気まぐれの遼 二年A組

hakusuya

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途方に暮れる遼 笑い転げる星

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 体育教師沢辺さわべの指示で、各クラス五名ずつのチームを四つつくることになった。
 若干足りなくて四名になったチームもあるが、その場合は他のチームから助っ人を入れることになる。
 りょうのチームは小山内おさないと女子三人。なぜまた小山内がいる?とは考えてはいけないのだろう。
 小山内が神出鬼没に近くに来ているのは当たり前になっていた。
 グラウンドにはフットサルコートは二つしか用意されていなかったから、沢辺が教えている間もコートで実戦形式の練習が行われた。半数は沢辺の教えを聞く。もう半数は何も教えられないままとりあえずボール蹴りをしておくといった具合だ。
 何の戦術も教えられないうちに遼のチームはコートにいた。
「たしか、男子のシュートはゴールインしても得点にならないんだよな」
「だから男子の一人はゴレイロだよ」遼の問いに小山内が答えた。
 ゴレイロというのはキーパーのことらしい。他にもピヴォだのフィクソだのアラといった呼称が使われている。
「なんで英語じゃないんだ?」
「サッカーとは別のスポーツだからかな」小山内もよくわかっていない。
 ただ、サッカーとは違うことは実際にやってみて思い知らされた。
 遼は体育の授業のようにひとりぽつんと突っ立って、ボールが転がってきたら誰かにパスする無気力プレーで時間を潰すつもりでいたのに、そうはならなかった。
 小山内がゴレイロをすると言うから遼はフィクソについた。いわゆるディフェンダーだ。相手が攻撃している時はそれを迎え撃てば良い。抜かれたとしても「すまん」の一言ですますつもりだった。
 しかし思惑通りにはいかなかった。
「ひとりぽつんと……なんてできないな」
 コートが圧倒的に狭い。サッカーより断然人口密度が高いのだ。すぐそばに敵も味方もいる。サッカーというよりはハンドボールとかバスケットボールに近いと遼は思った。
 しかもマイボールになった時に遼は途方に暮れた。
 フィールドには遼以外に三人の女子がいた。その三人に相手チームはマンツーマンでマークについている。
 味方女子は少しはマークを外そうという意識があったのだろうが、どう動いて良いかわからないために、何だか不規則な動きをして、遼はパスが出せなかった。そして極めつけは学園独自のルール。
「男子のシュートはゴールしても得点にならない……か。ドリブルで持ち上がってもシュートも撃てない。打つ手なしだな」
 それはまるでオセロゲームで打ちどころがないために「パス」するような感覚だった。
「パスが出せなくて、パスするとは、これいかに」遼は自虐的に呟いて笑ってしまった。
 そして相手陣でもたもたしていたら敵の男子二人に挟まれてしまった。
 遼がシュートできないものだから相手ゴレイロはゴールを守っている必要がないのだ。だから遼のところへ出てきた。こうなってはどうしようもない。
 淡白な遼はあっさりとボールをとられてしまった。
 そういうのが敵味方続くうちにようやく沢辺によるコーチングを受ける番がまわってきた。
 ひと言で言うならフットサルはサッカー以上に常に動いていなければならないスポーツらしい。ボールをキープしているプレイヤーのところに積極的にパスをもらいに行く。パスが渡ったら、また別のプレイヤーがパスをもらいに行く。それを継続する必要があるのだ。
 ぽつんと突っ立っていようと思っていた遼は唖然とした。オレは仕事をさせられるのか?
 そしてその日の体育の授業は沢辺の猛特訓により、延々とパス回しの練習をさせられたのだった。

 帰宅してから夕食の席で妹のせいにその話をすると、せいはテーブルを叩いて涙目になって笑い転げた。
「遼が敵に囲まれるところ見たかったー! そして遼が沢辺先生にしごかれるところも」
「笑うなよ」妹が笑い転げる姿を見るのも悪くはないが。
「だからうちのチームははじめは女子四人の編成にしてるよ。シュートが撃てない男子をフィールドに入れるのはナンセンス。大量リードしたら男子を入れて守りに入る。それで負けなし。今度見に来てよ。放課後に練習してるから」
「めんどくさいから遠慮する」
「星川くんとか鮫島くんがいるんだけどな」
「星川がいるのか?」あの男が星に関わるのは気に入らない。「じゃあ見学に行くよ」
 星に言われるまま遼は次の放課後に星たちH組の様子を見に行くことになった。
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