悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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バーベキュー大会……? 3

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 認めたくないという風に、二人とも視線を逸らしてオスカーを見ない。しかし彼は言いづらいと、さほど思ってもいないように私を見た。

「お前それ、割とわかってただろ」
「まぁ……それなりに」

 言われて何となく返事をする。鋭いなと思う。確かに突発的に不安になるようなことがあったり、頑なにどちらとも選ばなかったり、そして見て見ぬふりもして、分からないふりをしていただけで、元より崖っぷちだったのだ。

「……ディックひとつ聞いていい、もし私になにかあった時、ヴィンスを貴方達学園側にお願いすることは出来る?」
「…………分からないけど……出来ないことは……ない」
「うん、わかった」

 ヴィンスには逃げ道がある。私がローレンスに反抗しようと、どうなろうと、ヴィンスだけはローレンスの援助がなくなっても、何とかなるだろう。

 …………長い間、真剣に向き合わなかった、ツケが回ってきたね。何ヶ月も、学園生活を楽しんでいた罰だろうか。

「クレア」

 オスカーは私の名前を呼んだ。彼の方に視線を向けると、少しだけ面倒そうに頬づえをつきながら、私を見据える。

「お前は今の話、聞かなかったことにしてぇって事か?このまま流れに任せて消えるつもりか?」
「……」

 私がヴィンスの心配だけをしたからだろう、オスカーはそう言って、私の真意を確かめるように、じっと瞳を覗き込む。

「そんなつもりはない。でも、多分、どちらかに協力するとか、敵対するとか、そういうのはまだ、判断できない」
「んなこと言ってる場合か?そもそも、元々お前はどうしようともしてなかったんだろ」
「……うん」
「なら、諦めるか抗うかの二択をまず決めろよ、諦めんなら、葬式ぐらいには出てやる」

 二択、それは、そんなのは決まっている。

「抗いたい……もう、死にたくは無い」
「……じゃあ、お前はどっちに抗う」
「どっちに抗う?協力するとかじゃなくて?」
「なに言ってんだよ、そもそも、お前を両方殺そうとしてんじゃねぇか。その時点で協力はねぇだろ」
「そっか……」
「それで、エリアル、殿下どちらもお前の命を握ってる。どっちにお前は自身の生存、それを納得させる、お前はそいつらにどうアプローチすんのが賢い」

 アプローチをかける、そうか私から動かなければ、状況は複雑だ、どちらかに加担するだけでは私の命は勝ち取れない。

 でも、どう動いたらいい?どうしたらいい?あの二人の最終的な目的ってなんなのだろう。そして、どうしてそれが必要なのか、それも分からない、だから、上手い解決など思いつかない。

「わ、からない」
「何が分からねぇんだ」
「二人の考えてる事も、なんで敵対してるのかも、どうしたら私が死なないのかも」
「じゃあ、それがわかるように動くべきだろ」
「……ど、どうやって」
「あのなぁ!甘えてんなよ」

 私の反応にオスカーは、見透かすように言った。
 図星をつかれてバツが悪い。

 確かに甘えた事を言ってしまった。

「会いに行け、話をしろ、ここは学校なんていう、ちっちぇえコミュニティなんだよ、護衛も少なけりゃ、ほんの少し歩いただけで、自分の命狙ってるやつも、全部の手綱を握ってるやつも、なんでもかんでも居るんだよ」
「……」
「こんな、好都合どこにあるってんだ。お前は、動ける、そのくせ引きこもってちゃ、助かるもんも助からないだろ」

 ……なんの反論も返せない。
 その通りだ、エリアルにも、ローレンスにも会おうと思えば会えるのだ。関わっていかなければなんにも分からない。

 ローレンスに会いに行くのは色々思うところはあるがそこは我慢だ。

「明日だ、どうせ夏休みなんて学園中の教師が暇してんだろ。エリアルを学食で待ち伏せろ。わざわざ相手の本拠地に乗り込む必要はねぇ」
「明日……」

 でも、心の準備だとか、本当に色々準備だとか、そういうのがあるから、一週間後とかじゃダメだろうか。

「出来ねぇは無しだぞ、今にも状況は動くかもしれない、取り返しがつかなくなんのはすぐだ」
「……はい」

 ……オスカーって、こんなところもあるのか……。

 時は金なりって本気で言いそうな感じだ。皮肉のような事を思ってしまったが、これは賞賛だ。この人は仕事が出来そうだと思う。

「ヴィンス。サディアスに言っとけ、貴族は生ぬるいなって」
「……私が怒られてしまうかもしれません」
「それにお前も、もう少し自分から動くべきだ、そんだけ傍にいといて、ディックが一番最初に危機を知らせるなんて、おかしな話だと思わねぇか」
「はい……返す言葉もありません」
「……それでクレアは、明日食堂で待ち伏せてなにするの?」

 ディックはふと疑問に思ったようにそう言って、確かに何をしようかなと思う。こっちに来て!と言って、お昼ご飯を食べに来たエリアルを捕まえ、ピクニックでもしながら話をすればいいんだろうか。

「そうだな、何を話すにせよ口実が必要だろ。食事を一緒にってだけじゃ弱いな」
「それにあそこはいろんな先生たちが使うしね、変な感じになると思うよ」
「……では、寮の談話室にお誘いしてお茶を振る舞うのはいかがでしょうか」
「それだと、エリアルはついてこないかもしれないよ」

 結局、明日の予定はエリアルと話をしに行くということになったらしく、三人は早速首を捻って案を出す。自然にエリアルと会話が出来る状況でなおかつ、ほかの教師陣に変な目で見られなく、その場でできること。

 お腹が空いてそこに来ているのだから、お腹が膨れるものがいいだろう。そういえば、あそこの学食は広めのテラス席がある。そこで日向ぼっこでもしながら、ピクニック気分を……。

 ……あ……あー、思いついたけど面倒くさいな。

 とりあえず、内ポケットからピンクのポーチを取り出して、中身を見た。

 そこには大金貨が沢山入っている。これ以外にもローレンスから貰っているお小遣いは部屋の机にしまってある。

「……バーベキューでもやる?」
「お前、それどこでだよ」
「学食のテラス」
「料理人に話を通す必要があんだろ、それに金もかかるぞ」
「お小遣いがあるから、多分大丈夫、先生がちょっと立ち寄れるぐらいには大規模にしたいけど」
「…………」

 オスカーはあからさまに嫌そうな顔をしてから、適当に胸元からメモ帳のようなものを取り出して、サラサラとペンを走らせる。

 それからすっと私の前に差し出した。

「これくらいはかかるな……出せんのか」
「な、夏休み切り詰めれば……」
 
 絞り出すような私の言葉に、オスカーはペンでノートとコンコンと叩きながら思考を巡らせる。

 手伝ってくれるつもりなんだな、と思いつつ、面倒な事を提案してしまったと思う。オスカーは割と面倒みもいいし、サディアスに似たような部分を感じているのだが、あまり、チーム外の人間に頼るのも良くないだろう。

 そう思って、やっぱりやめようと思い直し口を開くが、ディックがぽつりと言った。

「聞いた事はあるけど、外でご飯なんか食べて何が楽しいの?」

 心底疑問に思っているような言葉だったので、嫌な意味では無いのだろうと思った。

「気分が開放的になるって言うか…………ディックはもしかしてやった事ない?」
「ないね。学園の大人は皆、学園から出ないし、僕もそんなのに誘ってくれる友達……いなかったから」
  
 なんて事ないようにそう言って、ディックは視線を逸らす。それから、ふとオスカーを見た。

「今は、オスカーも、君も、チームの連中もいる……から。……こういう事があったりするんだろうね。明日か……楽しみだね」

 ディックはもちろん、準備の面倒くささと、体力を消耗しきる事から、私とオスカーが、あんまりやりたくないなと思っている事に全く気が付かずキュッと口角をあげて笑った。

「ディック様……実は私もフランクな集まりに参加できるのは、初めてなんです。ガーデンパーティには何度もお供していたのですが、バーベキューは初めてです」
「そ、そうか。そうだよなぁ、僕以外にもバーベキューの心得がない奴がいて安心だな!」
「ええ、私もです」

 二人はニコニコしながら、バーベキューはきっとこんな感じだろうとお喋りしていて、私とオスカーは視線を合わせて、どちらともなく頷いた。

 どれほど面倒でも、やるしかないとそう決意をしたのだった。





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