お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

文字の大きさ
70 / 139

決意の手紙 その2

しおりを挟む





 
 すると、私の前にリノが、進み出て、私の利き手を恋人のように絡めて繋いだ。
 
 おお、奥さんの前で何しているんだ、リノは!
 意味がわからずに硬直していると、リノの方も眉をしかめて、私を睨んだ。
 その行動は、そんな顔でするものじゃないと思うのだけど、まったく意味が分からない。
 
「な、なに、どうしたの二人とも」
「姫さんは、手紙を書いちゃだめ、です」
「え、なんで」
「……ル、ルカに身を汚されたからって、早まらにゃいで!!欲しいの!!」
 
 マティにそっと背後から抱きしめられた。
 それからリノは、私の手を痛いぐらい強く握る。
 
「どうして話してくださらないのですか、私達、それほど信用出来ませんか」
「ちょっと、ちょっとまってよ!」
「またにゃい!姫さん、また手紙を書くって言うなら、僕、姫さんの指折るから!」
「大丈夫です、姫様、痛いのは折れた時だけですから、ね?」
 
 そういう問題では、無いのでは?!

 なんで手紙を書いただけで、指を折られなきゃいけないのだ。書くなと言われても、帰らないと、クリスティナ様に送らなければ、迎えが来てしまう。それは困ったことだ。
 
 それに、ルカに身を汚された?!私、汚れてないよ?!清廉潔白だ!!いや、この言葉はそういう意味じゃないと思うんだけどね?
 
 とにかくだ、何か二人は、手紙の内容を勘違いしている!
 
「まって、ほんとに!折らないで、痛いって」
 
 私が今更、わたわたと暴れると、マティはむぎゅと私を抱きしめなおす、一見、柔らかく抱きしめているだけに見えるのに、全く逃れる事が出来ない。
 リノの方も同様だ、手を離して貰えそうにない。
 
「姫様、大丈夫、大丈夫ですわ」
「うん、痛くにゃい。かる~く一本だけ折るだけ、です」
「そうです、ちゃんと治りやすいように、折りますから」
 
 リノが私の人差し指をスリスリと狙いを付けるように撫でた。
 その仕草にぞわわっと寒気が背中を駆け抜ける。
 
 なんてこった。本当に折るつもりらしい。

 手紙に告発文でも書いていると思っているのか、二人は、私が捕まると思い込んでいるらしい。
 なんて言うか、それほど私とてアホではない、流石にそれをやるなら、クリスティナ様に直接出すのでは無く、付き人の宛名にしたり、暗号文を使ったりと色々やるだろう。
 
 だから、国内で検分されて捕まるなんて間抜けすぎることは、起こらないんだけど!
 
 と頭の中で、とツッコミを入れる。
 
 呑気に、考え事をしていると、リノが、ぐりっと私の人差し指を手の甲の方へ押した。
 
「い゛っ、っあ~!もう!話を聞いてよ!獣人は、そんなに立派なお耳が着いてるのに、なんでこう人の話を聞かないかな!」
「だって、姫さんが」
「お止めしなければ、捕まってしまいます!」
「捕まらないよ!私、なんにも悪いことしてないもの!」
「ダメにゃのです、姫さんがバレにゃいと思っていても、バレてるの」
「な、何がよ!」
「ッ、い、言えにゃいの」
 
 リノは、しょんぼりしたまま、ぐりっと私の指を押し込む。だから痛いと言っているのだが、聞こえていないのだろうか。
 
 しかし、一体、何がバレているって……!……暗号式か!王族の暗号式は、既に解読されているとルカが言っていたそれで、こんな事になったのか。けれど、使用人階級の人間が、その情報を知っているとは思えない……んだけど。
 
 そこはルカが予め、二人に伝えて居たとすれば、辻褄が合う。
 そしてルカと揉めたと思われているのは私が、胸元のボタンを飛ばして、月光浴から帰ってきたからだろう、いや、まぁ確かに、紛らわしかったと思うけれども!
 
 指を折る必要は、無いでしょうが!
 
「暗号式がバレてるのは知ってます!ルカが教えてくれたし、何より、私はルカに犯されてない!ので!」
 
 あ、犯されるなんて、はしたない言葉を使ってしまった。
 
「お、犯され?!いや、そこまでは」
「触れ合ってないし、キスもしてないし!けど、仲も悪くなってない!見てて、二人とも!今からもう一回手紙書くから」
 
 驚いて、リノの手が緩んだのを逃さずに、右手を振り払う、それから、テーブルにまだ広げてある、便箋に走り書きで文字を書いた。
 
 “私!帰りません!”
 
 ロイネより、と文字もつけたし、リノに突きつける。
 
「心配しないで……指なんか折らなくても、もう手紙は出さないから」
 
 マティは、正面に回ってそれを確認して、目を瞬かせる。まったく、思い込みが激してく困る。
 
 けど……嫌じゃない、私がきっと間違った事をしようとしていたら、止めてくれるだろうし安心できる。
 それと、これからはちゃんと情報を共有しないとダメだね。
 
「あと、話を聞いてくれる?ルカとの、事なんだけど、色々、あってね。……だめかな?」
「……あ、……も、申し訳ございません、私……早とちりしてしまいました。是非、お話聞きたいです」
「……姫さん……僕、痛いことして、ごめんなさい」
「許します!そのかわり、次からは話を聞いてよ」
「!うん」
 
 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

処理中です...