ミステリーはファンタジーの中に

裕雨(ゆう)

文字の大きさ
1 / 4
Ⅰ神に支配された国

1誰も神を見ていない

しおりを挟む
 僕は全世界を旅して回る多分ただの旅人。風の導くままに世界中を駆け回り、最後にはきっと僕の追い求めている物があると信じてきた。
 ある時に魔法の王国を訪れ、時には海上都市も訪れた。しかしどこも僕の答えに辿り着くような物は見られなかった。そして今回訪れた国は神によって支配されたと噂の謎多き国だった。

 「隻眼龍」この国の神の名である。しかし、この国は他の国との交流が一切無い為、国というものに名前が無い。
 死火山となった大きな山のカルデラに、真ん中の湖を囲うように集落が並ぶ。湖の真ん中の神殿には隻眼龍の大きな像が飾られ、人々はそこにお供え物をして神にお祈りするらしい。ここまで聞いただけでは何も不思議な物は無い。でも僕はこの国を訪れてこの国の実態を知ることになった。

 そんな神を祭る国に訪れた時のこと。急に冷たい視線を感じたと思うと後ろから声がした。

「この国に訪れる人がいるなんて、何日ぶりかしらねえ」

 後ろを振り返るとただのおばさんだった。

「あ、こんにちは、ただの旅人です」

 一旦心を落ち着かせ、笑顔でおばさんにお辞儀した。

「もうここ数日は誰も足を運んでくれてなくてねえ、ここの外じゃ評判も悪いのかねえ?」

 腰を曲げ、ゆっくりした足取りでこちらに近づいてくる。

「えっと、それはわからないんですけど……以前ここを訪れた人っていつぐらいに来たんですか?」

「そりゃあ一ヶ月前ぐらいかなぁ……」

 そう言って空を見上げ考えこむと、何かに気づいた様に後ろを振り返ると、近くを通りかかった近所のおばさんらしき人に声を張り上げ尋ねた。

「ちょっと芝さん!ここへ前来た人っていつ頃だったかなぁ?」

 そのおばさんは足を止めて答えてくた。

「あー、一ヶ月ぐらい前だねえ」

 そう言い終わると、忙しそうに家に戻っていった。

「まあ、そういうことやけど」

 こちらを振り向き直して、記憶が曖昧なのか自信なさげに言った。

「おかしいですねえ、僕はここに来る前にこの国の情報をかき集めようとしましたが、外交活動を一切していないようですし、調査に行った人も一人としていない。記録は一切残されていませんでしたが……本当にここに人は訪れたのですか?」

 本当におかしな話だ。この国の謎は誰も訪れたことがないこと。もう建国して五百年になるが、誰も足を踏み入れようとしなかったことだ。だからこの国にも好奇心でやって来たわけなのだが……

「いやあー。でも、一年に百人は来てますよ?少し前ですが、隣の国のお役人さんだって来てましたし……」

「おかしいですねえ、僕の情報ですとそんなに人が訪れているとは思えませんけど」

「まあ何かの手違いじゃろう。せっかく来たんじゃ、龍の神殿を見ていきなさい」

 そう言って自ら会話を終了させると近くの家の方にゆっくりと近づいて行って、玄関から家の中に向かって叫んだ。

「おい駿斗や!この人を神殿までお連れしなさい」

 するとこちらを見て言った。

「もうじき私の息子が来るからな。そしたら案内してもらっておくれ、私は家事に戻るとするから」

「はい、分かりました」

 おばさんは腰を曲げながら家の裏手に消えていってしまった。その後ろ姿を見送ると、先程の会話からこの国の事が気になって来た。立地がいいとはいえ、他国に攻め入られる可能性が無いとは言えない。なのに門番を設けないどころか、門をくぐったら目の前には集落が広がっている。集落も他国との交流が無い為、他とは違った家の造りの木造建築だった。瓦の屋根の上にはどこの家にもそれぞれ違った龍の像が置かれている。他にも、この国には政治的な機関が無いらしい。果たしてここは国と言えるのだろうか……

「おまたせしました!」

 そう言って出てきたのは十代前半の子供だった。さっきのおばさんの子供にしては若すぎる。

「君は……?」

「高駿斗です!神殿までご案内します!」

「ああ、お願いします。ていうか、君はあのおばさんの子供なの?」

「うん、そうだよ」

 まさかと思っていた返事が帰って来るので返答に戸惑った。そして僕は辺りを見回しながら駿斗に尋ねた。

「神様って、隻眼龍って言われ祭られるくらいだから大きいの?」

「うーん……見たことないからわかんないけど。石像は大きいよ」

 駿斗は歩き出しながら答えて、僕もその後に続く。

「見たことないの?自分たちがいつも崇めているのに?」

 神を崇める国は今まで見たことがあるが、神の実物を見たことがないのに神を崇める国は見たことが無かった。
 実物を見たことが無いのにその存在は確かなものだと信じ込んでいるのか……?

「本当に神はいるの?」

「いるよきっと!」

 駿斗は足を止めてこちらをぐるっと振り向いて、自信ありげに僕の目を見つめて言った。

「見たことも無いのに?」

「う、うん……」

 今度は自信なさげにうなずくとまた歩き出した。

 そして僕は考えた。この国は何かがおかしい。それが何なのかはわからないが、他の国とは少し違っている。もう一度辺りを観察しながら駿斗の後ろを着いていく。ここら一体は国民の住む集落で、もうお昼を回って少し暑いぐらいなのに、汗を拭う暇も無いほどに皆時間を忘れたように熱心に仕事をやっていた。この光景に僕はまた違和感を覚えた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境で静かに暮らしていた俺、実は竜王の末裔だったらしく気づけば国ができていた

平木明日香
ファンタジー
はるか五億四千万年前、この星は六柱の竜王によって治められていた。火・水・風・土・闇・光――それぞれの力が均衡を保ち、世界は一つの大きな生命のように静かに巡っていた。だが星の異変をきっかけに竜の力は揺らぎ、その欠片は“魂”となって新たな生命に宿る。やがて誕生した人類は文明を築き、竜の力を利用し、ついには六大陸そのものを巨大な封印装置へと変えて竜王を眠りにつかせた。 それから幾千年。 現代では六つの大国がそれぞれ封印を管理し、かろうじて世界の均衡を保っている。しかし各地で異常な魔獣が出現し、封印の揺らぎが噂されはじめていた。 そんな世界を気ままに旅する青年がいる。名はブラック・ドラグニル。三年前からハンターとして魔獣を討伐し、その肉を味わいながら各地を渡り歩く放浪者だ。規格外の実力を持ちながら名誉や地位には興味がなく、ただ「世界のうまいものを食べ尽くす」ことを楽しみに生きている。 ある日、光の王国ルミナリア近郊で王女ユリアナが大型魔獣に襲われる事件が起きる。死を覚悟した騎士団の前に現れたブラックは、その怪物をわずか数十秒で討ち倒す。彼にとっては雑魚同然だったが、その圧倒的な強さは王国中に知れ渡る。王女は自由に生きる彼の姿に心を奪われるが、ブラックは次の目的地へ向かう計画を練るばかり。 だが彼自身はまだ知らない。 自らが竜族の末裔であり、世界を再び“統合”へ導く鍵となる存在であることを。 竜の封印が揺らぐとき、自由を愛する青年は世界の命運を左右する選択を迫られる。 これは、竜の記憶と人の魂が交錯する壮大なファンタジー叙事譚である。

辺境の落ちこぼれと呼ばれた少年、実は王も龍も跪く最強でした

たまごころ
ファンタジー
村で「落ちこぼれ」と呼ばれた少年アレン。魔法も剣も使えず、追放される運命だった。 だが彼の力は、世界の理そのものに干渉する“神級スキル”だった。 自覚のないまま危機を救い、美女を助け、敵を粉砕し、気づけば各国の王も、竜すらも彼に頭を下げる。 勘違いと優しさと恐るべき力が織りなす、最強無自覚ハーレムファンタジー、ここに開幕!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...