悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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クラリスの正体……。3

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 昨日はてっきり、私の言葉に対して、じゃあ一緒に眠りましょうなんていうものだから、そういう事なのだろうかと思ったら、まったくもって違った。

 ディックの面倒を見ていた時と同様に手を繋いで眠っただけだった。どうやらヴィンスは添い寝にはまっているらしい。それから今朝、私は彼に指に絆創膏を貼られて部屋を出た。向かった先はオスカーの部屋だった。

 彼の部屋は、平民たちの部屋の中でも上位の大きなお部屋を使っていて、使用人さんは居ないが、程よい調度品が揃えられている。何度か行ったことがあるので部屋の場所を知っていた。

 さすがにこの時間なので起きているだろうと思いノックしたのだが一向に、返答が帰ってこない。もうお昼になるというのに寝坊助さんだ。

 私が二人を起こしてあげようと思い。ドアノブを引いた。

 すると鍵が掛かっておらず、ガチャっと音を立てて開く。

「入っていいかな?」
「鍵がかかっていないのですから、よろしいのではないでしょうか」
「うん、だよね」

 そんな会話をしつつ、「お邪魔します」と何となく声を潜めて入っていけば、リビングには誰もおらず、寝室の扉を開けるとカーテンがしまっていて部屋の中は薄暗い。

「オスカー、そろそろ朝だよ……おき」

 声をかけつつ、ベットに近づくと、何か落ちていたものを踏んでしまったようで柔らかな感触だ。

 見てみれば、それは洋服で、ベットにはきっちりと布団を被った二人。……二人だ。ディックが居る。というかオスカーの腕枕ですやすやと眠っている。

「あ……」
「ン……だよ、……ふあー……あ?クレア」

 起き上がった彼は、謎に裸でよく鍛えられた腹筋が素晴らしい、私は慌ててヴィンスを引っ張って部屋を出た。

「おい待て!!誤解だ!!」

 扉を勢いよく閉めて、ヴィンスに向き直る。

「見た?!今の、あの、二人って、え?!どういうこと?!」
「見ましたけれど……どういう事なのでしょうね?」

 ヴィンスはふふっと笑って、それからオスカーの寝室へと入って行った。しばらく、ドタバタと動き回る音が聞こえて、それからきちっと服を着て、決まりの悪そうなオスカーと、ディックの二人が顔を出した。

「だから、俺は上は脱いでたが、全裸じゃなかったって言ってんだろ。第一、あちぃんだよ、全部着込んで寝れられないだろ」
「……」

 私がじとっと彼を睨むとオスカーは、ガシガシと頭をかいてはぁとため息をついた。

 ……まぁ、全裸じゃなかったとしよう。というか睡眠時の服装など人それぞれだろう。それについてわざわざどうこういうのも無粋というものである。けどね。普通は他人と寝る時は、服ぐらい着るもんだよ。そしてディックもよくそのまま一緒に寝たね!

 驚きとそれから呆れの意味を込めてディックの方を見ると、何だか毛艶がいい。ふわふわの茶髪はいつもよりふわふわしているし、いつものつんつんとした雰囲気が健在だ。

 ……やっぱり、ディックはオスカーがいないとダメなんだね。しかし、彼のお部屋に止まっている時が終始、あんな感じなのだとしたら、それはそれでどうなのかと思う。

「ねぇ!僕、お腹すいてんだけど、早く行こ!」
「わかってんだよ!……お前も行くだろ」
「うん、いいけどさ。ヴィンスもそれでいい?」
「ええ、構いません」

 部屋の外にいち早く出て、私達を呼ぶディックに誘われるようにして歩き出して、寮から出る。

「ベラ、行ってきます」
「ええ、気をつけて行ってらっしゃい!」
「はい」
「はーい」
「はいっ」

 一言挨拶を交わして、校門への道を進んだ。今日も今日とて暑い日である。


 昼食の時間だったのだが、さすがに毎日学食での似たような食事ばかりでは飽きるという事で四人で学園街へと降りてきていた。

「昨日はあの後どうだった?」
「ああ、まぁ、それなりに顧客は……いや、そこそこ教師陣が飲み食いして帰ってったな」
「貴方、営業みたいな事してたものね。まぁ、いいけど、片付け全部押し付ける形になっちゃってごめんね。昨日先生たちにお駄賃沢山貰ったから何か奢らせて」
「お、いいのか?わりぃな」
「ディックも決まったら教えてねー、今日は私持ちだから!」
「んー、わかった!」

 学生たちが居ない夏休み中なのだが、学園街は観光に来た人々で賑わいを見せている。露店も出ているので適当にサンドイッチなんかをそれぞれ購入していくが、どうにも空気が重たい。

 夏休み中の見慣れた学園街の風景とは違い、街ゆく人は少し不安な表情をしている。

 広場の適当なベンチに腰掛けて、買う物があると言って離れて行ったオスカーが帰ってくるのを待っていれば、彼は手に新聞らしき紙にズラズラと文章が刻印されているものを持って戻ってくる。

 彼はそれをサンドイッチを咥えながらじっと見て、表情を険しくする。

「こりゃ……夏休み中に騒動が収まんねぇかもな」

 ぽつりと彼はそう言って、私たちにもその紙を見せてくれる。新聞のようなものだろうと思いつつ、この歳でそういうニュースを気にするなんてインテリだなぁと思った。けれどどうやら、私たちにまったく関係の無いものではどうやらなさそうだった。

「アウガス王都に襲撃?」

 読み上げつつ、目をぱちぱちと瞬かせる。

 内容は、大事には至っていないが、どうやらテロらしい。実行犯達はメルキシスタに派遣されている魔法使いが捕らえていて、事実関係を確認中。

「……王都ってお城?ローレンスは無事かな?」

 私がそう言うと、ディックもオスカーも表情を歪めて、何かまずいことを言ってしまっただろうかと思うが分からない。一応、心配なのだけれど口に出さない方が良かったのだろうか。

「クレア、殿下よりも、私たちに近い方が危機に陥っている可能性が高いです」
「……えっと……よく分からないんだけど」

 ヴィンスの言葉に首を傾げていると、オスカーは、その紙を折り畳みつつ、少し機嫌悪そうにしながら言う。

「サディアスだ、大渓谷を迂回した先、メルキシスタから王都に直通できるグローヴの土地を持っているのはあいつの家だ。ただでさえ、貴族に都合の悪い人間の出身地だってのに」
「そうだね。侵入経路を調べる時に必ず、サディアスが疑われるんじゃない? 彼あれで一応家長でしょ」
「……」

 思いも寄らない言葉に、一瞬思考が止まる。彼は色々と苦労人だと思っていたが、そんな疑いをかけられたらキャパオーバーだろう。というかちゃんと夏休み明けにここに帰ってきてくれるのだろうか。






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