悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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早期発見って大事……。2

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 放課後、寮に戻ってからヴィンスに座学を教えつつ、私は今日の出来事をノートにまとめていた。現在の状況は非常に宜しくない。

 ……でも、団体戦だったら私、一応魔法は使える……のかな?あ、私の魔法玉の事、先生に相談しようと思っていたんだった。

 お昼に怒鳴られた事が、なんだかんだ自分の中では衝撃的だったらしく、すっかり忘れてしまっていた。

 明日こそ、先生に相談して……それからチームの人と、なんとか仲良くならなければ。

 でなければ、私は落第まっしぐらである。なんせ、今日の授業で聞いたのだが、実技で好成績を残さなければ、座学だけでは、進級のためのバッチが貰えないらしい。

 ヴィンスはなんとかなるだろう、私とは基本のスペックが違うし。うーんと悩んでいると、コンコンと扉がノックされる。

 私が動くより早く、ヴィンスが扉の方へと向かって来客を確認する。

 ……オスカーかな?……私に会いに来るなんて、彼ぐらいだろう。そういえば教室では他の生徒がいたので遠慮したが、まだハーブティーのお礼が言えていない。

 考えつつ扉の方を覗くと私の予想とは裏腹に、ヴィンスは見知らぬ子から手紙を受け取り、ぺこりと頭を下げた。

「クレア、ディナーのお誘いのようです。お相手はサディアス様のようですね、本日の夕食を共にと」
「ディナーのお誘い?え、焼肉とか?街に降りるの?」
 
 学生が行く晩ご飯と言えば、ファミレス、コンビニ、あとは食べ放題の焼肉だ。なんでサディアスが?というか本人が来いよ、なんだ人を使って手紙をよこすってどういう性格だ。

「いいえ……正式なお誘いですので、サディアス様のお部屋でという事だと思いますが」
「??……よく分からないけど、行けばいいの?」
「……そうですね……クレアがサディアス様とお話する事があるのでしたら良い機会になると思います」

 ……話すこと……は一応ある。サディアスは、チーム内の二人の女の子とコミュニケーションを取れているようだったし。それに私、彼が魔法を制御してくれたから、真っ二つにならずに済んだんだとローレンスが言っていたし……。

「行こうかな、チームも多分このままじゃまずいし」
「左様でございますか、では準備しておきますね」

 私が決めるとヴィンスは、なにやら自分の部屋へと戻っていく。手土産でも買っておいてくれるのだろうか。しかし他人の部屋にご飯を食べに行く時って何を準備すればいいんだろう。

 前世で友達の家に遊びに行った時のことを考える。
 
 ……まぁ、手土産ぐらいは持っていくのが普通だよね。それから学校以外のプライベートで会うんだから、身だしなみはそれなりにしておいた方がいい。

 でもこれらは、常識の範疇だろう。

 私の中の常識だと、まだ仲良くもないクラスメイトのお部屋、それも男の部屋に行き、晩御飯をご馳走になるというのは常識はずれの行動である。

 前世とのギャップを感じつつ、私はまた、ノートをまとめる作業に戻った。


 ヴィンスは制服ではなく従者服で現れた。それにしっかりと手袋までつけていて、やっぱり手土産らしい物も持っていた。

 時間通りにサディアスの部屋まで移動するために、貴族サイドの階段を上がると、驚いたことに、ドアのある間隔がとても広いつまり、部屋のサイズがまったく違うのだ。確かに大きな建物の割に、学年人数が少ないとは思っていたが、平民である私達と貴族である彼らの部屋が同じサイズのわけがなかった。

 ちなみに私の部屋は庶民サイドの部屋の一番端だ。
 貴族サイドは、談話室を挟んだ私たちとは反対側の階段を上がった所にあり、奥に行けば行くほど地位の高い人のお部屋らしい。

 そして、私がそちらへ行く機会はまったくなかった。

 実際に階段を上がってみると、床にはカーペットが敷き詰められていて廊下の所々には絵画や謎のオブジェが飾られている。

 一番奥にはきっとローレンスの部屋があるのだろう。すれ違う貴族たちは、私のことをチラと確認するだけで、特に因縁を付けられるということは無い。

「ヴィンスはこっち側の階段上がったことあった?」
「ありませんが、魔法学校時代の寄宿舎も同じ作りでしたので、さして目新しさはありません」

 なるほど、それなら寮内の説明の時に、二階以上の部屋は個人の部屋があるとしかベラが案内しないのも頷ける。

 廊下を歩いていくと、くだんのサディアスの部屋があり、そこには淑やかなメイド服にも似た服を着た見知らぬ女子がおり、私を見て恭しく頭を下げた。

 ヴィンスが貰った手紙を彼女に差し出し、確認して、それから扉を開く。そこには、部屋の中だと言うのに廊下が続き、女の子に案内されてついて行けば、突き当たりの部屋へと通される。

「お待ちしておりました……クラリス様」

 そこにはカッチリとした仕立ての良いジャケットを羽織って私に頭を下げるサディアスの姿があった。

 …………クラリス様……あぁー、なるほどな。この人クラリスの知り合いか。そんでもって私を幽閉される前の身分で扱うつもりな感じか。

「本日は御足労いただき、感謝いたします」

 どうするのが正解だ?……多分、私すぐにボロが出るぞ。それはダサいよなぁ。

 一応の返事として私も丁寧に返す。

「こちらこそ、お招きありがとうございます」

 私が頭を下げると、ヴィンスがサディアスの後ろに移動していた女の子に手土産を渡している。あ、このタイミングでその子に渡すんだ。なんだか本当に偉い人になった気分だよ。

 でも、どういう意図があるにせよ、話をしに来たんだ。このままでは、話しづらい。そして、とても面倒くさい。

「……で、私、今はその名前じゃないんだけれど、ご存知ない?」

 サディアスの意図が分からない以上は強気に出た。悪役令嬢フォルムなので自信は満々である。



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