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しおりを挟む「あの、アレクシス様、わたくし、ずっとアレクシス様とお話してみたかったんですの」
キラキラとした可愛いドレスを身に着けた令嬢がアレクシスの前に座って、目までもキラキラさせてアレクシスの事を見ていた。
アクレシスの前に座った先ほどの令嬢がどうなったのかその目で見ていたはずなのに、自分だけはアレクシスに心を許してもらえると信じて疑わないそんな顔だった。
……イラつく。
ふとそう考えただけで、魔力が漏れ出て黒魔法が発動してしまう。
目の前にいる名も知らぬ令嬢は瞳に黒い影が生まれて少しずつ侵食していった。
「それにしても……その、隣の使用人はなんですの? 気味が悪いですわ」
すぐ隣にいるアレックスのことを指さして彼女は言った。それにもさらに腹が立って彼女の瞳を黒魔法が侵食していく。
けれども確かに異様な光景ではあった。
第二王子であるアレクシスの十歳の生誕パーティーだというのに当のアレクシスは一番端の席から微動だに動かず、隣には顔まで覆うほどの大きなフードをかぶったローブの同じ背格好の子供がずっと突っ立っていたからだ。
しかし、それはアレクシスにとって大切な双子の弟だ。
黒魔法を使った任務を成功させた褒美として、今日だけは顔をかくしてパーティーに参加することを許された。二人そろって参加できたのはうれしいが、どうにも楽しくない。
ここ最近、あまり楽しいといえる日々を送っていなかったからかもしれない。
人をだましたり、勝手に操ったりして、時には命を奪う行為をやった後だとこの機会にぜひお近づきになろうと話しかけてくる令嬢たちが能天気に見えて仕方なかった。
そうして可愛く笑みを浮かべているだけで腹が立ってくる。
「アレクシス、さま?」
そう考えるだけで、彼女の瞳は黒く染まって呆けたような表情になる。
こうなるともうアレクシスたちの思うままだ、どうとでも出来てしまう。
こうしてパーティーを開いて令嬢たちを呼ぶのは、将来の嫁探しという名目が大きく、それが貴族として当たり前の事で、もちろん女の子たちもそのつもりで来ていた。
しかし、こんな風にすぐに言う事を聞かせられる人間と結婚したいだなんて、アレクシスは到底思えなかった。
それに兄のエイベルは、アレクシスを結婚させようというつもりがない可能性もある、結局こんなパーティー楽しくもなんともない。
「……」
隣にいるアレックスに同じように思うだろうと確認する意味で視線を送ると、アレックスも同時にアレクシスを見ていた。
同じことを考えているそう理解できて、少しだけ笑みに顔を歪ませた。
それから、口元に手を当てて他のパーティー会場にいる子供たちに聞こえないように目の前の令嬢にこそっと言った。
「なぁ、何か、皆を驚かせるようなことしてきて」
「はい!」
瞳を真っ黒に染めた彼女は椅子を引いて勢い良く立ち上がり、ずんずんとパーティーホールの中心へ足を進めていって、そこですうっと大きく息を吸う。
「わたくしは~!!アレクシス様に取り入ってぇ~!!どうにか王室に入れと~!!お母さまに言われてますわ~!!!!」
……なんだそれ、大胆。
バカみたいに正直にそういう令嬢が面白くて笑うと、距離も開いていたので黒魔法が解けて、途端に呆けた表情で彼女は立ち尽くした。
それから周りの子供たちの視線に気がついて少し間をおいてから顔を真っ赤にした。
それから、大きな声で泣き出す。
「っ、あははっ」
思わず吹き出すと、アレクシスの座っているテーブルの近くで彼の事を伺っていた子供たちはそそくさと離れていく。これで、アレクシスに関わったら恥をかかされるのだと分かっただろう。いい気味だ。
さっきよりもずっと派手にあの令嬢がやってくれたおかげで、ここで静かに過ごせる。それは少しばかり寂しかったけれども今日はアレックスもいるしそれだけでよかった。
どうせ、甘やかされて育った令嬢たちなんかと話をしたってなにも満たされない。
むしろどうして自分たちは彼女たちと違うのか、そう考えてしまうと苦しくなる.。それならば、近寄られない方がいい。
そうして二人だけで早くこの時間が終わるように願いながら時間を過ごした。
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