悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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私も大概、トラブルメーカー……。6





 息を飲んで見守ると、指先はふにっと触れ合い、失敗かと思われたが、ふわんと謎の歪みが生まれ、CGのように二人の手が交差する。

 目を疑うような光景で、二人を見れば、なんとも言えない高揚した表情の二人と目が合う。

 手をゆるゆると動かして相手に触れないこと、そして、私の手を握って、二人以外には触れられることを確認する。

「……ミア、これじゃない?」
「アイリ、私もこれだ!って思う!」

 納得の行く魔法だったようで、二人は魔法をといて、私の手を離し、お互いを抱きしめあった。

「これしかないって思うぐらいっ、これってすごいよアイリ!」
「本当にっ、信じられない、何だかあなたに出会えて良かったとすら思ってる、ミア!」

 二人はお互いの存在を確認するようにワチャワチャと抱き合って、頬に触れたり、髪に触れたりしながら、嬉しそうに笑った。

 すごいスキンシップだなぁと思いながら見ていると、アイリに手を引かれて、その輪に加わる。
 私には関係がないような気がしたが、そんなことはお構い無しのようで、うふふと笑う二人に揉みくちゃにされる。

「……よ、良かったね?」
「うん、私たち今最高の気分、……あ」
「ミア?……う」

 そして二人は気の抜けるような声というか、吐息を吐いて、それから抱きしめていた二人が同時に、膝から崩れ落ちる。

「っうわぁ!」

 ……ま、魔力の使いすぎか!

 何とか支えようと、グッと踏ん張って、二人の腰を支えるけれど、どう考えても重量オーバーである。足がプルプルと震えて、もう倒れる寸前だ。

 ……だ、ダメだ!もう!

 私の両手からふっと重みが消える。

 二人が地面に頭をぶつけるところを見たくなくて、反射的に瞑ってしまっていたが、倒れる様な音はしなくて恐る恐る目を開けた。

 すると、子猫をつまみ上げるように二人の襟首を掴んだオスカーがいた。
 彼は何食わぬ顔で、私を見て少し困ったように笑顔を浮かべた。

「魔法はいつでも使えるようにしとけよ~、クレア」
「……うん、オスカー、ありがとう。助かったわ」
「おう……じゃあ俺、二人を先生んとこ置いてくるわ」

 オスカーがチラリと練習場の入口付近にいる、助教諭の方を見やる。
 私も見てみれば、シートが引かれていて既に意識を失った何人もの生徒が、寝かされていて、まるで野戦病院である。

 彼は二人を両脇に抱え直し、荷物を運ぶようにして歩いていく。
 
 ……こんなバタバタ、人が倒れる授業って……やばいな。

 今度は誰が倒れるか分からないので、ポケットから簡易魔法玉を出して首から下げる。

「……クレア、君の固有魔法は決まってるの?」

 すると、オスカーと先程まで一緒にいたディックが、話し相手がいなくなったからかこちらにやってくる。私は、振り返って、ディックと目を合わせた。

「うーん……ミアとアイリに相談しようと思った途端、ばったりいっちゃったから、まったく」
「ふぅん……僕が見てあげようか」
「魔力、流さない?」
「だから、もうアレはやらないんだって!オスカーも君もしつこいな」

 ディックが少しご機嫌ななめというように、ふいっと視線を逸らす。

 見るというのは、サーチで私の魔法玉を見てくれるという事だろう。ヴィンスの得意魔法なんかも当てていたし、私の固有魔法への取っ掛りになるかもしれない。

「ごめんね……お願いしてもいい?」
「ふんっ、初めからそういう風に素直に言ってよね」

 彼も魔法玉を出して魔法を使う、私は彼のまんまるのコアが綺麗に白色の光に染まるのを何となく見つめる。

 このコアのカラーリングというのは、どういうふうに決まっているのかという疑問が浮かんだが、色はさして問題では無いような気がした。

 問題は光だ、心地よく揺蕩う魔力の光、それが瞳にも宿って魔法が生まれる。
 ディックは目を瞑って、私の魔法玉を持ち上げる。
 
 遠いと見えづらいだろうと思って、一歩、彼の方へと踏み出した。すると、あまり近くで見ることがない、人の魔法玉をまじまじと見ることになる。

 何だか今日は、異様にそれが気になったが、ぼんやりしている場合ではないので、別のことを考えることにする。

 私の固有魔法についてだ。先生は、足りない部分を補ったり強化したりするものだと言っていた。

 その方向性で行くと私が補うべきなのは、簡易魔法玉の助けが無くとも魔法が使えるようになる事が先決のように思える。
 それなら、クラリスが私に触れた時のようにとまでは行かなくても、自分の魔法を自分の力で使うことが出来るだろう。

 ……自立するというのが大事だ、出来る限り力が欲しい。クラリスもそれを第一に考えろと言っていたし。

 でもそれと同時に、本当にそれだけでいいのかという気持ちも同じように存在している。だって、それでは、私の魔法は会心の一撃ということでも無く、ただただ皆に追いつくためだけの、相変わらず劣った存在ということに代わりがないのだ。

 それに、補うという事にしっくり来ない。
 
 補ったって、きっとしっくり来ないのだ。先程、二人が魔力の残量まで忘れて夢中になって高揚していたような、そういう自分にとって特別な魔法じゃないと思う。

 そう、私は私のなりたいものになりたい。足りない自分を補強するだけではなく、例えば、クラリスが私に手を添えた時のように、ピッタリしっくりくるような、同じ補うでも他人を補える人間になりたい。

 ピッタリしっくりくるような、クラリスと共にこの体がある時のようなものを他人にも与えられる人間になりたい。

 あ、と思う。そうなれる可能性は、ちゃんとこの世界の私は秘めている。そして、私はそれを望んでいる。

 目の前で煌々と光を放つ魔法玉。

 他人の魔力は嫌いだけれど、信頼のできる人間のものであれば、それなりに、心地いいような気がする。ディックは面倒な人だけど、悪い子じゃない。

 今だって私を気にしてくれている。
 ……単に暇だったということも多少はあるだろうけれど。


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