悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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私も大概、トラブルメーカー……。5




 ──────と、三つの固有魔法系統が主流になっています。それから、このグループには特殊魔法について深堀して説明しておきましょうかね……」

 ブレンダ先生が私達を見て、面倒そうにそう言った。理由は正直よく分からないのだが、きっとディックがいるからだろうと思う。

 それに私たちが、固有魔法の授業の最終グループの生徒だからだろう。しかしなぜ、みんなまとめて授業をしなかったのか不思議だ。こうして何度も同じ説明を繰り返すのは重労働だろうに。

「特殊魔法は、それぞれが生み出す固有魔法の中でも特殊であり稀、決まった形のない、本人しか使うことが出来ない魔法です。この学年で言うと、ララは、己の武器を生成することができ、ディックは見つける、知るという事に特化したサーチが既に顕現している特殊魔法ですね」

 先生は、魔法玉を取り出して、私たちに見せつつ魔法を使う。

「簡易魔法玉を伝っていた時から、あなた達の得意魔法、魔法を使う目的そういうものが蓄積され、今の魔法玉のコアを生み出しています。仲間と共に魔法を使うことが多ければ、チーム戦を優位に切り抜けられる固有魔法を得る魔法使いもいます」

 私も自分の魔法玉を取り出した。特に私の魔法玉は、固有魔法が色濃く出るようになっているらしい。

「ある魔法使いは仲間の安否、現在地を知ることが出来るディックに近い能力を持っていましたし、エリアル先生は自分の至らない部分を補うために、他人に声を伝えることが出来る固有魔法があります。自分の補いたい部分を魔法で、補強できるのも固有魔法の利点ですね」

 ……へぇ、じゃあエリアル先生は普段からそれを使っているのかな?てっきり、魔法で皆が身体能力をアップするのと同じで、身体強化の魔法を使って小さい声をおっきく頑張って出しているんだと思っていた。

「そういった、特殊な魔法は、戦闘だけでは技量を測りきれない場合があります。その場合に役立つのが魔法査定ですね、ポジション別クラスの担任に自分の固有能力をアピールして、進級するべきだと判断されるとバッチが貰えます」

 ……あ、それは聞いたことがあるっ、ヴィンスが言っていたやつだ。

「役にたつか、認められるかよりも、自分にあっているか、どんな魔法使いになりたいか、それを念頭に置いて、方向性を考えて練習をしなさい、いいですか?固有魔法は、正解、不正解、勝敗も無いのです、よく自分と向き合い決めてください」
「はーい」
「はい」
「はい」

 口々に返事を返して「質問はありますか?」というブレンダ先生に「ありませーん」と皆が口を揃って返し、彼女はまた一番最初に説明したグループへと教科書を持ったまま去っていく。

 もしかすると、一人一人しっかりと見るために、時間差を作る必要があったからグループに分けて回っているのかもしれないな、と仮説を立てつつ、振り返れば、皆それぞれ難しい顔をしていて真剣に悩んでいる事がわかる。

 ディックだけは、固有魔法を変える気も無いようで、魔法を使いつつ思案するオスカーにちょっかいをかけている。

 ミアとアイリはお互いにお互いの事をじっと見てそれから「私に足りないものってなんだと思う?」とはハモった。

「ッ、あははっ同じこと考えてた!ミア」
「うん、まったく一緒だったね!アイリ」

 そう笑いあって、心底楽しいというように手をぱちぱちしている。

「……ミアとアイリは、いつから仲がいいの?」
「うん?いつだっけ?アイリ」
「懇親会の時に初対面だったよね、ミア」

 これだけ息ぴったりなのだから、小さい頃からの幼なじみなのかなと思い聞いたのだが、この学園で初めて出会ったらしい。すごい事もあるもんだと思う。

「そっか。すごいね……固有魔法の方向性は、まだ決まって無いんだよね?」
「そうなんだよ、ね、アイリ、」
「うん、ミア。……今、補いたいものって難しいよ、だってもう魔法使いを目指し初めて随分経つし、ダメなところは頑張って、自分の力で努力して埋めてきたもの」
「うん、アイリ、私もそれは同感。頑張って体力作ったり、魔力切れで倒れたりしながら、自分の戦い方を決めてきたから、欲しい力って上手く思い浮かばないよ」

 二人は少し感慨深そうに自らの魔法玉を見つめる。そうだろうか。長年目指してきたからこそ、自分の力が固まって、ある程度みんな同じ土俵に立つ。

 そこから、自分の目指す方向を決めるというのは、とても理にかなっているような気がした。

 それに二人は出会って一ヶ月でこんなにピッタリ揃って仲良しだ。先日見に行ったアタッチメントには、色々と仲間と共有できるものがあった。
 そんな風な、固有魔法も素敵だと思うんだ。

「今のままで足りないものが無いって思うんだったら、新しく欲しいって思う力でもいいんじゃない?」
「新しく欲しい……ミアはある?」
「そうだね、アイリ……特殊魔法はかっこいいけど、使ってる自分も想像できないし、クレアはどんな魔法を想定してるの?」

 私は自分の魔法玉を見せた、正しくはアタッチをよく見て欲しかったのだ。買ったばかりのピカピカのそれを指さして言う。

「アタッチには、チームメイトに影響し合うような魔法があるでしょ?二人は相性ピッタリみたいだから、そういう風にお互いに作用するようなものがいいんじゃないかな」
「例えば?」
「どんなのがあると思う?」
「…………」

 言われて首をひねり、スマイルアタッチに置いてあった商品を思い出す。お互いの場所がわかるようにする?それとも、二人の魔法を均質化してピッタリ揃った攻撃が出来るようにするとか。

 チームメイトの攻撃が当たらないようにするなんてのもあったが……あれはいらないだろうな、そもそも、たくさん練習をしてそういう事故が無いようにするだろうし……。

 そこまで考えて、ものすごく奇抜な作戦を思いついた。対策も難しそうで、絶対に唯一無二だと思う。

「……お互いの攻撃が当たらなくなるような魔法はどう?」
「??」
「?」

 二人は揃って首を傾げる、やっぱりあまり必要ない魔法だと思ったらしい。

「事故防止って事じゃなくてさ、ほら、仲間を無視して攻撃が出来るじゃん。その攻撃でも相手は当たるでしょ?極論言っちゃうと、対面してる相手に一列でミアとアイリが並ぶでしょう、そしてミアの背後からアイリを素通りして攻撃するとか……強そうじゃない?」
「ミアは怖くない?」
「アイリは嫌じゃない?」

 二人はハモってお互いの心配をした、お互いに目をぱちぱちと瞬かせて、ふと魔法を起動する。
 視線を交わして、それぞれが私の手を片方づつ掴んだ。

「なんか、不思議な感じだね、アイリ」
「うん、私も同じだと思う、ミア」

 彼女たちは、光を孕む瞳を一瞬もお互いから離さずに、ゆっくりと互いの手を相手の手に近づけた。
 私はわけも分からずに、三人で輪になって手を繋ぐ状態で何をしようと言うのだろうと、じっと二人を見やる。

「クレアは出来ると思う?」

 ミアの方が私に聞く。もしかして私が提案した特殊魔法だろうか、そんな急には無理じゃない?!っが本音だが、やろうとしている手間、無理だと言うなんて出来なくて頷く。

「ありがとう、クレア」

 ゆっくりと指先が近づく、二人の魔力の余波のようなものに当てられて、私まで魔力を魔法玉に流し込んでしまうけれど重複使用が必要なので起動しない。
 しかしこれだけ余波があるということはそれだけ二人が、多く魔法玉に魔力を注ぎ込んでいるのだろう。



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