悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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人それぞれの企みと行動……。5

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 呼ばれたディックは、私の殴打を諸に腹に受けて、立つことが困難なのか、そばに居るオスカーに這いずって寄る、そんな彼にオスカーは少しかがんで頭を撫でた。

 それからオスカーは、また舌打ちをしてから魔力を強めて、アメシストの瞳を強く光らせた。

 そうすると、どんな魔法か分からないけれど、オスカーは膝を折って倒れ、回復に魔力を回し始めて、なんのダメージもなくなったように、ディックは起き上がる。

 それから倒れてしまったオスカーを引き寄せて守るようにしながら、私に向かって口を開く。

「は、話をするから!だからやめろよ!」
「はぁ…………お前な、これやったらさっさと逃げろっていつも言ってんだろ」
「無理無理! 絶対むり、もう僕ダメージなくても膝が笑って走れないんだ!そ、そもそもオスカーが負けるのが悪いんだろ、僕はただ攫われただけだっ」
「そーだな……まぁ、お前は悪くねぇか」

 そんな事を言って、ディックは涙目のまま、ボロボロになったオスカーに擦り寄って、ついでに私を睨みつける。

 不思議な魔法とやり取りに、確かにまるっきり回復しているディックにいきなり逃走されたら、私は果たして学園につくまでに彼をもう一度、捕らえることが出来るかは、分からない。

 あれ程の怒りを顕にしつつ、ディックだけを逃がす算段をつけていたオスカーに、心の中で賞賛を送る。

 ……いいわね。本当に楽しい!

「今のって固有魔法なの?すごいわね、どんなものなのか教えて欲しいわ!」
「……教えるかってんだ、この戦闘狂、っ、はぁ」
「っ、オスカー!また、ぼこされるよ!」
「しないわよ、別に。今のはただの世間話よ!」
「わ、分からないだろ! というかとっとと君の要件を言ったらいいじゃないか、こっちはお祭りを台無しにされて最悪だってのにさ」

 ディックは私を強くにらむ。子猫に威嚇されても怖くもないものの、単純に良い気分では無い。私は気分を切り替えつつ、メイスを手に持ったまま、彼らのそばへと歩いていき、本題を口に出す。

「聞きたいのはカティの事よ、ディック貴方なら彼女がいる場所わかるんじゃない?」
「…………」
「カティは、死んだんじゃない。行方不明よ、メルキシスタもアウガスも行方不明者がいく場所は、相場が決まっているわ」
「それを知ってどうするつもり?」

 私の質問にディックは質問で返してくる。答えられない事では無かったので、私はあまり考えることなく口にする。

「当然、コーディに会わせるのよ。あの子多分、今カティに会えなくて頭が悪くなってるのよ、カティを連れてくれば、言うこと聞いてくれるわ」
「…………それは、君はどうしてそんな事をするの?ローレンス殿下に逆らうことになるって知らないの?」
「逆らうですって?そもそも私あの人の配下でもなんでもないのだけれど」

 まるで私がローレンスの下っ端のように思われているのかと思い、ディックを睨んだ、彼はビクッとして傷を治しきったオスカーの後ろに隠れる。

「……まぁ、いいわ。そうよ」
「それで、君はコーディを懐柔してどうするつもり?」
「別に、ただコーディがクレアを殺したく無くなれば、それでいいのよ」

 だから別に、私は呪いの力を使って何かをしようとしている訳でもないし、単純に彼女に少しだけ協力してあげようかな、と思ったからこうしているだけだ。

 ……だってクレア、ローレンスの事を解決しようとするのはいいけれど、あの子、その後コーディに闇討ちされないとは言いきれないもの。

 だから……クレアが自分の生きる道を勝ち取れたのなら、ほかの障害を取り除いてあげたい。それに大元を辿れば、これは私の問題でもあるのよ。

 私が、クラリスを追い詰めなければ、彼女は罪を犯さなかった。そしてカティも行方不明にならずに済んだ。

 皆は、その責任を取れと私に言ってくる。だから、本当は理解していたのよ。

 でも、結局、関係ないはずのクレアは、すべてを自らのものとして受け入れて、私に責任をおわせるような事をしなかった。

 ……だから、そうして私の事を「ララはララだよ」と何者にもしない特別にしてくれる彼女を助けてあげたいと思ったのだ。

「……まて、あいつはそれを望んでんのか? 俺達が知ってる限り、ローレンス殿下自体にアプローチをかけるはずだ! お前が今動いても厄介事にしかならねぇかもしれないだろ」
「うるさいわね! ちゃんと、あの子の意思は知ってるわよ!これはただの保険よ!さあ、カティの居場所を教えなさい!」

 うだうだと分かりきった事を言っているオスカーを黙らせてディックの方へと向き直る。

 カティは必ずここにいるはずだ。この場所は、カティのように面倒な立場で、逃げるあてすら無いような子が行き着く場所だ。

 そして大概、他人の目がそう簡単に触れない場所へと隠されている。ほとぼりが冷めるか、忘れ去られるまでそこでひっそりと過ごすのだ。

 ディックは少し眉間に皺を寄せて、それから、視線を下げて言う。

「これは君に脅されて言っただけだと、覚えてて、僕は本当は、言うべきじゃないとわかってる」
「ええ、誰に聞かれても私が脅して吐かせたと、言うわ」
「……グラウンドの西倉庫から、裏展望台に向かう途中、十字に傷のある木がある、そこを右手に曲がると彼女のいる家がある」
「わかったわ」
「これだけは言っておくけど!ララ!カティは望んであそこにいるんだ!君が勝手をして暴くべき事じゃない!」

 立ち去ろうとすると、背中に向かってそう言われる。

 ……勝手をして暴くって?知らないわよ、そんなの。
 呪いの力の家系の事を詳しく知ったのは最近よ。でも、やっぱりおかしいと思うのよ。

 魔力を強めて、見知らぬ民家の屋根に飛び乗る。それから学園に向かって走り出した。

 何があったって、自らを必要としている子を置いて居なくなるなんて無責任だもの。いろいろな責任を放棄している私が言えた事では無いのかもしれないけれど、私は、ローレンスやコンラットのように私を望んでくれた人の事を放棄したりしない。

 そこだけは私が誇れる矜恃なのだ。だから、カティにどんな背後関係があったとしても、私は彼女を引きずり出して、責任を取らせて見せるわ。

 決意を固めながら、屋根から屋根を伝って走る。久しぶりに楽しい試合をしたからか体はいつもより軽かった。



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