私は本当の意味で愛していないらしい。

ぽんぽこ狸

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 エレノアの言葉に二人は少し間をおいてから、意を決したようにエレノアに視線を向けた。

 その瞳は真剣そのもので、二人分なので威圧感もあったがそれでも負けないぐらい真剣にエレノアも見返した。

「……俺たちが一人のきちんとした人間でない事を受け入れてほしい」
「俺たちが別々に存在していると知ったうえで、アレクシスだけでいい、愛してくれれば……それで」

 苦しげに言う彼らにエレノアは微妙な顔をした。

 この言い分だと今までと変わらずに、一人だけを双子だと知ったうえで愛してくれればいいと言っているようなものだ。

 それならエレノアの生活はまったく変わらないが、それははたして”本当の意味での愛情”といえるのだろうか。

 あまりに謙虚すぎて、それでは足りないだろうと反射的にエレノアは思った。

「何言ってる。それじゃ、お前たちを本当の意味で愛してるなんて言わないだろ、二人してかかってくればいい、私はそんなにやわじゃない」

 眉間にしわを寄せて真面目に言うエレノアに、アレクシスのうちの一人が顔を背けて顔をかくす。もう一人の方はそれを横目で見て「本当に?」と聞いてくる。

 ……まあまずはどっちがどっちか見分けをつけないといけないな、アレクシスのうちの片方って考えるのも面倒くさいし、二人ともアレクシスだけど別行動もするだろうし。

 考えつつこくりとうなづいて、彼らの違いを探すためにじっと見つめる。

「エレノアがものすごく肝が据わってて度胸があるってわかってたけど、すごく不思議だ。俺らの事受け入れてくれるだなんて」
「しかし、どうしてそんなに忌避感がないんだ? 兄上の話を聞いてただろう」
 
 彼らは少し違う方向性の反応をしていて、そのあたりも違いだと思うがどちらが、どちらがどんな反応をしているのか確認する為に会話をぶった切って聞いた。

「ちなみにアレックスは今どっちだ」
「俺の方だけど」

 そういって素直に喜んでいるらしい方があっけらかんと言った。

 じっくり見てみても見分けはつかない事はもう知っているので、どうにか彼を見失わないようにしようと考えながらアレクシスの問いに答える。

「で、双子に対する忌避感の話か? ……正直上級貴族達の間だと、嫌われているって話は知ってる。あ、アレックスこっちに来てくれ」

 言いながら区別をつけるために彼を呼び寄せた。するとあまり警戒していない様子で彼は「わかった」といいながらテーブルを回ってエレノアの方へとやってくる。

「ただ、それは魔力のある貴族がたくさん居たうえで、双子なんて言う爵位の継承権がどちらに継がれてもおかしくない面倒なものを嫌がってるからそんな話になっているんだろ。継承権者の争いは家系の資産を分割することになりかねない。それを忌避しての話だ」

 隣に来たアレックスは、エレノアをじっと見つめていて、エレノアの言う事を聞いて側に来たことに、何か報酬を求めている様子だった。

「……」

 そんな様子のアレックスにとりあえず手を差し伸べると、彼はエレノアの手を取って機嫌がよさそうに恋人のようにつないだ。

 アレクシスもその様子を注視していたが、エレノアとの話の方が重要だと考えているのか真剣な瞳は変わらない。

「だから、私のような万年魔力不足の田舎の出身の女にはない価値観だ。自分が双子を生んでも別に何とも思わん」

 適当に話をしていると、また貴族令嬢らしからぬ言葉遣いになってきて、多少おしとやかにしなければと考えて、ぎこちなく穏やかな笑みを浮かべた。

 しかし当たり前のことを言ったつもりだったがアレクシスは暗い顔をして、エレノアに言った。

「それでも、周りからの評価や重圧はこちらで過ごす以上変わらない、俺たちの事も誰とも共有できないし、兄上のような考えの人間がほとんどだ。エレノアが愛してくれたとしても、君が嫌な目に合うかもしれない」

 不安と心配が混ざっているような複雑な表情をしていて、アレクシスの方がきっと少しネガティブなのだと思うことにする。

 彼の言っていることはもっともだと思うが、そんな心配もエレノアには不要だ。

「じゃあアレクシスは、私がお前たちが双子だという事実以外で嫌な目に合わないと思ってるって事か?」

 言い負かしたいわけではないただ、納得してほしくてそう返した。

「アレクシスもアレックスも、二人が私を望んであの場所から引っ張り出した。もちろん、私のような身分の人間が王室に入ることなど端からよしとされていない」
「……」
「嫌な目に合わない方が難しい、そんなのは承知しているし……それよりも、お前たちが私を望んで、大切にしてくれると思ったから、ここにいるんだアレクシス」

 まったくストレスのない人生など存在しない、いいことも悪いこともあるだろう、その中でいいと思う方を選ぶのが人生ってやつだと思う。

 エレノアは覚悟を決めてここにいる、最初に言った通りだ、愛する覚悟をしてきたし、出来る限りまっとうに向き合う。

 本当の意味だろうが何だろうが愛すると決めたからにはかかってこいと思ってる。

「今更怖気づいたのか? 情けない」

 煽るようにそういってぽんぽんと隣を叩いた。もう折れてしまえばいいのだ、そして協力してまだましな選択をしていくべきだ。

 二人を知って愛してほしいと望んだのなら、エレノアの愛情を受け入れてしかるべきだ。

 すると、彼はあまり納得して居ないながらもため息をついて立ち上がってエレノアの隣へと座った。

「まさか、こんなことになるとは思ってなかった」

 つぶやくようにアレクシスが口にした。それに「そうだな」と反対からアレックスが同意する。彼らが同じ言葉を思い浮かべていても絶妙にニュアンスが違う気がした。

 その差異をどうにか覚えて彼らの見分けをつけなければならないが、その前に、それはエレノアのセリフだと思ったのだった。





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