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23 家族愛 その一
しおりを挟むラウラはそれからしばらく、クリストハルトの周辺の事を調べて回った。
彼自身と接触してみてもやはり、ヘルムート子爵夫妻や使用人のダニエラが言うような特別気が強かったり性格がねじ曲がっていたり、ヘルムート子爵に恨みを持っているという事ではなかった様子なので他にあるはずの理由を探し出した。
クリストハルトはとても見た目のよい男の子でまるで妖精のようだが特にそれ以外の特徴はない、しいて言うならばやっぱり、ラウラと同じで家族を求めているだろう点は特出するべき点だろう。
そしてその求めている家族との間を邪魔している人間がおり、それはラウラの想像していなかった人物だったが、何度も見ればそんな気もするようなしないようなそんな相手だ。
その行為をしている人物は、決まったタイミングでクリストハルトにつらく当たっていたのでラウラは簡単に作戦を練ることができた。
「では、話をした通りに、私が手を離すまでは必ず目をつむっていてください」
ラウラは、ヘルムート子爵一家の昼食が終わったタイミングでヘルムート子爵夫妻に彼の本当の気持ちを知りたいならば従って欲しいという話をした。
「ラウラ……あなたの事を信頼しているわ。でも本当にこれで大丈夫なの?」
「ああ……ここまでしなくとも私たちは……」
彼らはラウラと手をつなぎながら遠慮気味にそう口にした。
まあ、誰だって目をつむって言う事を聞いてほしいと言われれば、そんな反応になるだろう。
何か見てはいけないようなことをしてまで、自分たちを励まそうとしてくれているのならば悪いなと思う気持ちも生まれるのもわかる。
しかし、今から起こることは事実であるし、彼らにはラウラも恩がある。安心して身を任せてほしい。
「……アマランスの花冠といえばわかりますか? 似たような魔法道具を使用しています。しかし高価で秘匿すべき事項が多いので目を開けないでほしいと望んでいるという事です」
「アマランスの……なるほど。それならば……たしかにこのような状況になるのも頷けるが……」
「安心して下ださい、この状態で彼の部屋に移動するだけですから頭の中で見道順を追っていればすぐです」
そういって、人を下がらせたダイニングから出て、ラウラは透明化の魔法を使い、三人そろって姿を消した。
本当は、魔法道具ではなくラウラの魔法だが、魔導書の存在に勘付かれると面倒なので見られない事によってごまかしがきくように、ラウラはこの方法を選んだ。
『ニコラ、扉を開けてくれる?』
『ああ、お安い御用じゃ』
ニコラのサポートを受けながら、両手に夫婦を携えてラウラはゆっくりと移動した。
移動してみて初めて目をつむった人を移動させる面倒くささと、もう少しクリストハルトの部屋の近くで魔法を使い始めればよかったと考えたが、そう思いいたったころには到着していた。
ニコラが部屋の中から扉を音もなく開けて、ラウラは中の見慣れた光景を見つめた。
声が聞こえやすいように彼らに近づいた。
「なんですかあの媚びた目線はっ……ありえない。ありえません。わたくしは常にお話しているはずですクリストハルト様、どうして奥方様や、旦那様をたぶらかすのですか?」
ラウラの視界には、クリストハルトを鬼のような形相で見つめるダニエラの姿が映っていた。
クリストハルトは、難しい表情で床を見つめていて、納得がいっていない顔をしていつつも、それでもダニエラが怖い様子で俯いて口をつぐんでいた。
……クリストハルト、もうすぐだからね。
心の中でそう励ましつつも、両手をきちんと握って魔力を込める。透明化の魔法は本来他人に使うためのものだ。
アマランスの花冠の伝説のとおり人を守るために隠すこともできるが、こうして気がつかれないように人の本性を見せることもできる。
「あなたのような美貌を持ったものは悪魔です。悪魔なんです。悪魔に魂を売ったあなたのような人間に、奥方様や旦那様がたぶらかされないようにするのもわたくしの役目、わたくしにはこの役目を遂行する義務があるのです」
ダニエラの声は静かだった。
しかし、クリストハルトを悪だと決めつける恐ろしいまでの狂気をはらんでいた。
「聞いているのですか、目をあわさず言葉を交わさず、誰もたぶらかさずこの屋敷から去りなさい。この悪魔っ、恐ろしい、おぞましい子」
「っ……」
「わたくしはあなたのような美貌を持つ人間の狂気を知っているんです。絶対にわたくしのこの居場所から何も奪わせません」
ダニエラは、何かの強迫観念にとらわれているらしく、美しい人間というだけでクリストハルトを軽蔑し、彼女から大切なものを奪い去るとまで思っている。
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