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40 後押し
しおりを挟む帰りは彼らを護衛しながらも戻ることになり、アルフは喜んで外を走っている。
行き同様に父と母とともに馬車に乗ったが、行きに気まずくなった前例があるので、父は少し慎重に切り出した。
「それにしても、まさかリオ王子殿下がエリアナに求婚するとは……」
「そうね。でも実際、エリアナが助けに出たからこそ無事にことが済んだともいえますから……」
父と母は会話をするようなそぶりをしながらも、エリアナの反応を窺っているらしかった。
リオ王子はきっと父や母にもエリアナの事を言ったのだろう。
しかしどうしようってまさかよその国に、エリアナを嫁がせてしまおうと考えているのではないだろうか。
……だとしたら、悲しい。
「あの方は何をしに来てるつもりなんだ? ソラリア王国の優秀な転生者を娶れると思っている時点で、人選を間違ったかもしれんな、公爵夫人」
「ええ、そうですね。エリアナには、生まれた時からカイル王太子殿下という立派な方がいるのですから、たかが聖女が横やりを入れたところでその運命は変わりようがないというのに……」
しかし続けて言われた言葉にエリアナは首を傾げた。
……私とカイル??
「やはり、聖女をこちらによこした理由に齟齬がある……というか価値観の違いがあるのだろう。今回は聖女の件についての話し合いがあるという名目で呼びつけたが、お礼でも言われると思っていかねないな」
「だから、浮ついたことを言っているのでしょうね。……けれどエリアナ……あなたがあの方に惚れてしまったというのなら話は別です」
それから、ふいに話の内容はエリアナの事になった。
「あなたは、カイル王太子殿下とはあまり仲睦まじいような様子ではありませんからね、それに比べてリオ王子殿下とは手もつないでいましたし、実際はいかがですか?」
エリアナはたしかに、彼を連れ戻すときに手を引いていたし、彼は好人物だと思っていたので、多少好意的に見ていた気もする。
しかし、きちんと話をしてみるとその気持ちはがらりと変わって今では正直接したくない相手だ。
「……亜人に差別意識がある人はちょっと……」
素直に母にそういうと、彼女は目を細めて笑った。
「そうですよね、やはり国を隔てると価値基準も変わってきますから、エリアナが告白を受けてあの方に惚れているかもというのは暴論でした。わすれてください」
「となれば、話は早いな、さっさと聖女の真の姿を暴き出し、彼やその周りにいる騎士たちを証人にして正当なる罰を与えることとしよう」
「随分、子供たちを待たせてしまいましたが、これでやっと、穏便に事態が収束しそうで安心しました。
エリアナも苦労を掛けましたね。デルフィーナ王妃殿下と協力してバランスをとるようにはしていましたが、やはり貴族たちの中には思惑を持っている人が多くいますから」
彼らの会話にエリアナは、キョトンとしてしまった。
しかしきちんと考えれば何も不思議ではない。
オールストン公爵も言っていた通り、国王陛下と動いていたのだから、もちろん聖女のことに対応……つまりは彼女を排除するために動いていたのだ。彼らがこういうふうに言うのは至極当然のことだろう。
むしろ遅かったまである。
けれども、なんだかそのことについてはあまり実感がなくて、エリアナは本当に仲がいいアリアンナや従者たち以外には価値がないと見捨てられてしまっていたのだと心のどこかで思っていた。
「……お父さま、お母さま」
だからこそ行きの時に彼らの会話を勘違いしてしまったのかもしれない。
勘違いだったと実感するために改めて聞いてみた。
「私はカイルと一緒になる運命だったと思いますか?」
「……」
「……」
「婚約者を奪われるのは運命だったんじゃないかってずっと思っていて、あの人は私と別れるときに酷い事も言ったし、嫌われて奪われて一生取り戻せない事が運命なのかと思いました。でも……私はそれは違うって思いたいんです」
「……もちろん。俺たちは、お前たちの絆を信じている。カイル王太子殿下の愛情も、お前の彼に向けるまなざしも、今まで積み重ねてきた時間もすべてがその運命を形作るものだろう」
「安心していいと思いますよ。あなたのその思いは、一方的なだけのものではありませんから」
エリアナの唐突な疑問に彼らはとても親らしく、エリアナたちを見守っていたからこそ言える言葉を言ってくれた。
その言葉は優しく背を押してくれるみたいで、誰に何を言われようとも、進んでいいのだと思えた。
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