透明令嬢、自由を謳歌する。

ぽんぽこ狸

文字の大きさ
23 / 46

23 家族愛 その一

しおりを挟む


 ラウラはそれからしばらく、クリストハルトの周辺の事を調べて回った。

 彼自身と接触してみてもやはり、ヘルムート子爵夫妻や使用人のダニエラが言うような特別気が強かったり性格がねじ曲がっていたり、ヘルムート子爵に恨みを持っているという事ではなかった様子なので他にあるはずの理由を探し出した。

 クリストハルトはとても見た目のよい男の子でまるで妖精のようだが特にそれ以外の特徴はない、しいて言うならばやっぱり、ラウラと同じで家族を求めているだろう点は特出するべき点だろう。

 そしてその求めている家族との間を邪魔している人間がおり、それはラウラの想像していなかった人物だったが、何度も見ればそんな気もするようなしないようなそんな相手だ。

 その行為をしている人物は、決まったタイミングでクリストハルトにつらく当たっていたのでラウラは簡単に作戦を練ることができた。

「では、話をした通りに、私が手を離すまでは必ず目をつむっていてください」

 ラウラは、ヘルムート子爵一家の昼食が終わったタイミングでヘルムート子爵夫妻に彼の本当の気持ちを知りたいならば従って欲しいという話をした。

「ラウラ……あなたの事を信頼しているわ。でも本当にこれで大丈夫なの?」
「ああ……ここまでしなくとも私たちは……」
 
 彼らはラウラと手をつなぎながら遠慮気味にそう口にした。

 まあ、誰だって目をつむって言う事を聞いてほしいと言われれば、そんな反応になるだろう。

 何か見てはいけないようなことをしてまで、自分たちを励まそうとしてくれているのならば悪いなと思う気持ちも生まれるのもわかる。

 しかし、今から起こることは事実であるし、彼らにはラウラも恩がある。安心して身を任せてほしい。

「……アマランスの花冠といえばわかりますか? 似たような魔法道具を使用しています。しかし高価で秘匿すべき事項が多いので目を開けないでほしいと望んでいるという事です」
「アマランスの……なるほど。それならば……たしかにこのような状況になるのも頷けるが……」
「安心して下ださい、この状態で彼の部屋に移動するだけですから頭の中で見道順を追っていればすぐです」

 そういって、人を下がらせたダイニングから出て、ラウラは透明化の魔法を使い、三人そろって姿を消した。

 本当は、魔法道具ではなくラウラの魔法だが、魔導書の存在に勘付かれると面倒なので見られない事によってごまかしがきくように、ラウラはこの方法を選んだ。

『ニコラ、扉を開けてくれる?』
『ああ、お安い御用じゃ』

 ニコラのサポートを受けながら、両手に夫婦を携えてラウラはゆっくりと移動した。
 
 移動してみて初めて目をつむった人を移動させる面倒くささと、もう少しクリストハルトの部屋の近くで魔法を使い始めればよかったと考えたが、そう思いいたったころには到着していた。

 ニコラが部屋の中から扉を音もなく開けて、ラウラは中の見慣れた光景を見つめた。

 声が聞こえやすいように彼らに近づいた。

「なんですかあの媚びた目線はっ……ありえない。ありえません。わたくしは常にお話しているはずですクリストハルト様、どうして奥方様や、旦那様をたぶらかすのですか?」

 ラウラの視界には、クリストハルトを鬼のような形相で見つめるダニエラの姿が映っていた。

 クリストハルトは、難しい表情で床を見つめていて、納得がいっていない顔をしていつつも、それでもダニエラが怖い様子で俯いて口をつぐんでいた。

 ……クリストハルト、もうすぐだからね。

 心の中でそう励ましつつも、両手をきちんと握って魔力を込める。透明化の魔法は本来他人に使うためのものだ。

 アマランスの花冠の伝説のとおり人を守るために隠すこともできるが、こうして気がつかれないように人の本性を見せることもできる。

「あなたのような美貌を持ったものは悪魔です。悪魔なんです。悪魔に魂を売ったあなたのような人間に、奥方様や旦那様がたぶらかされないようにするのもわたくしの役目、わたくしにはこの役目を遂行する義務があるのです」

 ダニエラの声は静かだった。

 しかし、クリストハルトを悪だと決めつける恐ろしいまでの狂気をはらんでいた。

「聞いているのですか、目をあわさず言葉を交わさず、誰もたぶらかさずこの屋敷から去りなさい。この悪魔っ、恐ろしい、おぞましい子」
「っ……」
「わたくしはあなたのような美貌を持つ人間の狂気を知っているんです。絶対にわたくしのこの居場所から何も奪わせません」

 ダニエラは、何かの強迫観念にとらわれているらしく、美しい人間というだけでクリストハルトを軽蔑し、彼女から大切なものを奪い去るとまで思っている。




しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

これが普通なら、獣人と結婚したくないわ~王女様は復讐を始める~

黒鴉そら
ファンタジー
「私には心から愛するテレサがいる。君のような偽りの愛とは違う、魂で繋がった番なのだ。君との婚約は破棄させていただこう!」 自身の成人を祝う誕生パーティーで婚約破棄を申し出た王子と婚約者と番と、それを見ていた第三者である他国の姫のお話。 全然関係ない第三者がおこなっていく復讐? そこまでざまぁ要素は強くないです。 最後まで書いているので更新をお待ちください。6話で完結の短編です。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...