悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

文字の大きさ
110 / 305

頑張ったんだけどな……。8




 開始位置である、東側の地面に描かれた大きな円の中に入って、それぞれ魔法を起動した。私はギリギリで魔法を使いたいので、まだ起動はせずに飴玉を口の中に放り込む。

「……君って……そんなに甘党だったのか?」

 必死の形相で飴玉をもこもこ食べ続ける私に、サディアスは大きな大剣を腰に携えてそういった。
 
「うん、甘党」
「そうか、今度からディナーに誘う時は、砂糖をたっぷり使った物を用意させるな」
「うん……うん?いや、太っちゃうからやめて?」
「?」

 腑に落ちないといった感じでサディアスは首を傾げつつ魔法を起動する。すらっと剣を抜いて、軽く振った。今思えば、彼の剣、自前だろうか。

 ……かっこいいなぁ。

 貸出用の武器は、形は違えどデザインはすべて同じだ。握りやすいグリップのついた、装飾の少ない実用性重視の剣。それに比べて、彼の大剣は、柄の部分に真っ赤な宝石が付いていて金ピカだ。さすが貴族だな、と思いつつ、皆の武器を見ていく。

 チェルシーは貸し出し用の大剣。アタッカータイプはもっぱらこれが多い。
 敵さんチームは、確か、コーディー以外は皆アタッカークラスだったはずだ。チラリと見ていると、リーダーのコーディーから、チームの小柄な女の子に至るまで大きな剣を携えている。

 ガンガン攻め込むスタイルだよね。……あー、ちょっと怖いな。

 せめて今日の相手がチームディックだったら、まだ、マシだったように思う。ディックは初速が遅いのだ。
 そう想像してみてから考え直す。私の思惑に気がついてディックだと何らかの対策を打ってくる可能性があるので、やっぱりコーディーでよかったと思う。

 彼の性格は知らないが、クラリスの弟なのだ。きっとそれほど荒っぽい性格じゃ無いはずだ。

 うんうん、大丈夫だ。と自分を納得させて、シンシアの方を見る。今朝は指摘する時間が無かったけれど、編み込みでショートカットの横髪を耳の後ろに止めてリボンをつけている。

 ……勝負服ならぬ勝負髪型、だね!

「シンシア、それ自分でやったの?」
「!……気が付きましたか!」

 私が、自分の耳ともをトントンとしながら聞けばチェルシーがバッとこちらに反応して言い、笑みを浮かべる。
 シンシアは恥ずかしそうに「チェルシーに……」と言った。

「ど、どうしても……と言うので。私にこんな女性らしい髪型もリボンも似合わないと言ったのですが……」
「そんな事ありません!シンシアは確かに凛々しい顔立ちをしていますが、可愛いものが似合わない女の子なんていなんですよっ!」
「そうですか?そうなんですか?」
「もちろんですっ!女の子は皆、好きなものを身につけて、勝負の日にはおめかしをして、めいっぱい気合いを入れるものなんです!ね、クレアっ」
「お、おうよ!」

 チェルシーの圧に押されて、思わず変な返事をする。彼女はもうとっくに、田舎者の自分に対するコンプレックスを克服したようだ。

 今では立派なオシャレ好きなレディである。
 今度の試合の日には、私も余裕を持って起きて、めいっぱいオシャレをしたいものである。

「それに、皆に私達の仲をアピール出来ますでしょう??」

 チェルシーは複雑に編み込まれたハーフアップを止めている自分の髪に触れた。黄色のリボンが揺れていて、シンシアの赤髪に似合っている深緑のリボンを見る。
 それから私を見た。

 ……!……確かに、皆おそろいだ。……特に深い意味はないのかもしれない。でも、今日、私を助けない、見捨てると取れるような作戦をしているのをクラス全員に見られる。もしかしたらそれを、仲が悪いからでは無い、とアピールする為なのかもなんて深読みしてしまう。

「そうだね!嬉しい」
「ええ、私も」
「私もです!二人とも!頑張りましょう!」

 彼女達がとても明るく振舞ってくれているのに、自分が暗いことを言うのは、違う気がして、追求することなく無邪気に見えるように笑った。

 シンシアは片手剣を抜いて、盾の魔法を使う。
 彼女の盾の魔法は、固有魔法として定着しつつある。本来、自分を守るためだけに十分な丸い盾が一般的な基礎魔法だがシンシアのそれは、腕全体もあるような縦長で大きなものだった。

 魔法のシールドのようなものなので、たいして重さは無いようだが、動きづらくは無いのだろうか。

 私が盾をじっと見ていると、シンシアはそれに気がついて、私に話しかける。

「やはり珍しいですか?」
「え?……うーん、かっこいいと思うんだけど、扱いが大変じゃないかなって」

 固有魔法の授業があってからまだそれほど経っていないので、見る機会も少なかった。それにまだ定まって間もないということもあり、あまり触れて来なかったが、今日は何となく聞いてみる。

 するとシンシアはああ、と納得して、自らの剣をそれに触れさせる。すると、なんの抵抗もなく剣は盾を通り抜ける。

「元々、盾の魔法は敵からの攻撃のみ防ぎ、それ以外は存在していないも同然ですからね」
「……そうなんだ」

 ミアとアイリが透過していたのもそうだが、慣れないと実際の試合で痛い目を見そうである。しかし、これなら、戦闘での鉄の盾を持つことのデメリットが全て帳消しになるので、相当便利である。

「私も覚えようかな」
「……クレア……貴方はまず、自らの剣で怪我をしなくなってからにしましょう」
「う、うん」

 シンシアに真剣に止められて、やっぱりそうだよねと思う。未だに魔法を使わずに剣を持つと、フルスイングで腕を怪我したり、足にあたってしまったりと散々だ。そう言われるのも無理はない。

 私も自分の腰につけている剣に触れる。抜くのは魔法を起動してからだ。飴ちゃんを口に放り込んで魔力を確認する。

 十分の四。

 上々だろうな。
 多分一撃ぐらいだったらしのげる……と思う。
 吹っ飛ばされて、魔法玉を奪われたとしても死にはしないだろう。



感想 1

あなたにおすすめの小説

幽霊じゃありません!足だってありますから‼

かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。 断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど ※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ ※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。 挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。 だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……? 酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。 ※小説家になろうでも投稿しています

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと

淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。 第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品) ※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。 原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。 よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。 王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。 どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。 家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。 1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。 2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる) 3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。 4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。 5.お父様と弟の問題を解決する。 それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc. リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。 ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう? たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。 これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。 【注意点】 恋愛要素は弱め。 設定はかなりゆるめに作っています。 1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。 2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。

❲完結❳乙女ゲームの世界に憑依しました! ~死ぬ運命の悪女はゲーム開始前から逆ハールートに突入しました~

四つ葉菫
恋愛
橘花蓮は、乙女ゲーム『煌めきのレイマリート学園物語』の悪役令嬢カレン・ドロノアに憑依してしまった。カレン・ドロノアは他のライバル令嬢を操って、ヒロインを貶める悪役中の悪役!    「婚約者のイリアスから殺されないように頑張ってるだけなのに、なんでみんな、次々と告白してくるのよ!?」   これはそんな頭を抱えるカレンの学園物語。   おまけに他のライバル令嬢から命を狙われる始末ときた。 ヒロインはどこいった!?  私、無事、学園を卒業できるの?!    恋愛と命の危険にハラハラドキドキするカレンをお楽しみください。   乙女ゲームの世界がもとなので、恋愛が軸になってます。ストーリー性より恋愛重視です! バトル一部あります。ついでに魔法も最後にちょっと出てきます。 裏の副題は「当て馬(♂)にも愛を!!」です。 2023年2月11日バレンタイン特別企画番外編アップしました。   2024年3月21日番外編アップしました。              *************** この小説はハーレム系です。 ゲームの世界に入り込んだように楽しく読んでもらえたら幸いです。 お好きな攻略対象者を見つけてください(^^)        *****************

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。