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19 反撃
しおりを挟むレーナは王都で今までと同じように注目を浴びて活動した。
ティアニー侯爵家の一件があってからもお茶会の誘いはひっきりなしにやってくるし、意図していない場所でルビーと鉢合わせることも何度かあった。
そのたびに敵対的な態度を取られたが、まったく眼中にないというふうを装って日々を過ごす。
するとしばらくしてまた、ティアニー侯爵家でのお茶会に招待された。
同じ手法の嫌がらせをされる可能性を考えて、楽器を持参し簡単な曲を披露できるように練習をして向かった。
もちろん、当たり前のように開始時間は遅れて伝えられていたらしく、ティアニー侯爵家のそばで待機していたので令嬢たちの馬車がやってきて来ていることを確認してレーナも到着する。
顔ぶれは依然と変わりない事が確認できた。
レーナが時間通りに来たことに、ルビーは最初からものすごく機嫌が悪そうに見えた。
「今日は時間通りに来られるなんてとっても優秀ですわね。いくら頭の弱い子だとしても周りの従者たちが有能なら問題なく生活できるんですもの、親に感謝しなくてはいけないわね?」
「それはルビー様も同じではありませんか。何度も招待状の時間を間違える様な注意散漫さを持ちながらも、人を馬鹿にできるほど自尊心を持ち合わせているということは親の教育のたまものと言えます」
「……は?」
「感謝しなくてはならないでしょう」
レーナは言い返さないと思っていた彼女は間抜けな声をあげてキョトンとする。
普段は思いつきもしない皮肉な返答だが、レーナの頭の中にいる空想上のヨエルが教えてくれるのですらすらと思いつく。
彼はレーナには優しい態度を今こそ取ってくれるものの昔は、ウィットに飛んだ皮肉を連発するような性格をしていた。
今でもたまに苛烈なことを言うことが多くあるし、悪口にそんな切り口があるのだとレーナをいつも驚かせてくれる。
なので機嫌の悪い時のヨエル様が言いそうなことをレーナは頭の中で考えて、口にするだけでいい。
「お前、このわたくしを馬鹿にしました?」
「そんな滅相もありません。お互いによい親を持ったというお話です」
「は?」
「まぁまぁ、ルビー様。クレメナ伯爵令嬢が失礼なことは今に始まった事ではないでしょう? それより、演奏会を始めましょうよ」
一番手の位置に座っている令嬢がルビーをなだめて早速始めようと声をかける。
周りの令嬢もその令嬢に賛成するように頷く。
彼女たちも人を前回には、馬鹿にするという事を楽しんでいたように見えたが、純粋にこの演奏会のことも楽しみにしているらしい。
「そうですわ。今回の開催は割と短い期間でしたから急いで特訓したのですよ」
「わたくしもいつか自分でこういう趣旨のお茶会を開催できるほど上達したいんですの」
口々に意気込みを語る令嬢たちは、今回は遅れてくることがなかったレーナに対して特に怒っている様子はない。
そんなお茶会の雰囲気を壊せばルビーの方が幻滅されてしまうだろう。
それをルビー自身も察したのか、苦々しい表情をしてグッと拳を握った。
けれどもふっと息を吐きだして切り替え、演奏会開始の宣言をし、以前と同じように令嬢たちは前にある椅子に移動しそれぞれの楽器を演奏する。
彼女たちは、前回とは違う曲を演奏し、この日の為に練習をしてきたのだということは素晴らしい事だと思う。
そして開催者であるルビーはやはりこの中でも一番の実力者だ。なめらかで余裕のある演奏はとても聞き心地がいい。
するとリリーがこっそりと話しかけてきた。
「レーナ様、合図はレーナ様が終わった後でいいのですよね?」
その言葉に小さく頷いて彼女の番がやってきて、確認するように指輪を摩る。
それは簡単な魔法道具で魔力を込めると対になっている魔法道具にも同じように魔力の光がともるという仕組みのものだ。
本当はレーナがつけようと思っていたのだが、魔法封じの枷を外したところ、長年使ってこなかっただけあって魔力の繊細な操作が苦手だということが判明した。
仕方のない事だろう。
リリーがそつなく演奏を終えて、レーナの番がやってくる。
ルビー以外の令嬢は少し怪訝な表情をしているが、アメーリアがきちんとハープを出してレーナが演奏するために椅子につくとどこかほっとしている様子だった。
一方ルビーは、楽器を持ってきたレーナに一瞬戸惑ったような表情をしたけれど、鼻で笑ってレーナを馬鹿にしたような薄ら笑みを浮かべてテーブルに頬杖を突いた。
どうせ、出来るわけもない。そんな笑みだった。
「前回は、皆様の演奏を聴くだけになってしまい申し訳ありませんでした。まだまだ、未熟で拙い演奏にはなりますが披露させていただきます」
彼女たちと同じように一言添えて、ハープの弦をはじく。
初歩的で簡単な曲を選んだので、熟練である彼女たちの演奏には届かないが、楽器の演奏の初学者として出来ることはこの程度の事だ。
無理をして失敗するよりも簡単でもしっかりとした出来の方が印象もよいだろう。
少し緊張して、普通よりもテンポの速い曲になってしまうが何とか最後まで演奏しきることができる。
「……」
「……」
終えて顔をあげると彼女たちはルビーの様子を窺うように見たり、どういう反応をしたらいいのかと、一瞬の間が生まれる。
しかしリリーが一番に手を叩いて拍手をする。その手についている指輪はキラリとした光を孕んでいる。
リリーの拍手につられるように、彼女たちも小さく拍手をして、レーナの演奏を認めてくれる。
ただ、その瞬間、ルビーの目がギラリと光って彼女はテーブルに手を付いて立ち上がり、ずんずんとレーナの方へとやってきた。
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