子と一緒だと、はりきるねえ」小山内がまたしてもそばに来ていた。
「がんばってくれ」遼はいつものように小山内に言った。
「ほらほら、あの子が前薗純香まえぞのすみかさんだよ。ミス御堂藤みどうふじ、プリンセスとか言われている」
 小山内が指さす方に細身の女子がいた。体育の授業だから髪を後ろで束ねている。日が当たると少し茶色がかった髪。校則で髪を染めることを禁止しているから地毛だと思われる。前髪が眉のあたりで切りそろえられていて、小さな顔、細い首、細い手足。華奢な体型だ。
 しかし動きは良さそうに見えた。一緒にいる女子と談笑する姿は確かに目に留まる。その微笑は品の良さがうかがわれた。
「見たことあるだろう?」小山内が遼の顔を覗き込んだ。
「たしかに……、ある、かもな」
 プリンセスという形容がふさわしい美少女だと遼も思う。ただ、地味な印象だ。それにどこか意識的におしとやかにしているようで、本当の自分をさらけ出していないように思われた。
「ミス御堂藤とか、プリンセスとか、そういう称号は重荷ではないのかな?」
「ん? なんだって?」
「いや、なんでもない」
 不思議そうに見る小山内を遼は無視することにした。ただでさえ小山内はお喋りが好きなのだ。
「A組の主力女子はバスケットに集まったから、このフットサルチームは大人しい女子の集まりだなあ。しかしB組は前薗さんがいて、村椿むらつばきさんがいて、それに男子は渋谷しぶや君がいるから、メジャーな顔ぶれだ」
「そうなのか?」
「ほら、あれが村椿さん。中間試験総合成績学年五位。もちろんB組のトップだよ」
 そこには男女入り混じったグループの中心にいて、少し足を開いて腕組みしている美少女がいた。
 美貌という意味では前薗純香よりもこちらの方が目立つ顔だ。釣り上がり気味の目、鼻筋が通っていて、口は喋っているときは大きく開き、黙ると小さくまとまる。色がやけに白い。そして茶髪に見えるセミロングの髪をヘアバンドでとめて後ろに流していた。
「B組の女王と言われているんだ」小山内が小声で言った。「本人に言うとしばかれるらしいよ」
 小山内の言い方は、しばかれてみたいという欲求が出ているように見えた。
「なるほど」
 他人に興味はないが、女子の鑑賞会は悪くはない、と遼も思い始めていた。
沢辺さわべ先生が来た! すごい迫力だね」小山内が別の対象を見つけて興奮している。
 女子体育の教師で二年G組の担任をつとめる沢辺という女教師がフットサルの担当になっていた。男子体育の男性教師はバスケットの方を担当している。男子生徒が沢辺に教えられる機会はこの球技大会以外でありえないのだ。それだけ貴重な経験とも言える。
 水泳をしていたという沢辺は確かに肩幅が広く、腰や太ももが尋常でないくらい太く張り出していた。しかしそれ以上に目につくのが胸だ。これで水の抵抗をどうかわすのかというくらい沢辺の胸は誰が見ても規格外だった。
「何カップかわからない……まさかのワールドカップ!」小山内は目を大きく見開いていた。「ただの肥満だと思っていたのに、ウエストがしっかりくびれていて、まさにボンキュッボン!」
「幸せなやつだな……」
「うんうん、幸せだろ、オレたち」
 そしてA組B組男女合同の体育授業が始まった。
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