悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

文字の大きさ
147 / 305

バーベキュー大会……? 2

しおりを挟む



 なんとか状況を飲み込んだディックは、パッと顔をあげて、それからドンッとテーブルを拳で叩いた。
 急な行動に、私達三人はディックに視線を向ける。

「……わかった!……そっか……!……っ、ああ、なんだこれ、最悪」

 それからグッと表情を歪める。
 その表情からは怒りが読み取れる。オスカーは怒っている彼に疑問をぶつけた。

「何がわかったんだ?……俺は結局、クレアはローレンスに協力する道理がねぇって事ぐらいしかわかんねぇけど」
「……エリアルは、僕、いや、僕たちに嘘をついてた、その嘘が示す事を考えれば分かるんだ!!……でもよりによってエリアルが?なんでこんな事、元々は自分が撒いた種の癖に!!」
「なぁ、ディック、落ち着け」

 グッと拳を握って怒るディックに、オスカーは宥めるように背中に手を添える。そのおかげか、ディックは声を荒らげるのをやめて、眉間に皺を寄せるだけにとどめた。それから私を見る。

「…………エリアルが言ったんだ。ローレンス殿下は確かに、この学園に害をなそうとしている。その具体的な方法は、呪いの魔法をつかってだって。幽閉されているクラリス様が、彼に協力をするはずだから、もう、殿下を…………僕ら学園側でどうにかするしかないって……そう、彼がボクらに言ったんだ」

 ……それは……おかしい。だって、クラリスは実際には、エリアルとともにいて、私のほうはローレンスに完全に協力するとは、言ってないし、つまり、学園側の人たちに、エリアルは嘘をついてだましている。

 というか、じゃあ、エリアルは学園側とは別という事?

「エリアルは、ローレンス殿下を排斥しようとしてるんだ。クレアの事を見捨てて、どうしようも無いような状態に見せかけて……」
「……」
「エリアルが、咎人になったクラリス様を手に入れるための、あの事件が、クラリス様とエリアルの共謀だったってことなら、納得も行く。クレア、君が学園側に頼れないように、君の状況を秘密にもさせているし、きっとエリアル達に協力をするとしても君は良いように扱われるだけだったと思う……」
「そうなの?」
「うん、それにこの状況だと、僕以外、誰が本物のクラリスは猫になってて、君が全くの別人だって納得すると思う?僕ら学園側の意見は結局、ローレンス殿下の思惑が達成してしまっても大丈夫なように守りを強化するという方向で話がついているんだ」

 ……なるほど、学園側の対応は決まっているんだね。
 そう考えれば、ディックが私にわざわざ話をしてくれたのは、ローレンスの思惑を阻止するという意味ではなく、本当に私の事を死なないで欲しいと思ったからだとわかる。

 学園側は、私に事情を話してしまったら、クラリスである私が、ローレンスに情報を漏らす危険性を考えて、私には何も話さない。

 そうなってしまえば、私はエリアルとローレンスどちらかに協力するしか無くなる。
 
「ただ、エリアルだけには立場的に、ローレンス殿下の思惑を阻止する命令が下っているんだ。もうそれは僕にも止めようがない。そして、こうして君に情報を共有して、君をこっち側に引き込むにしても、エリアルに阻止されると思う。君の存在がバレるのはエリアルが望まない事だから、最悪、君が消えちゃう可能性だってある」
 
 そうだろう、もしかしたら自分の嘘がバレるかもしれない爆弾を自陣営に入れるとは思えない。

「でも、無知なふりをしてエリアルに協力するのは、危険だ。エリアルはローレンス殿下が不祥事を犯したという状況が必要なはずだから、君は絶対囮にされる」
「……」
「でも、一番協力しちゃいけないのは殿下だ、だって君は完全にカティの仇だもの、呪いの力が必要だったら君は絶対に殺される」

 早口でまくし立てられて、彼の焦っている表情に私自身もなにかまずいんじゃないかという気持ちになってきて、冷や汗が出てくる。

「つまり、君は、君自身と言うかクレアは、宛もなくこの学園から飛び出して放浪するぐらいしか、僕としては窮地から脱出する手段がないって思うんだけど!……それを伝えるために僕たちにこの話を?」
「え、……えぇと」
「それとも何か別の策があるのかな?どこかに身を寄せる宛はある?とにかくこんな呑気に学園生活送っている場合じゃないよね、そっか、僕がこうして話をするまでの間にも君はいろいろと準備していたんじゃない、だから、僕の話に頷けなかったんでしょ!」

 ん、……んん?いや、まったくそんなことはない、バリバリの無策だ。そしてなんなら学園生活もそれなりに満喫している。

 私の頭が良くて、いろいろな事情を把握していたら……いや、今の話でも聞いていたら、私だって少しは逃げる手段とやらを考えて…………いただろうか。……いないだろうな。

 オスカーもディックの話に納得して、どんな策だ?という風にこちらを見る。でも、私はそんなに狡猾では無い。というか、重要な部分でも割とさし迫らないと動かないタイプだ。

 二人に向かってあははっと一応笑っておく。

「やっぱり、そうだったんだ……なら、僕らが出るのはお門違いかな」
「そうかもな、まぁ、俺はさっき話を聞いたばかりで、なんともいえねぇがクレア自身が考えてることもあるだろうし、そんでヴィンスやサディアスもいるだろ、気の回しすぎだったのかもなぁディック……良かったじゃねぇか」

 ……あ、なんだがいい感じに二人が解釈してしまった。どうしよう。なんかよく分からない部分も未だにあるのだ。とりあえずローレンスの思惑?とやらが分かったこと、それに付随してエリアルの事も聞けた。

 それなら一旦持ち帰って、作戦を練るなりなんなりすればいいのかな?

 私がそのまま何となくうんうんと考えていれば「すみません」と隣のヴィンスが声を上げた。

「お二人には、申し訳ありませんが。クレアはまったくの無策です。ディック様、少し私もお話に参加させていただいてよろしいでしょうか」
「は……はぁ?!あ、いや、話すのは、全然いいんだけどっ、無策って、ええ!?ヴィンス君ら、何も分からないクレアを放置してたの!」
「……はい、大変申し訳ございません」
「申し訳ごさいませんって……ヴィンス、お前この際だから聞くが、お前はそもそもクレアのなんなんだ」

 ヴィンスは、一旦持ち帰ろうとしていた、私とは考えが違ったらしく、私の状況を彼らに伝えた。彼の選択は割と正しいだろう、このままだと私はまた放置してしまいそうだ。
 
 面倒ごとは後に回すタイプなので、彼の一言がありがたい。とりあえず情報を聞き逃さないように、三人の会話に耳を傾けた。

「私は、元はクラリス様にお仕えしていた従者です。正しくはローレンス様から使わされていた彼女の監視役のようなものです。現在はその任を解かれ、クレアと共に学園で生活をしています」
「ん……えぇと、なんでそんなことしてたの?スパイって事?」
「わりとあんだよディック、殿下は思慮深い方だ。他国から来ている婚約者にそういう者をつけるのは稀じゃない」
「そっか、わかった。それで、今はローレンス殿下の手元から離れてるっと」

 オスカーの方がヴィンスの状況にピンと来たらしく、ディックに言い含める。それから続きを促されたヴィンスは、次に私の状況について話をする。

「ええ、ですが、その私の解任のために、クレアはローレンス様に親愛の誓いをする約束をしています」
「……なるほどそれで、バランスを取ったのか……、クレア、君は魔法の喪失が起こったら、君自身は消えてなくなるってそういう事だね」
「うん、多分ね」
「そして、現在、エリアル様、クラリス様からは全面的な協力の要請を受けています。そちらからも、協力しないのであれば、魔法の喪失をという脅しをされていますので、下手な逃亡は私は悪手ではないかとサディアス様とお話していました」

 ……聞いてない。そして私はなんだか、こちらに来た序盤よりもだいぶ崖っぷちな気がする。

 もはや、私の命は風前の灯じゃないだろうか。

「先程のお話ですと、クレアの状況を理解出来るものは学園側にはディック様以外、いらっしゃらないのですよね?この学園は、闘争に加担するのを嫌い、そして、逃亡者には居場所を与えるという性格があるでしょう、それを持ってしても、クレアは……」

 ヴィンスが言葉に詰まって最後までは言わなかったがしかしその言い方だと、私が助からないかのように聞こえる。ディックは、眉間に皺を寄せて、難しい顔をした。

「状況が状況だからね、こちらも渦中の人間を受け入れるような事をするかどうか、クレアの言葉と、何も罪を犯していない研究者兼教職者として優秀なエリアルの言葉、どちらが優位かは想像がつくでしょ」
「……、……」

 とにかくにっちもさっちも行かない状況だと言うことはわかった。でも、少し疑問に思う。そもそもどうしてローレンスはこの学園を消そうとしているのだろう。そして、それを皆は割と当たり前のことのように受け入れているが、その辺がよく分からない。

「結局、クレアの命は風前の灯ってことか?」

 ディックとヴィンスが両方とも黙ってしまい、オスカーは私が思ったことと同じことを口にした。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。 挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。 だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……? 酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。 ※小説家になろうでも投稿しています

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。  絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。  今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。  オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、  婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。 ※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。 ※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。 ※途中からダブルヒロインになります。 イラストはMasquer様に描いて頂きました。

処理中です...