婚約者を奪われるのは運命ですか?

ぽんぽこ狸

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53 計画通り

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「それで結局、めでたしめでたし、ってわけか?」

 アリアンナに一連の事情を説明すると、彼女は最後に少し退屈そうにそういった。

 それにエリアナは笑って「そんなとこだね」と返す。ガゼボの外ではアルフが花壇を縫って元気に走り回っていた。

「それにしても、話を聞いた感想を言うなら、エリアナとカイルはまったく別の次元であたふたしてたんだな」

 お皿の上に置かれたケーキをアリアンナはフォークで崩して口に入れつつ言う。

「別の次元?」
「そー、カイルはエリアナの事を守ることで頭がいっぱいで、エリアナはカイルと自分との関係性で悩んでたんだろ。でもまぁ、丸く収まったならそれが一番だな。ベルティーナが俺の義姉になることもないしな!」
「うん……でも同じ転生者だったなんて、びっくり。転生者だったならだからこそ、常識的に考えてあんなことしたらただじゃすまない事もわかってたはずなのに……」
「だから、普通じゃなかったんだろ。そういう人間は前世にだっていたはずだぜ……朝のニュースとかに」
「朝のニュースかぁ……」

 前世だったら、都内某所にて男性が刺傷、犯人の女は現行犯逮捕。という具合になるのだろうか。

 だとしても、いつになるかはわからないが処刑を前提に、収監された彼女の罪はエリアナから見ると少し重すぎるような気がする。

 しかし、この時代にはこの時代のルールがあり、カイル自身もベルティーナを排除するためにそれを狙っていた可能性も否めない。

 だから彼女はまんまと策にはまってカイルに手を出して、取り返しがつかなくなった。

「……でも、やっぱり死刑はなぁ……」
「いやいや、考えてみろよ。王族への不敬罪に、殺人教唆、詐欺だろ。そもそもカイルは、死んでてもおかしくない傷を負わされたんだろ? ほぼ殺人だろそんなの。人殺しをしようとしたんだ、殺されたって文句言えねぇだろ」
 
 アリアンナはエリアナの言葉にすぐにそう切り返してくる。

 カイルのギフトについては公表することはできないので、そういう事になっただけでカイルの傷はあの後、ものの数十秒で傷口がふさがり、彼曰く「なんともない」らしいのだ。

 ……転生者の持っているギフトは、前世で果たせなかった願いを果たすためのものだっていうけど、それにしても健康を通り越しちゃうとか……よっぽど強い思いだったのかな。

 深く聞くことはしていないが、エリアナは改めてカイルの事をそんなふうに思った。

 けれども、その力がなければ死んでいたっておかしくなかったと思う。あの量の血が出ていて、エリアナはすぐに医者を呼ばなければと思ったが、実際問題アレに対応できるのは魔法使いだ。

 それでも間に合ったとしてもぎりぎりのレベルだったと思う。

「そうだね。そういう怖い人はいないでほしい」
「ああ、それでいい。転生したからって、何も殺伐とした世界でバトルとサバイバルを楽しまなくたっていいだろ。のんびり行こうぜ、エリアナ」
「うん。のほほんと楽しく生きてきたいよ」
「……そうだな。ところで言ってて思い出したんだが、お前の旦那様、俺に対する視線が厳しくねぇか」

 ふとアリアンナは話を切り替えて、エリアナに少々ぎこちない表情で言った。

 それにエリアナは何のことかと考えてから、ポンと手を打って納得した。

「それは、多分、嫉妬っていうか心配っていうか……なんだろう、束縛っていうのかな。あの人さ前世はまったくそういうの無かったんだけど、反動かな? ってぐらい今は束縛されてるんだよね」
「おうおう、惚気か? にしても俺、今は女なんだが」

 先日もカイルの回復祝いに開かれたパーティーでも、大体ずっとそばにいて、一時たりともカイルはエリアナのそばを慣れることはなく、それを無視して話しかけてきたアリアンナ以外は、エリアナの近くに男の子は寄り付かなかった。

 もちろんパーティーの主役なのでカイルはひっきりなしに挨拶をされるのだが、エリアナはその傍らにちょこんと座りこんでジュースを飲むだけの時間を過ごしていた。
 
 まさかこんなに彼が束縛するタイプだったとはとても意外であり、前世では大人しくて主張がまったくなかったので、多少なりとも好かれているのかという疑問があったりしたのだが、今はそんな気持ちが微塵もなくなった。

「そうだけど……ほらあの時、婚約破棄されてすぐの舞踏会でも、今までもアリアンナはずっと私に手を貸してくれるし、何よりかっこいいから、警戒してるのかも」
「かっこいいって……そんなこと言っても何も出ないぞ」
「ふるまいからにじみ出てるっていうか、フィルが本気で惚れちゃうのも納得!」
「やめろってぇ、なんだもう急におだてやがって」

 彼女はそんなふうに言いながらも、まんざらではない様子で髪をさらりとかき上げて、自慢げな笑みを浮かべる。

 長い耳がピコピコと動いていてかっこいいというより可愛らしい。

「なんだよ、またなんかお願い事か? 聞いてやらんでもない」
「ううん。そうじゃなくて、しばらくの間は少しカイルがジトッとした目で見てくると思うけど、変わらず友達でいてねってそれだけ」
「……なんだ謙虚だな。そんなことで態度変えるかよ。むしろ、意識されて気分もいい」
「そうなんだ?」
「ああ、前世からの運命の相手ってだけで慢心して適当やりやがったら腹立つからな。警戒してるぐらいでちょうどいいだろ」

 そういってアリアンナは、計画通りだなんてほほ笑んだ。強気な笑みは、言った通りかっこよくてエリアナはこれで関係が変わることにならなくてよかったと思うのだった。


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