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バーベキュー大会……? 4
しおりを挟む私達の中での開催趣旨は、ディックとヴィンスにバーベキューを体験させてあげよう。ついでに夏の思い出を作ろう。そしてあわよくば、エリアルと話をしようと言う感じになっていた。
そうなれば、前日から、オスカーは学食へと走り、直接コックと交渉し、バーベキューの焼き物を作ってくれる料理人を調達し、それから足りない、機材を買いに行った。
そして魔法は割と便利である。
重たいものだって軽々持てるし、会場の設営に、何度助けられたか分からない。飲み物や食材を学園街の商店街から買ってくるのなんて魔法がなければ、多分途中で諦めていた。
そして、準備を終えて当日。
会場は何とか整い、昼頃には、教師陣に取っては開催趣旨が謎のバーベキューが学食にて開催されていた。
いつもは日替わりメニューの書いてある、学食前の看板に『バーベキュー開催中、教師陣お待ちしてます』とでかでかと記載し、あとはエリアルが釣れるのを待つだけという状態になった。
「オスカー!看板置いてきたよー」
「おう!……これで準備も終わりだな」
「うん、終わり終わり!はぁ、頑張ったねオスカー」
私が手をハイタッチの容量で、パッと手を広げると、オスカーはパチンと手を打ってくれて、気分はノリノリである。
立食用の高いテーブルで飲み物を飲んでいた、ディックとヴィンスの方へと二人で向かうと、ヴィンスは少しソワソワとしていて、ディックはキラキラと目を輝かせている。
「お、終わったのか?これがバーベキューなのか?こんな簡易的なパーティなんて、粗野だな!」
「くっ、粗野か、……そうだな。こういうのはその方が楽しいんだよディック」
オスカーはディックの言葉に笑って、彼の頭をわしわしと撫でる。ディックはそれを嬉しそうに受け入れつつ、持っている飲み物をちびちびと飲む。
「お前、割と育ちがいいもんな。……格式ばった晩餐会も悪かねぇけど、俺はこっちの方が性に合ってるな」
「そうかな?……僕は晩餐会でも……なんでも、こうやって君らと遊べるならなんだって……たのしい」
「へぇー、今日はやけに素直じゃねぇか。いいのか、クレアもヴィンスもいんだぞ」
オスカーは茶化すようにそう言って、私たちに視線を向ける。ディックは少し恥ずかしそうに、頬を染めてそれから頷く。
「いいんだもう。だって、さんざん情けないところ見られたし」
「そうかっ……さて、腹減ったから料理取ってくるかな」
「ぼ、僕も行くっ」
オスカーの後ろをディックがついて行って、私はなんだかこそばゆいような気持ちになる。ディックが素直になってくれるのは嬉しいけれど、少しだけ、その友情とかが若々しすぎて、年増の私からすると恥ずかしくなったのだ。
「……クレア、どうかなさいましたか?」
「う、ううん、全然」
「左様でございますか。昨日から動きずめでいらっしゃるのですから、体調に何か問題がありましたらすぐに仰ってくださいね」
「うん、ありがとう」
言われてみればその通りだ。夏風邪を引かないように注意していた方がいいだろう。それに、今日も今日とて暑い、パラソルを設置してあるので直射日光は当たらないけれど、水分をちゃんと取っておいた方がいい。
「ヴィンスも今日は暑いからいっぱいお水飲んでね」
「ええ、心得ております」
私達も料理を取りに行こうかと考えていた時、看板を見てか、三人の大人がこちらへと向かってくるのが窓から見えた。
……早速、誰が来たね。
とりあえず、学食からテラス繋がる扉へとヴィンスと二人で移動する、入ってきたのは、見知らぬ教師ではなく、よく見知った私たちの担任のブレンダ先生とベラ、それからバイロン先生だった。
ブレンダ先生は少し怒っているような表情で、私にカツカツと近づいてくる。急に開催したし、教師陣に許可も取っていないので、想定していたが、いざ目の前にすると、少しだけ叱責されるのが怖くて、しょんぼりしながらブレンダ先生を見つめた。
彼女は、じっと私を見て、それから楽しそうに、あれこれと話をしているオスカーとディックに目をやった。それから、しばらく逡巡してはぁとため息をつく。
「首謀者は貴方ですね、クレア・カトラス」
「う……はい」
首謀者と言われると、悪いことをしているような気分になるのだが、そんなに怒らないで、ここで一杯やって行ったらどうだろうか。
「はぁ……まったく……ディックに言われて来てみれば……」
「ごめんなさい、ブレンダ先生」
「……」
ブチ切れて、こちらの言い分を聞く気がないほど怒っているという訳でもなさそうだったので、考えていた言い訳を口にする。
「……先生……私達もディックも帰省先がないんです。皆、実家に帰ってお友達と楽しい事をしているでしょ、私達も少しだけ、イベント事をやっても……先生は許してくれるかなって……ダメ……ですか?」
この一学期を過ごしてみて分かった事だがブレンダ先生は、性格がキツそうに見えるが、意外とちゃんと生徒のことを考えている良い先生なのだ。私みたいな厄介な生徒にも誠実に対応してくれているのがその証拠だ。
そして、私の事情も、ディックの事もちゃんと理解している。一縷の望みをかけて、できるだけしおらしく素直にお願いしてみた。
彼女は少し眉間の皺を濃くしてそれから「クレア」と私の名前を呼ぶ。
「そのこと自体を悪いとは思っていません。この程度の規模ならば許容範囲内です。けれど、唐突すぎませんか?担任である私に相談のひとつも無かったこと、その事に私は驚いています」
「はい……」
「でも……そうですね。教師陣も自由参加していいだなんて、思い切った事をしましたね」
ブレンダ先生はぽんと私の肩に手を置いて、少しだけ微笑む。
「……つい、ベラやバイロンにも声をかけて覗きに来てしまいましたよ。お酒もあるなんて気が利いているじゃないですか、もちろん、あなた達は、飲酒禁止ですよ」
「!……はい、わかってます!ね、ヴィンス」
私が話を振ると彼はコクコク頷いて「ありがとうございます、ブレンダ先生」と言った。後ろにいるベラとバイロンも表情は穏やかだ。
「では、少しお邪魔していこうかしらね、クレア」
「うん、どうぞ!日頃先生たちにはお世話になってるから」
ブレンダ先生とベラ、バイロン先生にはいつも面倒を見てもらっている。このぐらいのご馳走なんて安いものだ。
それに、彼女たちもディックと同じなのだと聞いている。ここにしか帰る場所が無い人、国から居場所が無くなってしまった人らしいのだ。まったくそんな風に見えないほど良い教師、寮母さんだと思うのだが、ディックが言うのだから事実なのだろう。
……そうだとするなら、少しでも楽しんでくれたら良いと思う。こういう事でもない限り、イベントを提案するのって面倒だもんね。
先生たちはオスカーとディックの方へと行き、料理を取り始めた。その間に知らない先生達などが来て、会場は少しづつ賑わいを見せていく。
まだまだバーベキュー大会は始まったばかりだ。
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