悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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早期発見って大事……。4

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 ……変態かな。

 心做しか呼吸が荒いような気がした。私の目線が一瞬で軽蔑になったのにサディアスは気がついたようで「あっいや」とすぐに訂正する。

「……やはり、あんな大怪我を負わせておいて何も咎められることがないというのも納得が行かなくてな」
「あぁ、そういう事……でもサディアスは悪くないでしょ?貴方が加減してくれなかったら、真っ二つだったって……聞いたよ」

 ……危ない、ローレンスに聞いたと言いそうになった。彼とのつながりというかそういう物を表に出していいのかわからないので言わない方がいい事だろう。

 ふぅと息をついて、サディアスの表情を伺うと彼は「真っ二つ……」と復唱して、うっと口元を押さえる。

 それからガタンと立ち上がって表情を歪めた。

「……サディアス?」
「そうだ、それに、仕方がなかった……っはずだ……俺は、悪くない」
「その通りだけど……大丈夫?」
「治っている、問題ないはずだ……少し失礼する、クレア」
 
 そう言って彼は、お魚料理を食べる私の頬を、感触を確かめるように触った。

 咀嚼するのをやめて、彼を見つめるが、じっとこちらを凝視しているだけで、いつまでたっても手を離すことは無い。とりあえず咀嚼を続けて料理を嚥下する。

 彼が触れているのは、私が怪我をした方の頬だ。
 手が異様に冷たく、よく見れば眠れていないのか隈がうっすらと付いていて少しやつれているように思えた。

「サディアス、貴方もしかして私を怪我させてびっくりして怖かったの?」
「……驚きはしたが、恐ろしいなんて感情はなかったな。ただ、ひ、人の骨が折れる音だとか、怯えるクレアの頬が……っ」

 彼は一層表情を歪めて、奥歯を噛み締めて何かをこらえる。
 
 ……あれだけ血が出ていたんだから、間近でそれを見てしまったサディアスがトラウマを植え付けられてもおかしく無いのかな。……でももしかして本人は自覚がないのかな?

「無理しなくていいんだよ、サディアス。トラウマになる人だっているって大丈夫だよ」
「いいや、そんなものはない、クレアとの心情的な蟠りが、あるから、これは、君の元の権力に物怖じして……だな。……俺は、グローブ伯爵家の長子として、魔法使いになる、義務があるんだ。そんな妙なトラウマがあっていいわけが無い」

 喋っている方が落ち着くのか、サディアスは私の頬に触れたまま話を続ける。

「俺は、クレアに怪我をさせたあと、もう一試合するように教師に言われたんだ」
「うん」
「その時、一切攻撃が出来なかった。その後も放心状態で、懇親会では入るはずだったチームから抜かれた。それが今のチームにいる原因だ」
「あぁ、そういうことだったんだ」

 それはもはや、トラウマを認めているのでは。
 
 自覚はしているけれど、認められない理由があるという事を言いたいのかな?確かに、進級するためには必ず実技が必要だと言われているのに、試合が出来なくなってしまったら彼にとっては大問題なんだろう。

「ねぇ、ヴィンス。ヴィンスはコンラッドを昏倒させた時なにか思った?」
「……特に何も」

 私が知っている戦える人代表のヴィンスに聞いてみたが、あまり参考にならない。それにものすごく当たり前の事のように答えるで少し怖い。

「昏倒させるぐらいなら……俺だって経験がある。ただ」
「いいよ、思い出さなくて」

 また、なにか自分で言って、自分のその言葉で具合が悪くなりそうだったのでサディアスの発言を遮る。
 それに彼はまだ私の頬を触っているのだ。腰が痛くなりそうな体勢をしているくせにブレずに、冷たい手で私の頬を包みこんでいる。こんな状態では晩御飯どころじゃないだろう。

 普通、こう言うトラウマ的な事には、近づかないのが正解だ。不用意に手を出すと悲惨な結果を招くことがある。ただ、そうも言っていられないのだろう。この学園にいる生徒は、大部分がとても真面目に魔法使いを目指している。

 チームの女の子二人もそうであるように。

 だからこそ、諦めて別の道を探したら?とは簡単に言えない。

「サディアス、とりあえずソファーにでも移動して、スッキリする飲み物を飲むなんてどう?」
「……そうしよう」
 
 サディアスは従者の女の子を振り返ってあとは任せるとばかりに手を振った。
 私は彼の後ろをとことことついていく、すると私室?というか寝室というかな場所に案内され、二人がけのソファーに彼が座って、私を手招きする。

 ……隣か~。いいのかなこの人。貴族ってほら、色々対面とか気にするんじゃないのかなと思ったが、原作のことを思い出す。

 ララは平民だからという理由で、誰彼構わず、スキンシップしていたが特に咎められている様子はなかった。そんな彼女とは違い、クラリスはそれをはしたない、低俗だといい、本人も他人と気軽に触れ合うことを良しとしていなかった。

 つまり私が平民だから、距離感などなんでもいいんだろう。それに男女だからどうこうというより、もはや、気分的には医療行為だ。

 私も同じチームの彼が不調だと言うのは、大きな損害だと思うし。




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