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26 変化
しおりを挟む「なんだあの小娘め、腹立たしい」
「本当にね。私たちが何したっていうのかしら」
帰りの馬車の中で父と母は苛立った様子で顔を見合わせて悪態をついた。
その様子にヴァネッサは、今しかないと感じて彼らに、真剣な瞳を向けた。
「お父さま、お母さま、たしかにローゼマリー王太子妃殿下のお言葉は急なものだったし、きつい言葉ではあったと思います、ただ私は間違っているとは思えませんでした」
「何を言っているヴァネッサ、いいんだお前はあんなごく潰しのことを庇う必要はない。お前は立派なディースブルク伯爵家の跡取りなんだ」
「そうよ。……ラウラの事なんて私たちには関係ないのよ。あの子は大変な私たちを見捨てて一人で出ていったんだから」
父と母はまったく考えを変える気はないらしく、ヴァネッサの言葉を否定した。
しかしその言葉に首を振る。
父も母もそうやって都合のいいときばかりヴァネッサをおだてて、いいように扱おうとする。それに昔から、彼らは私たち姉妹をきちんと愛そうというつもりはなかったのだ。
ガタゴトと揺れる馬車の中でヴァネッサは、小さく息をついて、両親に目を向けた。
「出ていったのは、ローゼマリー王太子妃様の言った通り、私たちのせいです。結局そうして、家族のうちの誰かを差別することによってその時は平穏になるかもしれない。
でも、そのあとに残ったものはなんですか? ラウラは、勤勉だったと私はやっと知りました。そして贔屓されてラウラを軽蔑していたリーゼはとても擁護できない事をやった。
それは誰のせいですか。
お母さま、あなたの娘はあなたの都合によって増えたり減ったりしないんです。ラウラは私の一人目の妹で、あなたの二番目の子供です。
お父さま、幼いころから、ラウラと折り合いが悪かったのは知っています。たしかに、お父さまに対して失礼な時もあったかもしれません。
けれどだからと言って、ローゼマリー王太子妃殿下が仰られたように、当たり前に貶したりいじめていいわけではなのだと思います」
「はぁ、ヴァネッサ、お前、自分の親に説教など偉くなったな?」
イラついた様子で言う父は、ヴァネッサも怖い。しかし、もう変わらなければ、後はない。そんな予感があった。
彼らがこうしている時以上、何も進まないと思う。
「そうして、私も今度はラウラのように、家族の中でいじめられて当然の存在にするんですか?
そうなったら、ディースブルク伯爵家はリーゼが継げるとお思いですか」
「なんだと? お前、自分自身を人質にでも取ったつもりか? 誰が育ててやったと思ってる!」
「そうよ、ヴァネッサやめなさいっ、どうして今日に限ってこんなことを言うのよ」
どう考えてもリーゼには継ぐことはできない。それをわかっていてヴァネッサはそう聞いた。
そしてその意図に気が付いた父はさらに機嫌を悪くして、今度はこの歳まで育ててやったという恩を背負わせてきた。
……確かにその言葉は強いです。
けれど、私はこんな父の後を継ぎたいとは思えません。爵位という重たいものを背負うならば、背負いたいと思う気持ちがなければ背負えません。
ヴァネッサは、嫌われてもいいとやっと思えて、鋭い深緑の瞳に父に負けないほどの感情を宿して、はっきりといったローゼマリーを参考にしながら両親に言った。
「私も大人になりました。そんな言葉では惑わされません。お父さまお母さま建設的に考えてください。私はこのままのあなた達についていけない。
今のまま変わらずに今までと同じように、気分で怒って、嫌いな子供を迫害してリーゼを助長させて生きていくなら、あなた達はリーゼと心中してください。
私も、ラウラのように、あなた方にとってアマランスの花冠をかぶったような存在になって出ていきますから。私は言いましたよ。よく考えてください。
私ももう大人なんです」
同じ大人として、父と母と向き合う、それは媚びるだけでいればいい親子とは違う関わり方で違う重さだ。
しかし、できるようにならなければ、お婿さんを迎えた時にもきっと苦労するし後悔するだろう。
だからこそここが分かれ道だとヴァネッサは考えているのだ。
父も母も微妙な顔をして、嫌そうに目線を外すがヴァネッサは自分の主張を変える気はなかったのだった。
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