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その方が面白いから……。7

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 私が動く理由なんて、いつだってひとつしかない。

「その方が面白いからよ。クレアが死んでコーディも罪をおって私だけが残されたってなんにも面白くないわ」
「お、面白いから? ふざけないで!! そんなの信頼わけるわけない!!」

 カティが望んでいた返答ではなかったようで、彼女は何故か少し私に怯えたような表情を見せつつも怒りだす。

 ……ただ、私は信頼して欲しいなんて思ってないわよ。この世界は、全部誰かの自己中心的な気持ちで動いている、だから、お綺麗な誰かを救いたい気持ちにだって、打算や裏の事情が隠れているのだ。

 そんなものより余っ程、私の欲求も心情もずっと分かりやすくて理解しえるものだと思う。

 それに。

「信頼? 馬鹿ね、どうして私が貴方に信頼させてあげるようなことを言ってあげなきゃならないの?」
「……え」

 カティは、私が彼女にお願いをしていると勘違いしていたのだと思う。でもそれは正しくない、カティの小さくて細い手首をぎゅーと握る。

「私はただその方が面白いから、これから先あなた達を守ると約束したわ。それで? 貴方はどうするの?」
「ど、どうって……」
「だから、コーディを見捨てるの? 今日これからよ、貴方の弟は罪を犯すわ。クレアと引き換えに呪いの力をローレンスに差し出すのよ」
「……」
「そうすれば彼がどういう扱いを受けるのか、貴方わかるのよね? 死罪? それともクラリスみたいに幽閉されるの?」
「っ……」
「それって貴方がここでこうして死んだみたいに生きている意味あるの? だって貴方それでコーディを守っているつもりなんでしょう?」

 全然、まったく守れていないのに、自分が犠牲になってそれで、相手の事を守った気分に浸っているだけだ。

 本当にコーディが重要視している部分をカティは蔑ろにしている。

「貴方、本当は、もう辛い思いをしたくないだけなんじゃない? このお家に引きこもって片割れの事も守った気になって、世界から隔絶されて生きていきたいだけ」
「っ、……ち、ちが、ちがうよ」
「なんにも、違わないわよ。そう見えるもの。あーあ、コーディが可哀想だわ。貴方しか見えないのに、貴方しか居なかったのに、貴方のそばに居る事が彼の生きがいだったのに」

 きっと、カティに自覚はなかっただろう事をわざと言う。否定できないだろう。だって事実だ、もう疲れてしまっていたのではないだろうか。

 そんな大きな秘密を背負って、いつ殺されるかも分からない場所で生きると言うのは。

 ……でも、そうね。カティが望まないのなら、私が助けたって意味は無いわね。私は頑張る子が好きだもの。

「見捨てるのね?」

 手を離す、これでこの家から出てこないような子なら面白くないから、これ以上は関わらない。

 カティは顔を俯かせて、カタカタ震える。
 
 私は振り返って、寮の方へと向かおうかと考える。とりあえずはコーディの方を止めなければならないだろう。

 弱々しい力が私のスカートの裾を掴んだ。

 ……。

 振り返れば、カティは手を伸ばして、軽く掴んでいるだけだった。

 ……それだけじゃ分からないわ。

 パッと彼女の手を振り払うと、カティは俯いていた顔を上げて、私の手を思い切り掴んだ。

「っ、……まって」
「……」
「……た、たすけて、くれるの?」
「助けるんじゃないわ。手伝うのよ、貴方達が寄り添って生きるのを」
「……」
「生きるために抗うのは貴方達自身よ。私は守って手伝うだけ、覚悟があるなら、さっさと行くわよ。時間がないわ」
「え?……あ、ちょっと!」

 彼女に掴まれた手を掴み返して、玄関扉の前まで引きずっていく、それから、扉を開け放った。真っ白な雪景色、寒さが肌に染みる。

「き、君っ、強引すぎるって、言われない?」
「しょっちゅう言われるわよ」

 それから魔法を使いながら、カティの脇腹を掴んで小脇に抱えるようにして、森の中をかけ出す。

「っ、う、ひぃっ!!」
「あら? 寒い? 少しの辛抱よ」
「ちがっ、つっ、そうじゃなっ」

 何が言いたいのかよく分からずに、首を傾げつつも走る速度は緩めない、向かう先は寮だ。

「あ、そうだ。ねぇ、カティ」
「なななっ、なに!」
「貴方、笑ってみてよ」
「なななっ、なんで!」
「いいから、笑いなさい」

 面倒だったのできつく言えば、彼女は、顔を青白くさせたまま、戸惑ってそれでもぎこちなく、目を細めて怯えた表情のまま笑顔を作る。

 ……悪くないわね。……もっと屈託なく、二人とも揃って、幸せそうにしていたらきっともっと悪くない。

「スピードあげるわよ」
「ひっ、いやぁぁ!!」

 彼女は、私の腕にしがみついて少し走りにくかったが、そんな事は気にせずに、学園内を駆け抜けた。





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