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遼、大きな一団に呑み込まれる
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校舎を出たところで星の姿を見つけた。いつもの友人たちと一緒だ。球技大会の練習をしていたのだろう。
他にもクラスが異なる生徒がたくさん下校しようとしていた。
大きな一団だから遼は巻き込まれたくなかった。だからその一団の後ろを距離をとって歩いていたのだが、たまたま振り返った星に見つかってしまった。
「遼~」遠くからでも星は手を振って笑う。
それに対して遼は軽く右手を上げただけだ。
星が駆けてきた。「今帰りなの?」
「図書委員の当番だった」
「そうか。夕食どうする? 今から用意するのも大変でしょう?」よく耳にする台詞だ。
「冷凍物ならすぐに用意できるよ」予防線を張ったつもりだった。
「えええ、みんなと食べて帰ろうよ」
「んー」
こちらを振り返った三人は先日一緒にファミレスに入った女子だとわかる。それ以外に星川と鮫島がいた。他にも地味なタイプやらオタクみたいなのやら男女入り雑じっている。
「H組で食べて帰るならオレは先に帰っているからお前だけでも食べてきな」
「H組だけじゃないよ、ほらA組バスケチームも来た」
星が指差す方、遼の後ろからA組の生徒も来た。高原や栗原がいる。
「星ちゃーん」高原和泉が星に駆けよってハイタッチした。この二人はやはり仲が良い。
「うは、今日はお兄さんもいるの? 私たちもお邪魔しようかな」高原が行く気になっている。
「オレは帰るんだが」
「さみしいよお」星が泣き真似をした。本当に他人の前では猫被りだ。
「ほら、可愛い妹ちゃんがさみしがっているし」高原が寄る。
「保護者はいた方が良いよな」栗原が巨体で迫ってきた。
「暗くなったな」栗原の影に入って遼は本当に暗さを感じた。
「おやおや、今日はA組H組合同の慰労会かい」仰々しく手を拡げて寄ってきたのは星川だった。
こいつは本当にうざい、と遼はいつも思う。
「なんだ? 行くのならさっさと行こうぜ」鮫島のドスの効いた声が聞こえた。
遼はこの一団に呑まれてしまった。
向かったのはまたあのファミレスだった。
「ここ溜まり場にして大丈夫なのか? 学校から近すぎだろ?」遼は星に訊いた。
団体で大きな一画を占拠して遼はそのど真ん中に座らされた。星が隣なのがせめてもの慰めだ。
「良いんじゃない。先生に見つかったらみんな仲良く始末書よ」いかにも星らしい一言だった。
「大丈夫よ、香月くん、いざとなったら私が何とかするから」高原が言う。
高原は目の前にいた。その隣が栗原だ。結局、A組からはこの三人だけになった。
あまりに濃いメンバーだったので一部の者はうまく切り抜けて帰っていった。遼だけが連行されたようだ。
「て言うか、お前は大丈夫なのか、星川」少し離れたところにいる鮫島が星川に訊いていた。
「ノープロブレム。日頃の行いが良いからボクは誰にも責められない」
「ざけてるよな」鮫島はいつも悪態をついているように見える。しかしこれがデフォルトなのだと遼は思った。
「いやあねえ、もう少し上品になれないのかな、A組と一緒だと目立つわ」星の友人三人が集まって鮫島に非難の目を向けていた。
「黙ってるよ」
鮫島は案外素直だ。H組の中では馴染んでいるようにも見えた。こうして球技大会の練習で距離が近くなったのだとしたら球技大会も意味があるのかもしれない。遼には関係なかったが。
H組は星川、鮫島、星とその友人三人だけかと思ったら、もう一人影が薄い男子がいた。前髪が眼鏡にかかるくらい下がっている男子だ。表情はよくわからない。
その男子は鮫島に言いつけられてドリンクバー係をしていた。最も端に座っていたこともあるが、何度も立ったり座ったりをしていた。
「あいつは鮫島たちのパシリをしているのか?」遼は小声で星に訊いた。
「そうでもないよ」星は答えた。「まあ、そう見えてしまうけれど、最近はあの三人でうまくバランスがとれてやっている。修学旅行もあの三人で班ができたし」
「それは御愁傷様だな」遼はパシリ男に同情した。
星川と鮫島みたいな両極端と組まされるとは可哀相でもあった。栗原と小磯の方がまだ良いだろう。
他にもクラスが異なる生徒がたくさん下校しようとしていた。
大きな一団だから遼は巻き込まれたくなかった。だからその一団の後ろを距離をとって歩いていたのだが、たまたま振り返った星に見つかってしまった。
「遼~」遠くからでも星は手を振って笑う。
それに対して遼は軽く右手を上げただけだ。
星が駆けてきた。「今帰りなの?」
「図書委員の当番だった」
「そうか。夕食どうする? 今から用意するのも大変でしょう?」よく耳にする台詞だ。
「冷凍物ならすぐに用意できるよ」予防線を張ったつもりだった。
「えええ、みんなと食べて帰ろうよ」
「んー」
こちらを振り返った三人は先日一緒にファミレスに入った女子だとわかる。それ以外に星川と鮫島がいた。他にも地味なタイプやらオタクみたいなのやら男女入り雑じっている。
「H組で食べて帰るならオレは先に帰っているからお前だけでも食べてきな」
「H組だけじゃないよ、ほらA組バスケチームも来た」
星が指差す方、遼の後ろからA組の生徒も来た。高原や栗原がいる。
「星ちゃーん」高原和泉が星に駆けよってハイタッチした。この二人はやはり仲が良い。
「うは、今日はお兄さんもいるの? 私たちもお邪魔しようかな」高原が行く気になっている。
「オレは帰るんだが」
「さみしいよお」星が泣き真似をした。本当に他人の前では猫被りだ。
「ほら、可愛い妹ちゃんがさみしがっているし」高原が寄る。
「保護者はいた方が良いよな」栗原が巨体で迫ってきた。
「暗くなったな」栗原の影に入って遼は本当に暗さを感じた。
「おやおや、今日はA組H組合同の慰労会かい」仰々しく手を拡げて寄ってきたのは星川だった。
こいつは本当にうざい、と遼はいつも思う。
「なんだ? 行くのならさっさと行こうぜ」鮫島のドスの効いた声が聞こえた。
遼はこの一団に呑まれてしまった。
向かったのはまたあのファミレスだった。
「ここ溜まり場にして大丈夫なのか? 学校から近すぎだろ?」遼は星に訊いた。
団体で大きな一画を占拠して遼はそのど真ん中に座らされた。星が隣なのがせめてもの慰めだ。
「良いんじゃない。先生に見つかったらみんな仲良く始末書よ」いかにも星らしい一言だった。
「大丈夫よ、香月くん、いざとなったら私が何とかするから」高原が言う。
高原は目の前にいた。その隣が栗原だ。結局、A組からはこの三人だけになった。
あまりに濃いメンバーだったので一部の者はうまく切り抜けて帰っていった。遼だけが連行されたようだ。
「て言うか、お前は大丈夫なのか、星川」少し離れたところにいる鮫島が星川に訊いていた。
「ノープロブレム。日頃の行いが良いからボクは誰にも責められない」
「ざけてるよな」鮫島はいつも悪態をついているように見える。しかしこれがデフォルトなのだと遼は思った。
「いやあねえ、もう少し上品になれないのかな、A組と一緒だと目立つわ」星の友人三人が集まって鮫島に非難の目を向けていた。
「黙ってるよ」
鮫島は案外素直だ。H組の中では馴染んでいるようにも見えた。こうして球技大会の練習で距離が近くなったのだとしたら球技大会も意味があるのかもしれない。遼には関係なかったが。
H組は星川、鮫島、星とその友人三人だけかと思ったら、もう一人影が薄い男子がいた。前髪が眼鏡にかかるくらい下がっている男子だ。表情はよくわからない。
その男子は鮫島に言いつけられてドリンクバー係をしていた。最も端に座っていたこともあるが、何度も立ったり座ったりをしていた。
「あいつは鮫島たちのパシリをしているのか?」遼は小声で星に訊いた。
「そうでもないよ」星は答えた。「まあ、そう見えてしまうけれど、最近はあの三人でうまくバランスがとれてやっている。修学旅行もあの三人で班ができたし」
「それは御愁傷様だな」遼はパシリ男に同情した。
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