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前途多難……。13
しおりを挟む……私がジョーカー。
異端な存在。なんとなく中二病的なニュアンスのある言葉だが、妄想や設定ではない。
確かに、私が内輪の問題に目を向けすぎていて、放置している事はある。
猫になったクラリスの事、原作の続きの事、ローレンスの目的、本当に私は魔法使いになれるのか、チーム以外の同学年に私がどう映っているのか。未だに続いているいじめ。
問題は山積みだ。どこから何が動いていけばいいのか分からない上に、間違えればいつ私は排斥されてもおかしく無い。
「……それでも、私は、一人一人の感情とかそういうものを優先したい」
カードを手に取る。道化が書かれたそのカード。ババ抜きでは最後に持っていた人が負ける。まぁ、でも切り札とも言えるし、ポーカーではワイルドカード、なんでもなりたい者になれる縛られないカードだ。
願ったり叶ったり。立場が無いということは、なんにでもなれるという事だ。
「……俺は……知らないからな。やれる事はやった」
「うん」
「邪魔をしたのは君だ。俺は悪くない」
「そうだね」
私がジョーカーのカードをヴィンスに渡すと、ヴィンスは手早く、カードをマーク別により分けて、数字順に並べる。几帳面だなと思いながら、私はサディアスの方を見ずに言う。
「シンシアの感情も、チェルシーの感情も、無視したくない」
「真っ向から向き合って、それで傷がつくのは君だけだろう」
「ついてないよ。……それに、サディアスの感情も私は無視しない」
少し自信があった。サディアスが無理をして、最善策を取ろうとして取り繕ってることを察せている自信だ。
私の言葉に、彼は怪訝な表情をした。
「サディアスは繊細だよ。悪役は似合わない、貴方は一歩引いて物事を見てる分、色々気苦労が多くて、立場のある人だから一つの行動をするのだって決意がいるんでしょ、責任感も強くて真面目」
「君に俺の何がわかる」
「わかるなんて言ってないよ私、私の中のサディアスはそういう人間だってこと。だから、シンシアをああやって追い詰める事で、どうなるかもわかっていた。わかっていてもその方が利点が大きいと考えて、サディアスは自分の感情を無視した」
「……」
サディアスは怒るでもなく、また眉間に皺を寄せる。
「本当は、あんな事言いたくなかったんでしょ」
今日は俯いていることが多くて分かりづらいが、顔色が悪い。決闘の時……というかまだ、昨日の事だが、サディアスには負担をかけてしまっている。
……トラウマ大丈夫かな?
心配になって手を取る。相変わらず冷え性かと思うぐらい手が冷たい。
……冷たい手だなぁ。手が冷たい人ほど心が暖かいと言うのは本当だろうか。
暖かくなるように両手で包み込んで、自分の体温を移す。
「…………あつ」
「??」
「分からないのか……?魔力が漏れてる……暖かいが、変な感覚だ」
言われて集中してみると魔力の流れが感知できる。
……魔力って魔法玉を通さないとこんな感じなんだ。なんだがこう、湯気みたいな感じだ。発生した直後は暖かいが、その後空気に溶けて霧散すると何も残らない。
確かにこれじゃ魔法は使えないだろう。
……まぁ、冷たい手を温めるぐらいなら丁度いいだろうが。
私が魔力を意識すると、光の波が生まれて、私の想像通り、それは湯気のようにキラキラ立ち上る。
「何がしたいか分からないんだが」
「あー、あれだよ。セラピーだよ。緊張がほぐれたり、自律神経が整ったりするらしいよ」
「他人に魔力を込めるとか?……聞いたことない」
「いや、手を温めるとって事だけど」
彼のもう片方の頬杖をしている方の手も引くと、不快では無いらしく、私の手に手を重ねる。
「わざわざ、魔力で温める意味はあるのか」
「無いね。まぁ、気分的な問題だよ」
「……やっぱり、常識外れだな君は」
「そう?」
サディアスは、少し前かがみになって、私の手を握る。
すると、背中にザワっと寒気がするような悪寒が走って、急に不安になる。サディアスは私に鋭い視線を向けて、それからふっと表情を緩める。
「魔力ってこういうものだと幼い頃から教えられたんだが、解釈によるんだな」
そう微笑まれて言われると、危機感のようなものは無くなって、ただ私のキラキラとした光だけが残る。
「……暖かい……」
しみじみとそう言って、それから、サディアスは無言になった。私も特にこれ以上何も言うことは無かったので、黙ってカイロ係に徹する。
しばらくして彼はやっぱり寝落ちした。
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