悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

文字の大きさ
113 / 305

頑張ったんだけどな……。11


 魔力が切れちゃう、死んじゃう。脳みそが焼ききれんばかりに色々な事を考えていると、ヴィンスはおもむろに私の首から魔法玉を引っ張った。ネックレスのチェーンは簡単に弾け飛んで、魔法玉が私の体を離れていく。

 ……だめだめだめ!やめて、魔法が魔力が!!

 何?どういう感じ?どういう感情?助けてくれるの?いや、実は私が大っ嫌い?

 歯をガタガタ言わせながらヴィンスの一挙手一投足を見守る。

 彼は私の魔法玉と自分の魔法玉をカチッと合わせて、ほんの少し魔力を流した。

「あっ、あ?っ、え、はぁ?」

 固有魔法、知ってるの?言ってないのに?助けてくれるの?

 体がヴィンスの魔力を求めて、手を持ち上げようとするが痛い以外の感覚がなくて、まったく持ち上がらない。
 だめだ……やっぱり、魔力を貰えない。上手くできない。ディックに無理やり迫った時は万全だったが、今は集中もままならない。魔法が解けない程度にゆるゆると魔力が入ってきて、それが無くなったら私は意識を飛ばして多分そのまま死ぬだろうと思う。

「……クレア」
「ッ?な、なに?」  

 まったく意図の分からない行動に、半分ぐらい媚びるようにすぐに返事をした。だって、本当にヴィンスが何をするか分からない。平常時だったら適当な屁理屈が言えるが今はそんな状況じゃなかった。

「……助けてあげましょうか?」
「へ……うっ」

 頬に手を添えられた。指先が柔らかく私の頬に沈み込む。

「多分、クレアの自己治癒魔法じゃ手遅れですよ」

 ……手遅れですよ?え、どういうこと?何が言いたいの?助けてくれるの?くれないの?どっち?

 私が驚愕の表情で、あまりにも間抜けずらを晒していたからか、ヴィンスはふふっと笑う。ニコッと効果音がしそうな笑顔は、こちらに来てずっと私に向けられていた、私の安心する表情だった。

「…………貴方様は私の事を至極純粋な人間だと思っているようですが、どう思いますか?貴方様は先程問いました、私はどんな人間かと。自由にしたらどんな人間なのかと」

 彼は笑ったままそう言う。
 私は目をぱちぱちとさせて、頬をさすられながら何も返せずにいた。

「多分、クレアの想像が及ばない程、貴方様の嫌いな最低な人間だと、私は私の事を思っています」
「……」
「だから、私は今、少しだけ、都合がいいななんて思っているんです」

 ごくっと唾液を飲む。
 ヴィンスはその黒曜石の瞳を歪めて言う。

「覚えていらっしゃいますか?私が言ったこと」
「っ、でも!でもそれは!ヴィンスが、っ、ローレン、ス、から、に、逃げ場がないっから、縋ったっ、だけの、っ言葉っでしょ!!?」

 思い出す、どこか私が不自由なら、自分を望んでくれたのにと。

 そんなはずない、自分を守るためだったはずだ。そう思って行動していたというのに、それじゃあ、依存だ。必要とされる事への悪質な依存だ。

「分かりません、真に自分がそう望んでの言葉なのか、やむおえず恐怖から出た言葉なのか。そんなことは分かりません」

 ゆるゆると注ぎ込まれる魔力に、同じように血が抜けていく寒さ。
 怖くて涙が出た。

「…………ですから、クレア。今、一言、私を必要だと言ってください」
「それじゃあ、意味ない、じゃない!違う、の、多分そうじゃない!」
「では、私を必要としなければならないようなお体になるおつもりですか?」

 酷い、そんなのって、無い。どう転んでも、私が頑張った意味ってないじゃないか。

 これでも、気合いを入れて、頑張ったんだ。ヴィンスが笑っていられるように、でもヴィンスは想像以上に頑固で頑なで。

 確かにそんな鱗片は日常生活でもあったような気もすれば、無かったような気もする。実際、人としてどうかと思うが、私だって、なんだかんだ言って、サディアスの希望を蔑ろにするし、多分ヴィンスの気遣いも色々蔑ろにしているから人としての道理など、引き合いに出せないのだけど。

 そう、わちゃわちゃと頭の中で色々考えて、結局、私が望んだ結論じゃなかったが、もう仕方ないと思った。だってこれだって望みだ。結局ローレンスが居なくとも、ヴィンスはヴィンスだと言うことなのかもしれない。

 そして、いつも私は、彼に対してとてつもなく弱い。

 だって、そりゃそうだ。この世界で、私は彼を家族みたいに思って、いや、成り代わった事によって失った全ての繋がりの寂しさを彼で埋めていた。

「ッ……ヴィンス……」
「はい、なんでしょうか」
「…………た、たすけて」
「ええ、喜んで」

 仄暗い部分、狡い部分、打算的な部分、そう言うものを全部感じさせずに、彼はにっこり笑った。

 そして私はやっぱり安心が勝ってしまい。ぱったりと意識を失った。
 


感想 1

あなたにおすすめの小説

幽霊じゃありません!足だってありますから‼

かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。 断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど ※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ ※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。 挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。 だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……? 酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。 ※小説家になろうでも投稿しています

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと

淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。 第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品) ※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。 原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。 よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。 王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。 どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。 家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。 1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。 2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる) 3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。 4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。 5.お父様と弟の問題を解決する。 それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc. リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。 ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう? たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。 これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。 【注意点】 恋愛要素は弱め。 設定はかなりゆるめに作っています。 1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。 2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。

❲完結❳乙女ゲームの世界に憑依しました! ~死ぬ運命の悪女はゲーム開始前から逆ハールートに突入しました~

四つ葉菫
恋愛
橘花蓮は、乙女ゲーム『煌めきのレイマリート学園物語』の悪役令嬢カレン・ドロノアに憑依してしまった。カレン・ドロノアは他のライバル令嬢を操って、ヒロインを貶める悪役中の悪役!    「婚約者のイリアスから殺されないように頑張ってるだけなのに、なんでみんな、次々と告白してくるのよ!?」   これはそんな頭を抱えるカレンの学園物語。   おまけに他のライバル令嬢から命を狙われる始末ときた。 ヒロインはどこいった!?  私、無事、学園を卒業できるの?!    恋愛と命の危険にハラハラドキドキするカレンをお楽しみください。   乙女ゲームの世界がもとなので、恋愛が軸になってます。ストーリー性より恋愛重視です! バトル一部あります。ついでに魔法も最後にちょっと出てきます。 裏の副題は「当て馬(♂)にも愛を!!」です。 2023年2月11日バレンタイン特別企画番外編アップしました。   2024年3月21日番外編アップしました。              *************** この小説はハーレム系です。 ゲームの世界に入り込んだように楽しく読んでもらえたら幸いです。 お好きな攻略対象者を見つけてください(^^)        *****************

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。